軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11話

ヴァダッドの獣人とマグノの魔法使いの間に産まれた、平和の象徴の子。シュトルツの誕生祝いに両国から多くの祝いの品が贈られてきた。

それぞれの国からの祝いと、ヴァダッドで知り合ったあらゆる家や、マグノの実家や親戚とその付き合いのある家からも何かしらの祝い品が届き、おかげでバルトシーク邸は二国の全く違う文化の品で溢れんばかりである。

「さすがに目録を作るのが大変だな……」

「でも面白いよー! 珍しいものがいっぱいあって! フェリシア、これ何?」

「それは赤ちゃんのおもちゃね。ゆりかごの上でくるくる回るのよ」

「分かった。じゃあえーと……マグノのミリヴァム家からおもちゃが一つで、他にも……これは生地かな?」

どの家からどんな品が贈られてきたか、返礼をするためにも一度目録を作る必要があり、これはミランナも手伝ってくれている。マグノからの品は魔法道具やあちらの特産品もあるため、私でなければ分からないことも多い。シュトルツをゆりかごで寝かせつつ、箱の中身を確認していく作業だ。

「わぁ……! この布すごく綺麗! でも爪ひっかけちゃうかなぁ……」

「この生地は薄いものね。でも保護魔法を掛ければ大丈夫じゃないかしら」

箱をあけたミランナが歓喜の声を上げたのは、透けるほど薄いの生地の贈り物だった。たしかにヴァダッドではこのように薄い布は見かけない。獣人たちの爪がそれを引き裂いてしまいかねないからだろう。

しかし魔法で保護を掛ければ、獣人たちも爪をひっかける心配をする必要はないかもしれない。

「え、ほんと!? じゃあ、これで服……は薄すぎるから、腰帯とか……!」

「できると思うわ。……服でもいいのではないかしら? 夏の上着になら使えるでしょうし……刺繍をすれば華やかよね」

「えぇ!? こんなに綺麗な布に刺繍までしちゃうの……!? リシィ、それは素敵すぎると思う!」

「ええ、じゃあミーナに作ってあげるわね」

「やったー! ありがとうリシ……」

私に抱き着こうとしたミランナは抱き着こうと両手をあげた状態でピタリと止まった。どうしたのかと思っていたら、後ろからスッとアルノシュトが顔を出す。

「……夫を差し置かないでくれ」

「もーアルノシュトはすぐ嫉妬するんだから……ほんと、狼族だよねぇ」

ぴたりと頬を寄せているため私からはアルノシュトの表情が見えないけれど、ミランナのあきれ顔を見れば何となく察せるというものだ。おそらく、まじめな顔で耳を寂し気に倒しているのだろう。

「ふふ……ではアルノーさまにも。いっそ、皆で宴衣装に使って、マグノのアピールをするのはどうでしょうか?」

「ああ、それはいいな。……しかしリシィが大変ではないか? 衣装への刺繍となると仕事量が多い。リシィは体が強いわけでもないのだから、できるだけ無理はしないでほしいんだが」

シュトルツはよくミルクを飲むので、私が疲れやすいことをアルノシュトは心配してくれていた。魔法使いの乳児は母乳とともに魔力も吸収しているので、私も毎日の睡眠を長くとっている。

私が休めるように周囲は気を遣ってくれているが、しっかり仕事もしたい。……だって、今がきっと、歴史の転換点なのだから。

「そうですね……では、マグノの職人へ依頼をしてみませんか? ヴァダッドの形式で、マグノの布と刺繍の羽織りを作ってもらいましょう」

「ああ、それができるならそうしよう。技術交流の一環だな」

「うん、それならリシィも無理しなくていいよね。……でも、私はリシィの刺繍が好きなんだよね。今度小物に刺繍してほしいなぁ……」

「ミーナにはいつもお世話になってるし、もちろんよ。何がほしい?」

「うーんどうしよう……あ、スカーフがいいかも。王様のスカーフ、話題になってるみたいだよ」

ヴァダッドの王へと贈った刺繍のスカーフは、王も気に入って普段から使ってくれているらしい。細やかな刺繍が素晴らしいと話題になり、王都の刺繍職人たちが対抗意識を燃やしているという。

ミランナにはスカーフに刺繍して贈る約束をして、寂しそうにしょぼんとしていたアルノシュトには刺繍のハンカチを作る約束をした。

そしてまた目録作りの作業をやっている中、アルノシュトから小さな唸り声が聞こえたため、驚いて振り返る。

「どうしました?」

「いや。……ウラナンジュからの祝いの品に、つい」

「まあ、ラナから?」

少々皮肉屋っぽいところのある梟の獣人、ウラナンジュ。文通の相手がアルノシュトだと教えてくれたあの日から彼には会っていない。ずいぶん懐かしい名前に少し喜んで明るい声を出したら、アルノシュトの大きな尻尾が不満げに下がった。

「アルノシュトはすぐ嫉妬するんだから……狼族ってたいへんそう」

「……自分でも情けないと思っている」

「ふふ……でも、私は愛されていて幸せですよ」

決して愛せないと言われ、そんな人を好きになってしまって、辛かった時期もあった。けれど今は、その相手に充分に愛されて、子供も生まれて、仕事も充実していて、とても幸せなのだ。

大きな尻尾がぶんぶんと振られているのを見て笑っていたら、ミランナが「魔法使いは狼族の扱いがうまいのかなぁ」と感心したように呟いた。