作品タイトル不明
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アルプトラウム――初めて耳にする言葉だった。
私以外の人達も、聞き覚えがないからか、小首を傾げている。
「うーわ、なんでこれ、こんな場所にあるの? うちの国にあるやつなんじゃないの!?」
やはりこのアルプトラウムと呼ばれる黒い宝石は、ルームーン国から持ち出された物のようだった。
研究機関の局長がジルヴィードに疑問を投げかける。
「あの、こちらのアルプトラウムという石は、どのような用途で使われる品なのですか?」
「何って決まっているじゃん! 魔王を召喚するアイテムだよ!」
「魔王を、召喚……ですか?」
「そう!」
研究機関では魔王を封じている宝石だろうという見解だった。
まさか魔王を召喚するようなアイテムだったなんて。
「王太子の証じゃなくて、こっちが見つかるなんて!!」
「どういうことですか?」
ジルヴィードはハッとした様子でこちらを見る。
どうやら失言だったらしい。
「おい、ジルヴィード・ド・サーベルト、どういうことなのか言え」
「あー……それは」
彼はこう見せて口が堅い。言うわけないと思っていたのだが……。
「父の野望のために、王太子の証である〝ヴンシュトラオム〟と〝アルプトラウム〟が必要だったんだ。でも、〝アルプトラウム〟は国内で紛失しているという認識だったから、別の人が探している途中で……」
よくここまで喋ったな、と思ったところで気付く。
ジルヴィードの目が虚ろなことに。
彼は自白魔法にでもかかっているようだ。
「王太子の証、ヴンシュトラオムは何に使う?」
「魔王の封印」
「魔王を召喚するアルプトラウムと、魔王を封じるヴンシュトラオムは、なにゆえ両方必要としている?」
「魔王の召喚で人々を恐怖に陥れたあと、こちらが仕立てた英雄が退治したように見せかけ、封印をして人々の信頼を勝ち得たい……みたい」
「結果、何を望む?」
「それは――ハッ!?」
どうやら自白魔法が解けてしまったのか、ジルヴィードは我に返ったようだ。
「俺、何か喋った?」
「いいや、何も」
「うーーん」
ヴィルが指をぱちん! と鳴らすと、ジルヴィードは気を失う。
倒れる前に、レヴィアタン侯爵が抱き留めた。
そんなジルヴィードの懐に、ヴィルは入国査証の延長許可証を差し込む。
「この者はどうする?」
「王宮にある自室にでも連れていってほしい」
「承知した」
アルプトラウムが納められた宝石箱は閉ざされ、再度魔法陣の中心に置かれる。
これからさらに厳重な結界を施すようだ。
「ひとまず、ジルヴィード・ド・サーベルトから聞いた情報を、陛下に報告しに行く」
「私は転移の魔法巻物を使ってガーデン・プラントに戻りますね」
「ああ、すまない」
また後日、話をしようと言ってヴィルと別れることとなった。