作品タイトル不明
ルドルフの居場所
「すぐにでも行動を起こしたい。何か国に持ち帰りたい手荷物などはあるだろうか?」
「いいえ、ないわ。身一つで行ける状態よ」
「ならばよかった」
ヴィルは幻術でキャロラインを作り出す。
これで不在にはしばらく気付かれないだろうと言うと、キャロラインはヴィルにひたすら感謝していた。
「息子はどこにいる?」
「それが……ごめんなさい。この船のどこかにいるとは思うんだけれど、正確な居場所は把握していないの」
「そうか」
なんでも乗船してから、一度もルドルフに会っていないという。
親子を一緒に置かないのも二人揃って逃げ出さないようにするための、ツィルド伯爵の作戦の一つなのだろう。
今日は乗船の最終日。
下船までにルドルフを見つけることができるのだろうか。
「ここで何をしているのかも、知らないのか?」
「ええ……。ただ、私みたいな仕事はしていないと思うの」
たしかに、施術師の肖像画の中にルドルフの絵はなかった。
「あの子、体が弱いから、体を使うような場所にはいないと思うの」
見目がいいので、パーティー会場にいるアンバサダー・ホストに選ばれても不思議ではないのだが、いかんせんルドルフは体力がない。ダンスもしたことがないだろう。
レストランの給仕係も動き回るので、難しいかもしれない。
「息子が働けるような場所は限られているというわけか」
「ええ。でも、顔を活かした場所に置いているって、ツィルド伯爵が言っていたわ」
きっと皆の注目が集まるようなところにいるのだろう。
サーカスは体力的な問題で無理、舞台も経験のないルドルフにやらせるわけはない。
胸毛コンテストにも、当然ながら関わっていなかった。
残るは――。
「競売か」
商品をワゴンに乗せて運ぶ役ならば、ルドルフに適任かもしれない。
キャロラインもルドルフがいるならば、競売会場の可能性が高いと言っていた。
競売の開催は夜――それまで待機しておこう。
「では、我々の部屋に付いてきてもらおうか」
「ああ、待って」
キャロラインには逃亡防止の腕輪が付けられているという。
「ごめんなさい。大事なことを最後に回してしまって」
「いいや、構わない」
ヴィルは腕輪を見るなり、手袋を嵌めて刻まれた呪文に触れて確認していた。
「大丈夫だ。三流魔法使いがかけた束縛魔法のようだから、簡単に解除できる」
なんでも外そうとしたら術者が気付くようになっている仕掛けがあるみたいだが、それも問題ないという。
「察知、追跡魔法も無効にした上で、外してみせよう」
ヴィルは宣言した通り、キャロラインの腕輪をあっさり外してみせる。
相手の魔法は何も発動されず、あっさり魔法は解除されたようだ。
ヴィルは腕輪を回収し、あとで海に捨てると言っていた。
「急ごう」
そう言って、この場をあとにする。