軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第052話 仲良し夫婦

用件が済んだ俺達はアーヴィンと別れ、屯所を出る。

そして、牧場で楽しんでいるラシェルとメアリーを眺めながら帰路についた。

「どうする? 250万ミルドに目がくらんで二つ返事をしてしまったが」

店に戻ると、作業をしながらアンジェラに相談する。

「いや、それで良いと思う。見事な営業だったし、あれは二つ返事で受けるべきよ」

アンジェラもそう思うか。

まあ、止めなかったしな。

「水筒作りと兼ね合いになるな」

「ええ。でも、コンロの方は2ヶ月も猶予があるわ。1日1個作って、残り時間を水筒作りに充ててもいいし、最初に水筒を作りまくって、後からコンロの方を作っても良いわ」

うーん、水筒を捌けるうちに捌くと考えれば先に水筒を作りまくった方が良いだろうな。

ただ、納期があるとどうしてもそっちが気になってしまう。

それに来月になって大きな仕事が入ったりして、時間が急になくなるのが怖い。

「コンロは1日1個作ろう。卸すやつじゃない普通に店で売ってるやつが10個あるし、何か不測の事態があっても何とかなる」

「じゃあ、そうしましょうか。頑張りましょう」

「ああ」

方針を決めた俺達はひたすら水筒を作っていく。

この日は30個近く作り、翌日は50個近く作った。

その後もコンロを作りつつ、ひたすら水筒を作っていく。

そして、ひと月近くが経過したのだが、その間、作った水筒が翌日にはなくなるということが続いていた。

儲け的にはすごいのだが、なんか先の見えないゴールに走っているようでしんどくなる。

「なあ、客の勢いが全然、落ちないんだが……」

今日もアンジェラと2人で水筒を作っているし、昨日作った水筒は午前中ですべてが売れた。

「まあね……でも、理由はわかってるでしょ」

もちろん、わかっている。

「半分くらいが他所の人間だな」

10日くらい前から見たことない冒険者が増えだした。

今では町の人よりも多くなるんじゃないかって勢いだ。

「どうなっているのかねー?」

「王都とかの大きい町で口コミで広がっているんじゃない? 冒険者はべらべらしゃべるからね」

ウチの町でもそうだもんな。

ジェイクとかの悪ガキ共はいつもギルドでたむろっている。

「アンジェラ、きつかったら休んでいいぞ」

このひと月は残業も多いし、ほとんど休んでいない。

当然、冒険者の仕事もしていない。

「大丈夫。それよりもコンロの方は?」

「そっちは28個できている。このままのペースで問題ない」

コンロもだが、他の仕事も当然、入ってくる。

それらをやりながらの水筒作りは大変だが、正直、助かっている。

ずっと水筒を作り続けるって苦痛だし、たまに違う仕事をすると良い息抜きになるのだ。

「あとひと月が山場と思いましょう。しかし、最近、帰るのが億劫だわ。もういっそ住もうかしら?」

「色々と待ってくれ」

家を改築したい。

「ちゅーでもする?」

アンジェラ、大丈夫かな?

疲れでハイになってないか?

「しない。客だ」

店の外には人がおり、店に入ってくるところだ。

「いらっしゃい」

店に入ってきたのは40代くらいの身なりの良い男性である。

ハットを被っており、なんかおしゃれだ。

町で見たことがない人だ。

「失礼。ここがローウェル魔道具店で合っていますでしょうか?」

男性はハットを取り、聞いてくる。

礼儀正しいようだ。

「ああ。ここがローウェル魔道具店だ。客か?」

「どうでしょう? 少々、お話をしたいと思っているのです。あなたがこの店のオーナーでしょうか?」

オ、オーナー?

「ええ。私が店長のエリックです」

なんとなく、オーナーとは言えない。

「それは良かった。私はこういう者になります」

男性がカウンターに名刺を置いたのでアンジェラと一緒に見てみる。

「スピアリング商会の……」

「商会長……」

俺達は名刺をじーっと見た後に男性を見る。

「スピアリング商会で商会長を務めているランドル・スピアリングです」

「「ほー……」」

俺とアンジェラはくるりと後ろを向き、顔を寄せる。

「スピアリング商会って王都に本店がある超大手だぞ」

「知ってるし。この国の主要な都市には必ず、支店があるこの国最大の商会っしょ」

やべー人が来てんぞ。

ギャル卒したアンジェラがギャル戻りするくらいにすごい。

「何しに来たんだろ?」

「知んない。でも、話は聞いた方が良くね?」

そりゃそうだ。

俺達はくるりと回転し、ランドルさんの方を向く。

「大手の商会長さんがどういう用件だ?」

「てんちょー、ここで話すより、奥の方が良くない?」

確かに……

「いえ、店はまだ営業中でしょう? アポなしですし、また改めて、来ようと思っています」

いやー、気になるからそれは無理。

「いや、もう15時を回ってるし、ここからはあまりお客さんが来ないんだよ」

「そうそう。もう店を閉めようかと思ってたんでどうぞ奥へ」

閉める気はなかったが、それどころじゃない。

「そうですか? では、失礼して……」

「アンジェラ、頼む。俺は店を閉めるから」

「りょ。どうぞ、ランドルさん。狭いお家ですが……」

アンジェラがビジネススマイルでランドルさんを奥に連れていったのですぐに店の戸締りをし、後に続いた。

「素敵なお家ですな」

テーブルについているランドルさんがリビングを見渡す。

「いや、古い家だよ。修繕や改築をしようと思っているんだ」

「確かにあちこちにガタが来ているかもしれませんな。しかし、温かみのある良い家です」

そうかな?

「どうぞ」

キッチンにいたアンジェラがお茶を持ってきて、ランドルさんの前に置く。

「これはこれは……ありがとうございます。エリックさん、素敵な奥様ですな」

「ははは。いや、この子は――」

「ありがとうございます」

アンジェラは否定せずに礼を言うと、俺の腕を引っ張り、一緒にテーブルについた。