作品タイトル不明
第123話 城へ
俺達は話をしながら過ごしていき、昼食、そして、早めの夕食をルームサービスで済ませると、宿屋を出た。
もちろん、俺もローレンスもまだ普通の格好だ。
街中を歩いていくと、城の近くまでやってくる。
城や大聖堂がある広場には多くの人が来ており、夕日に染まった城と大聖堂を見ていた。
「恋人が多いねー」
「まあ、雰囲気があるしな」
わからないでもない。
「アンジェラちゃんと来ないのか?」
「時間があったら来てもいいが、ここまで遠いし、アンジェラはそんなに教会が好きじゃないからな……」
俺もだけど。
「そんなもんか……あ、隊長」
「ん? あ、ホントだ」
城の門のところに隊長がいる。
そして、腕を組んで、こちらを見ており、早くしろといった感じで足をとんとんさせていた。
「急ぐか」
「ああ」
俺達は誰もいない細い路地に入ると、奥に進んでいく。
すると、木箱なんかが積まれているちょうど死角のスペースを見つけた。
「誰もいないな?」
「ああ。ぱぱっと着替えるわ」
ローレンスが死角に入り、黒装束に着替えだしたので辺りを見張る。
「早くしろよ」
「わかってるよ。お前のその謎の早着替え装置が羨ましいわ」
腕輪ね。
すごいだろ。
「作ってやるぞ。50万ミルドはかかるが」
「高っ! それ、売れんの?」
「売れるわけないな。まあ、売りものじゃなくて、趣味で作った物だ」
ライトセイバーもそう。
「楽しそうだな」
「物弄りが好きなんだよ」
「そうかい。終わったぞ」
ローレンスはこの前の侵入者と同じ黒装束を着て、マフラーで顔を隠し終えた。
さすがに元軍人なだけあって、着替えるのが早い。
「よし」
そう言って、腕輪のスイッチを押すと、一瞬でフルフェイス・マスクマンが現れる。
「やっぱり良さそうだな」
「いつでも言えよ。最近は店も落ち着いてきているし、時間はある」
仕事をしながらでも1週間もあれば作れる。
「考えておくわ。よし、行こう」
「ああ。メイベル殿を待たせるのも悪い」
「ノリノリ……」
俺達は路地裏から出ると、城に向かう。
広場にいる人達が驚いたように俺達を見てくるし、さすがに城の前にいる兵士が身構えた。
しかし、隊長が軽く手を上げて、制すると、兵士の緊張がなくなる。
「お待たせした」
「うむ。実に怪しいな。日が出ているうちに外に出てはいけない2人だ。特にお前」
隊長が俺を見てくる。
「ミルオンの町では堂々と町中を歩きましたよ」
「そうか。まあいい。ついてこい。陛下がお会いになるそうだ」
「わかった」
俺達は隊長についていき、門をくぐった。
中は庭の広場になっており、多くの兵士が見回りや歩いている。
そして、全員がこちらを見て、目を細めるが、隊長と一緒ということですぐに警戒を解いた。
「多いな……」
「厳戒態勢中ということだ」
それでも隙が見える。
数を増やせばいいということではないのだ。
俺達は庭を歩き、城の中に入った。
そして、隊長の案内で歩いていく。
「メイベル殿、陛下には?」
「午前中に協議をし、伝えてある。また、お前らの格好についてもご承知された」
「ご厚意に痛み入る」
「そう思うならしっかり働け。褒美も出るぞ」
あー、そういやそうか。
「金かな?」
「それが後腐れがなくていいだろ」
確かにな。
勲章なんかもらっても仕方がないし。
「わかった」
「俺は普通に助かりますね」
「成果を出せよ」
俺達は歩いていき、階段を上っていく。
やはり兵士が多いなという印象だったが、5階までやってきて、さらに増えた。
「メイベル殿、さすがに考えた方が良いぞ」
兵士を見ればどこに陛下がいるのか一発でわかる。
間違いなく、奥の部屋だ。
何故ならそこだけ近衛隊の騎士が守っているから。
「わかっている」
俺達がそのまま廊下を進んでいくと、2人の騎士が警備している突き当たりの扉の前まで来る。
「これはメイベル殿。そちらが部下の方ですかな?」
騎士が隊長に聞く。
「元な。陛下は?」
「中におられます。どうぞ」
騎士が勧めると、隊長が扉をノックした。
「メイベル・ヘミンズリーです」
『入れ』
中から厳かな声が聞こえてくると、隊長が扉を開け、中に入る。
俺とローレンスも続いて中に入ると、テーブルにつく、白髭を生やしたおっさんと綺麗なおばさんがいた。
もちろん、国王陛下と王妃様である。
陛下のそばに大臣、護衛の女性騎士がおり、さらには隊長の旦那さんのマーティーさんの姿もあった。
「陛下、このような姿ですが、黒影団であり、私の部下だったエリックとローレンスです」
隊長がそう言うと、意識してないのにローレンスと共に自然とその場に跪いた。
「うむ。かの英雄の帰還を心より歓迎しよう。エリック、ローレンス、顔を上げよ」
陛下に言われたので顔を上げる。
もっとも、俺もローレンスも顔を隠したままだが。
「陛下、10年前の帰還命令を破ったことを謝罪します」
まずはこれを言っておかないと。
「よい。事情は聞いているし、10年も前のことを今さら咎める気もない。また、そなた達がすでに軍属を離れ、第二の人生を歩んでいることも聞いた。よって、そのような姿であることも許そう」
「ご配慮に感謝いたします」
「当然のことだ。そなたらは真の英雄。軍属を離れ、第二の人生を歩んでいる中でこうして、また現れてくれた。それだけで私は嬉しい」
どうも。
俺達を疑っている感じではないな。