作品タイトル不明
第17話 箱開けを続けてみました
「……何も起きないなー。まあ、これがもしも何らかのの鍵なら、何か鍵を使う対象が必要なんだろ」
俺は指環をはめたまま、次の小さな箱を開けていく。今度のはウロボロスリングが入っていた物より、少し大きい。ただ、箱の造りはやや地味だ。
「──今度は、宝石?」
手に取る。
次の瞬間だった。指にはめた指輪がキラリと光り、宝石っぽいものが消えてしまう。
そのまま箱も消えたので、俺の手には結局、何も残らなかった。
「──消えた。なんだ、今のは……」
俺は再び同じような三つ目の小さな箱を開ける。
また、宝石のようなものだった。
今度は触れる前に鑑定スキルを使用して宝石を眺める。
『綻びのアイテム: 綻び石(ほころびいし) 。時空の綻びに隠されし報酬ボックスを力ずくで強奪せしものへ授与される。綻びが 石化(いしか) したもの』
「う、うーん? なんだろ。宝石じゃなくてとりあえず石、なのはわかったけど……」
俺は箱に入ったままの綻び石とやらを眺めて首をかしげる。
鑑定の結果では何もわからない。
「結局、さっきの綻び石は、何で消えたんだ? うん、アビちゃん、どうしたの?」
なぜか興奮したように、アビちゃんが、ふよんふよん、ふよんふよんと跳ね続けている。
「──ほしいの?」
ふよんと、これまでに無いほど元気に一跳ねするアビちゃん。
「アビちゃんにはいつもお世話になってるし、とりあえずこれはあげる。どうぞ」
箱のままアビちゃんに差し出す。
すると、勢いよくその箱に体を伸ばすアビちゃん。
あまりの勢いに、箱を持っているのが怖いぐらいだ。
そのアビちゃんの体に綻び石が取り込まれると、すぐにアビちゃんがふるふるとその場で震えだす。
それはまるでとても美味しいものを全身全霊で味わっているかのようだった。
「あー、美味しい?」
ふよんと先程よりも高く大きく跳ねるアビちゃん。いまにも天井につきそうだ。
「そ、それは、よかった。まだ食べたかったりする?」
ふよんふよんと二度跳ねるアビちゃん。どうやらもう、満足らしい。それどころか、部屋のすみのいつもの定位置に移動して、にゅんと縦に伸びて角に張りついていく。
それはまるでお腹一杯になったから一眠りするかのような仕草だ。
その姿を眺めていた俺だったが、アビちゃんが角ですっかり落ち着いてしまったので、少し残念に思いながらも、独り箱開けを再開することにする。
四つ目の最後の小さい箱も、綻び石だった。
よく出るのかもしれない。今度は鑑定スキルを使用しながら、手にとってみる。
綻び石が、やはり消えた。
そして俺の視線の先、鑑定で表示されたウロボロスリングの結果が、変化していた。
『綻びのアイテム:ウロボロスリング。時空の綻びに隠されし報酬ボックスを力ずくで強奪せしものへ授与される。システムへのアクセスキーの壱【2】』
意味深に増えている、数字。
「……【2】って?」
ダメもとで、そう呟く。
すると、左目に表示される文字列に、今度は変化が生じる。
久しぶりだ。
『石化した綻びを消費し、システムへのアクセスが可能となる回数。目視範囲内での所有者不在の領域への干渉が実行可能』
思わず瞬きしてしまう。
そこはかとなく底意地の悪い鑑定スキルとは思えないほど、それはある意味、分かりやすかった。
──鑑定スキルから、明らかにシステムへアクセスとやらをすることを促されている感があるんだけど……やっぱり感じの悪いスキルだ。
そんな感想を抱くも、一応、俺は口には出さない。何せ鑑定スキルは俺の話した内容にこれまで反応してきたのだ。余計なことは言わないに限る。
「──とりあえず、綻び石とやらは、アビちゃんのご飯にするか、このウロボロスリングでシステムへアクセスするのに使うのか二択と……所有者不在の領域、ね」
なんとなく俺の視線は、冷蔵庫の横の壁の穴へと向いてしまう。
その穴の先。
ダンジョンの深淵は最近、深淵竜が不在でがらんとしているのだった。