作品タイトル不明
第124話 護衛の仕事
「陛下、話を致しましょう」
隊長が陛下に進言する。
「そうだな。2人共、立て」
そう言われたのでローレンスと共に立ち上がる。
「エリック、ローレンス、此度の問題事への協力に感謝する。だが、エリックとローレンスの名を出すのはこれまでにしよう。これからはフルフェイス・マスクマン、カラスで良いな?」
陛下の口からフルフェイス・マスクマンが……
「それでお願いします」
「私も」
ローレンスと共に頷く。
「うむ。さて、大方の話はメイベルより聞いていると思うが、この城に侵入者が現れた。実に由々しき事態だ」
「心中お察しします」
権力者も大変だ。
「うむ。そこでお前達には警護を頼みたい。昼間は騎士達に任せるが、夜はお前達のような専門家が良いと判断した」
「お任せください」
正直、あの兵士達ではね……
「悩みもせずに頷くとはさすがは黒影団だ。警護に関してだが、メイベルは王妃を頼む」
「かしこまりました」
これはさすがに当然だ。
「フルフェイスは私、カラスは王太子を頼みたい」
俺が陛下?
逆かと思ったが……
どうする?
進言すべきか?
「陛下、よろしいでしょうか?」
隊長が陛下に聞く。
「何だ?」
「陛下にはカラスがよろしいかと……フルフェイス・マスクマンは現役を離れ、魔道具屋の店長をしております。一方でカラスは現役で冒険者をしております。実力、体力面からカラスの方が優れているかと……」
俺もそう思う。
「わかっておる。だからカラスに王太子を任せるのだ。わかるな?」
自分より、次の王様か……
まあ、陛下も50歳を過ぎているからな。
「かしこまりました。陛下がそう判断なさったのならそう致しましょう。フルフェイス・マスクマン、カラス、わかったな?」
「「はっ」」
陛下かー……
年の近い王太子が良かったなー。
10年前は前線に出てきたこともあり、気さくな人と評判だったし。
「では、そのように。さて、お前達も先に現場を見た方が良かろう。大臣、カラスを王太子の部屋に案内してやれ」
「はっ」
大臣が頷くと、ローレンスと共に部屋から出ていく。
「メイベル、王妃を頼む。フルフェイス、マーティー、ついて参れ」
「「はっ」」
俺達も外に出ると、マーティーを先頭に陛下と歩いていく。
そして、階段の先を進むと、とある部屋に入った。
そこは寝室のようで高そうな絨毯が敷かれ、豪華な天蓋付きのベッドがある。
ベッドのそばには水差しとコップが置かれた簡易な丸テーブルと椅子があった。
「ここが私の寝室だ」
「少し見させてもらっても?」
「構わん。しかし、少しじゃなくて、完璧に見ろ」
ごもっとも。
「では、失礼して……」
部屋を見渡しながら隅々まで調べていく。
「陛下、この窓の鉄格子は?」
窓には鉄格子が施されている。
触れてみるが、びくともしない。
「子供の頃から嫌いだったやつだな。敵の侵入を防ぐためのものだが、私からしたら囚われの身のような気分になる」
確かにな……
「窓ガラスも特殊なものですね」
「魔道具だ。ああ……そういえば、お前は魔導屋だったな」
「陛下、王都で話題になっている水筒はエリックさんが作られた物ですよ」
マーティーが陛下に教える。
「ほう……それはすごいな。水筒のことは私の耳にも入っているが、エリックだったか。器用な男だ」
あの水筒、陛下の耳にも入っているんだ。
なんかすごいな。
「ありがとうございます。エリックが聞いたら喜ぶでしょう」
「そうだな……して、フルフェイスよ、どうだ?」
「侵入は難しいでしょうね。扉を押さえておけば問題ないかと」
「そこはマーティーが待機するようになっている」
なら、問題ない。
「隣の部屋は?」
ベッドが置かれている左の方の壁を指差しながら聞く。
「書斎だ」
「そこの警備は?」
「何故、そう思う?」
「壁のように見えますが、少し違和感があります」
秘密の扉があるな。
もちろん、万が一の時に逃げるためのものだ。
「さすがは暗部だな。とはいえ、安心しろ。向こうからは入れん。一方通行だ」
なら問題ないか。
「陛下、私はどこで待機することに?」
「この部屋だ。その辺にでも座ってろ」
陛下が窓際の方を指差す。
「気になりませんか?」
「気になるは気になるが、そんな生活には慣れている。私は王だぞ」
王様も大変だな。
「かしこまりました」
「お前に頼みたいのは早朝の5時までだ」
5時か……
「そこまででよろしいのですか?」
「お前、いくつだ?」
ん?
「年齢でしょうか? でしたら30歳です」
「若いな。羨ましいことだ。この歳になると、眠りが浅くなる。もう5時には完全に目が覚めておる」
そうなのか。
「私の15歳の娘は起こさなければ昼まで寝ますね」
「羨ましいことだ……いや、そうでもないか」
うん。
寝すぎ。
「陛下、まだ18時過ぎですが、私はここで待機していればよろしいですね?」
「ああ。私はこれから食事をし、もう一仕事ある。その護衛はマーティーを始めとする近衛隊がやる。お前に頼むのは私が就寝する時だ」
王様も忙しいんだな。
「かしこまりました。そのように致します」
「それまで待機しておけ。食事や飲み物がいるなら枕元に置いてあるベルを鳴らせ。それでメイドが来る」
「ありがとうございます」
「うむ。では、待機しておけ」
陛下はそう言うと、マーティーさんと共に部屋から出ていった。
「ふう……」
椅子を持ってきて、窓際に座りながら部屋全体を見渡す。
豪華な部屋だと思う。
多分、良いものも食べている。
王妃様も歳を取っておられたが、美しい方だった。
良い人生だなと思うが、この鉄格子がすべてを台無しにしている。
「籠の鳥か……」
自由のない人生だ。
それが権力者であり、王様なのだろう。
メアリーが帝国にいた時のことをあまり語らず、ただ楽しくなかったと言っている意味がよくわかった。