作品タイトル不明
キャロラインの告白⑦
ソーレは驚くキャロラインを不思議に思い、赤子を覗き込む。
彼女も赤子が王子ではなく、王女だと気付いてしまった。
激しく 激昂(げっこう) し、すぐに王子を連れてくるように命じる。
けれどもアルテミス妃の部屋に刺客が送り込まれたあとだった。
彼らはきっと今頃、アルテミス妃と王子を亡き者にしているはず。
そう告げると、ソーレはキャロラインの頬を打ち、役立たずだと罵った。
口の中に血の味が広がる。
このとき初めて、キャロラインはなんて惨めなのか、と思ったという。
結局、生まれや育ちに関係なく、のし上がることなんてできなかった。
惨めな人生を送る親から生まれた娘は、同じように惨めな人生を送ることになるのだ。
絶望し、自らを嘆いた。
それから数時間後、アルテミス妃と赤子は近衛騎士ブランド・フォン・アーベルの手によって逃亡したものの、川に飛び込んで行方知れずとなったという報告があった。
昼間に大雨が降ったため、川は 氾濫(はんらん) 。
流れもかなり速くなっていたようだ。
産後間もない、体が弱り切っているアルテミス妃と、赤子が酷い状態の川に飛び込んで生きているわけがなかった。
ソーレはなんとしてでも遺体を捜すようにと命じたものの、大がかりの調査をすれば目立ってしまう。
今晩の襲撃は何があっても隠し通さないといけない。
結局調査はされず、アルテミス妃と赤子は死んだものとされた。
そして、ソーレは王妃の座に納まる。
彼女は王女を王子として育てることに決めたという。
性別を偽っていることを国王陛下がなぜ知らないのか、ずっと疑問だった。
まさかこのような計画と事件が隠れているなんて、夢にも思わなかったわけである。
「王妃になってからというもの、ソーレは驚くほど変わったわ」
完全にアルテミス妃に成り代わり、激しい感情を表に出すこともしなくなったという。
けれどもそれは表の顔だった。
何か思い通りにならないことがあると、キャロラインにきつく当たったという。
「それだけでなく、暴力もふるわれたわ」
ある日、刃物を持ち出すようになったのを見た瞬間、キャロラインは気付いた。
いずれ、ソーレに殺されてしまう、と。
「私はありとあらゆる金目の物をかき集め、息子を連れて城を飛びだしたわ」
そんなキャロラインが行き着いた先は、ソレーユ国の果てにある辺境ラウライフ。
「私はそこで息子と共に静かに暮らそうと思ったの」
まさか彼女のバックグラウンドに、そんな事情があったなんて夢にも思わなかった。