作品タイトル不明
キャロラインを保護下へ
ヴィルはキャロラインに姿消しの魔法を施したあと、支配人を呼ぶベルを鳴らした。
するとすぐに支配人はやってくる。
「ご満足いただけたでしょうか?」
「ああ、おかげさまで」
支配人の傍に幻術のキャロラインが控えているものの、魔法だとまったく気付かない。
キャロラインもハラハラしていたようだが、支配人のいつも通りだと思われる反応を見て安堵の表情を見せていた。
「お帰りはこちらです」
先ほどの肖像画が並んだ部屋では、ヴィルは支配人が気付かないよう、キャロラインの絵から気を逸らす魔法を施す。
これで今後、キャロラインが指名を受けることはないだろう。
支配人の見送りを受けながら、皆で転移陣に乗る。
そのまま止められることなく、スムーズに脱出できた。
下り立った一等船室のラウンジで、キャロラインは大きな安堵の息を吐く。
まだツィルド伯爵の客船の中なので、完全に安心するのは早い。
けれどもこうやって監視下から逃れることすらできずにいたようなので、彼女にとっては大きな一歩なのだろう。
さて、これからどうしようか。
キャロラインは事件の最重要参考人である。
今すぐにでもレヴィアタン侯爵邸に連れて帰りたい気持ちがあるものの、海上で長距離の転移魔法は使わないほうがいいらしい。
着地点が大きくずれることがあるようだ。
なんでも海中から魔法の効果に影響をもたらす波動が出ているようで、船内にはそういった現象から守る結界が展開できるが、一歩外れたら最後。高位の魔法であればあるほど、失敗しやすいという。
そんな事情もあり、転移魔法でレヴィアタン侯爵邸まで連れて帰ることはできない。
下船まで彼女を守り切る必要がありそうだ。
ひとまず、姿消しの魔法をヴィルが常時展開させ、傍にレヴィアタン侯爵夫人を付けておくようだ。
レヴィアタン侯爵夫人はヴィルが軽く説明しただけで理解したらしい。
「お部屋に幻獣のガウちゃんもいますので、びっくりしないでくださいね」
「幻獣? ええ、わかったわ」
あまり動じていなかったキャロラインだったが、ガウを前にすると驚き、私を振り返る。
「あんなに大きな幻獣を飼っているなんて」
レヴィアタン侯爵夫人がガウちゃん、なんて呼んでいたので、かわいらしい幻獣を想像していたのだろう。
「見た目はああですけれど、大きいだけで猫みたいなものです」
「そ、そうなのね」
下船までここに待機してもらおう。
レヴィアタン侯爵が護衛につくので、この場を任せて私達は競売に参加することとなる。
ついに、ルドルフを保護かもしれないのだ。
幻獣のことも含めて、解決できたらいいのだが……。