作品タイトル不明
ジルヴィードの処分
ジルヴィードとの面会を行った数日後、ヴィルの口から彼が強制送還されたことが告げられた。
「いきなりですね」
「国王陛下の決定だった」
さすがのジルヴィードも、国王陛下の決定には抗えなかったようだ。
「王女殿下に泣きついたようだが」
エルノフィーレ殿下も「一刻も早く、国に連れて帰ってください」と、助け船は出さなかったようだ。
「その、どういった理由でルームーン国に帰されたのですか?」
「ミリオン礦石の取引らしい」
外交官セイン・ローダーの病気の娘を治すために提供しただけとはいえ、禁止されていることをするのはよくない。
その点をしっかり取り締まって、強制送還となったようだ。
ちなみにセイン・ローダーもきっちり罰は受けたという。
「外交官からの解任に、減給、謹慎が言い渡されたようだ」
ただ、娘を助けるためという情状酌量があったらしく、これでも軽い処分だったようだ。
「セイン・ローダーはさておき、ジルヴィード・ド・サーベルトの処分については建前的なものだ」
「ですよね」
サーベルト大公の姪であるキャロラインの子であるルドルフの捜索に、王太子の証を探し回るという、不審な行動の数々である。それだけいろいろと国内で怪しい動きを繰り返す他国の貴族であるジルヴィードを、これ以上野放しにしておけるわけがなかった。
「黒い宝石の正体については驚きました」
「ああ……」
アルプトラウム――魔王を召喚するという媒介。
それの対となるであろう、王太子の証であるヴンシュトラオムの利用方法についても、こちら側が想像していなかったものであった。
「アルプトラウムに、ヴンシュトラオム、それからルドルフ・アンガード。この三つを手に入れたサーベルト大公が目論む野望など、一つしか思いつかない」
それについては私もぐるぐる考えていたのだ。
「この国を乗っ取ること、でしょうか?」
「それで間違いないだろう」
ここ数日、そんなわけがないと打ち消していたものだったが、ヴィルが同意した瞬間、全身にゾッと鳥肌が立った。
「いったいどうしてそんなことを?」
「それはサーベルト大公本人にしかわからないことだろうが……」
これまで以上に、ルームーン国を警戒しなければならない事態となったようだ。
「国王陛下はルームーン国の王女殿下に、今のうちに国へ帰っておいたほうがいいと言ったのだが」
ジルヴィードの強制送還により、ルームーン国との関係が悪化する可能性があるようだ。
最悪、国交が閉ざされるかもしれない。
そうなれば国に帰ることが難しくなるのだろう。
「だが、王女殿下は首を縦に振らなかった」
この国に残り、魔法学校での留学を続けたいという。
「もしも関係が悪化し、帰れないような状況となれば、人質になるとも言い出したようだ」
「それはそれは……」
エルノフィーレ殿下はルームーン国での暮らしが息苦しかった、なんて話をしていた。
そのため、国に戻るという選択をしなかったのかもしれない。
黒い宝石の正体を、ジルヴィードに解析させるまでもなく把握することとなったのだが、次なる問題が浮上してしまった。
「一刻も早く、ルドルフを発見し、保護しなければならないだろう」
ルドルフの身柄がサーベルト大公に渡り、この国の継承権を主張されたら面倒な事態となるだろう。
ヴィルと私は同時に、深く長いため息を吐いたのだった。