作品タイトル不明
キャロラインの告白⑥
双子の王子と王女はそっくりだった。
そのため、キャロラインは判別がつくように男児には青いリボン、女児には赤いリボンを腕に結んでいた。
ついに、作戦実行の夜を迎える。
キャロラインが王子を連れ出し、アルテミス妃と王女を亡き者にするのだ。
そしてソーレが王妃に成り代わり、王子を育てる。
それが成功すれば、キャロラインの気持ちも楽になるだろう。
サーベルト大公に始末されることもない。
また計画がソーレに露見してしまった後悔も、罪悪感も消えてなくなるだろう。
このときのキャロラインは信じて疑わなかったという。
夜も更けた時間――キャロラインは堂々とアルテミス妃の部屋に向かった。
彼女は毎晩のように、王子と王女にミルクを飲ませていたのだ。
そのため、王妃直属の近衛騎士は彼女を当然のように通す。
ただ一人、ブランド・フォン・アーベルという、アルテミス妃に心酔している近衛騎士がキャロラインに声をかけてきた。
いつもよりミルクを飲ませる時間が早いようだが、どうかしたのか、と。
他の近衛騎士が疑問に思わなかったことを、彼は口にしたのである。
たしかに、いつも決まった時間にミルクを与えていた。
けれども今日ははやる気持ちを抑えきれず、十五分ほど早く行動を起こしてしまったのだ。
それに彼は目ざとく気付いたわけである。
ブランド・フォン・アーベル――ミュラー男爵の本名だ。
かなり優秀な騎士だったことがわかる。
「私はとっさに、昼寝をする時間が短かったから、ミルクを飲む時間が早まってしまったと嘘をついて、その場を逃れたの」
片手には二本の哺乳瓶が入ったかご、片手には角灯。
アルテミス妃の寝所を照らし、キャロラインは思う。
これから彼女の人生を奪うのだ、と。
すでに罪悪感などなかった。
あるのは、作戦をなんとしてでも成功させようと思う気持ちだけ。
キャロラインは赤子のリボンを確認し、青いリボンを結んだほうを抱きしめる。
足早に寝所をあとにする。
王子を抱いて走り去るキャロラインに、ブランド・フォン・アーベルが何かあったのかと声をかけた。
けれども返事をしたのはキャロラインではなく、サーベルト大公が送り込んだ刺客。
アルテミス妃と王女を亡き者にするための作戦が実行された。
「王子を抱いてソーレのもとに行くと、彼女はたいそう喜んでいたわ」
よくやった、誇りだ。
なんて、白々しく褒め称えたという。
「大事そうに王子を抱いていたのに、粗相をしたようで、すぐに私に寄越してきたの」
ソーレは汚い、そうはっきり口にした。
この人は何も変わらないのだ、と思いつつキャロラインは王子のおしめを替えようと産着を脱がせた。
そこで気付く。
王子にあるはずのものが、下半身についていないことに。
あろうことか、キャロラインは間違って、王女を連れてきてしまったのだ。