軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第051話 やはり新しいフルフェイスを……

「アーヴィン、話っていうのは?」

いつもは受付で話すのに応接室に呼んだってことはあまり人に聞かれたくないってことだ。

「一昨日の森の件だ。アンジェラちゃん、増援が遅れて申し訳ない」

アーヴィンが頭を下げる。

「こっちはケガ人もいないし、別にいいけど、何があったのよ?」

「兵の半分が遠征実習で北の森に行っていたんだが、それで指揮官の命令系統に乱れがあったんだ。大佐も今回のことを受けて、その辺りの強化を図るそうだ」

平和な町だから非常時の対応に慣れていない人間ばかりだったんだろうな。

「あんなことは滅多にないと思うけど、次はちゃんとしてほしいわね。敗走になったら真っ先に死ぬのは足の遅い私だから」

いや、魔法使いのアンジェラはロジャーが担いでも連れて帰ると思うぞ。

「申し訳ない。冒険者と軍では足並みが揃わないと思い、現場を分けたのだが、それが災いした」

「まあ、こっちは謎のヒーローが助けに来たからいいけどね……ふっ」

鼻で笑うな。

「フルフェイス・マスクマンな。冒険者や軍でも噂になっている」

「大佐と話しただろ」

「それで問題ないと判断されただけだ。でも、普通に名前も格好も変だろ」

変って言うな。

「問題なくてもあれはねー……」

アンジェラでもこれだからな。

「ほっとけ。それよりもアーヴィン、体調はどうだ? 俺は翌日、ヤバかったが……」

「運動不足だな。俺はお前に義足をもらってからは鍛え直しているし、問題ねーよ。神父様も腰がどうちゃら言ってたな」

「調整はいるか?」

「今はまだ大丈夫だ。何かあったら店に行くよ」

問題なさそうだな。

「そうしろ。それで火の原因はわかったか?」

「わかったというか、わからないというか……山火事の原因は火の不始末と判断された」

不始末……

「焚火の跡でも見つかったのか?」

「ああ。まさしくだ。焼けた場所を調査したら野営の跡が見つかった。とはいえ、犯人は見つからんな。冒険者か山師か猟師か……旅人という可能性もある。これ以上は調査しても無駄だ」

あんなことになったし、心当たりがある奴がいても言わんわな。

「調査は打ち切りか? 一応、冒険者ギルドや山師や猟師の組合に調べてもらったら犯人の候補をくらいは見つかるだろう」

「そういったことを昨日、町長やウチの大佐、それに冒険者ギルドのギルマスや組合長なんかが話し合った。結論としては、盗賊なんかの可能性もあるから外部の調査はするが、内部の犯人捜しはしないと決めたそうだ」

なるほど……

「やんないの? なんでー?」

アンジェラがアーヴィンに聞く。

「犯人捜しをすると、町がぎくしゃくするだろ。特に冒険者、山師、漁師は気の強い者が多いし、荒くれ者も多い。下手をすると、決めつけによる冤罪の危険性も出てくる」

「あー……」

アンジェラは覚えがあるようだ。

「それにだ、証拠を見つけるのが難しいから犯人を捕まえるのは至難の業だ。状況証拠だけで捕まえるわけにはいかないし、多大な時間と労力がかかる。さらにもし、犯人を捕まえたとしてもそいつの罪状は森で火の不始末だ。厳重注意が関の山だし、所属している組織をクビになる程度だろう」

一言で言えば、割に合わないな。

「そんなもん?」

「犠牲者はゼロ。あの魔物達だって、町を襲ったわけではない。変に町を不安にさせることもないというわけだ」

「うーん……微妙に納得できない」

まあな。

「アンジェラ、犯人捜しで真っ先に疑われるのはフルフェイス・マスクマンだ」

アンジェラに補足説明をする。

「あー……そうかも」

「アーヴィンはそれを含めて、町での犯人捜しはしないって言ってるんだ」

外部の人間の可能性があるから見回りなどは強化するだろう。

「面倒な時に面倒な人間が町に来たわけか」

10年もいるがな。

「そういうわけでこの件はこれでおしまいと思ってくれていい。アンジェラちゃんもギルドからも火の不始末は注意するようにお達しが来ると思う」

「まあ、火魔法も使える魔法使いだしね。そこは注意する」

俺も注意しよ。

メアリーにも言っておこう。

「アーヴィン、確かに森で火は危ないだろう。良い商品があるぞ。なんと火を使わなくても料理ができる」

持ち運び用コンロ君。

「ああ……その件もあったな。遠征演習から報告も来ており、かなり評判が良いらしい。ケガの救護などでもお湯を使うことも多いし、焚火で水を沸かすよりもずっと早い。もう50個ほど発注したいと思っている」

50個……250万ミルドか。

すげーな。

「納期はいつだろうか? 実は水筒の方がかなり売れていて、追いついていない状況だ」

「わかっている。水筒に関してはウチでも少し話題になっているくらいだ」

軍でもか……

「たいして手間はかからない商品なんだが、いかんせん、俺とアンジェラ、それにたまに手伝ってくれるメアリーだけなんだよ」

「それも重々承知だ。だから特に納期は設けない。別に急いで納品して欲しいものじゃないからな。とはいえ、1年後とかはやめろよ」

さすがにそれはない。

「ふた月くらいもらうと思う」

「それで構わん。前払いは?」

「いや、それも大丈夫だ。部品自体はすでに買ってあるんだ」

水筒もコンロもいっぱい作れる。

「わかった。では、そんな感じで頼む」

「了解。アンジェラ、帰ったら計画を立てよう」

「そうね」

こりゃ家の改修は屋根を含めて、全部やれるな。

「しかし、エリック、腕は落ちてなかったな」

「お前もな」

「俺はダメだ。ロクに走れん」

普通に走ってたけどな。

まあ、昔と比べたらってことだろうけど。

「なあ、神父さんをどう思った?」

「ありゃ暗部かどうかはわからんが、俺達に近しいだろ。森も慣れてたし、何よりも暗闇の中を普通に走ってたぜ。しかも、魔法の展開が異様に早かった」

アーヴィンもそう思ったか。

「え? 何? 神父様ってヤバい人? 戦争に参加してたっていうのは聞いたことがあるけど」

アンジェラが聞いてくる。

「強かったな。かっこつけてたけど」

「ありゃただ者じゃないね。かっこつけてたけど」

な?

「男は皆、そんなもんか……」

シチュエーションが良かったんだよ。

「俺はそうでもなかったぜ?」

「いや、アーヴィンもかっこつけてただろ」

キメ顔で『勝てると思ってんのかね?』って言ってた。

「アーヴィンさんはそれっぽい」

「えー……」

闇の三人衆だろ。