軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第122話 信じたいが……

飲み会も終わり、隊長宅をあとにすると、【青瑠璃の宿】まで戻る。

「じゃあ、エリック、明日な」

「ああ、遅れるなよ。俺の格好は目立つからあまり待ちたくないんだ」

「わかってるよ」

ローレンスは苦笑いを浮かべながら手を上げ、宿屋の方に帰っていった。

俺とアンジェラも宿屋に入ると、2階に上がる。

そして、メアリー達の部屋の扉をノックした。

『ほいほーい?』

「私」

アンジェラが簡潔に告げると、すぐに扉が開かれ、髪を下ろしたメアリーが顔を出す。

「お? エリックもいる。飲みから帰ってきたの?」

「ああ。ローレンスも交えて、昔の知り合いに会って来たんだよ」

「おー、エリックにもちゃんと友達がいたんだね。お母さん、嬉しい」

お母さんって何だよ。

あと、すまんが、友達ではない。

「メアリー、明日の予定は?」

アンジェラがメアリーに聞く。

「買い物ー」

「じゃあ、私も行くわ」

「おー、アンジェラちゃんもかー。エリックは?」

メアリーが首を傾げた。

「俺は別の用事がある」

「そっかー。じゃあ、4人で行こっか。ジャラジャラを買ったげるね」

「どうも。明日は何時?」

「10時くらい?」

遅いが、メアリーは遅起きだからそんなもんか。

「わかった。じゃあ、それくらいに部屋に行くから」

「りょーかい」

用件を終えたので自分達の部屋に戻った。

そして、ソファーに腰かけ、一息つく。

「ふう……」

「大丈夫? 結構飲んでたけど?」

隊長の酒は断れないし、旦那さんも結構勧めてきた。

さすがは体育会系と評判の騎士だ。

「これくらいならな。そっちより隊長の話がな……」

「そうね……エリックは最初からメイベルさんが現役の暗部ってわかったの?」

「ああ。なんでと聞かれると答えにくいが、やはり同業者は雰囲気でわかるし、ましてや、隊長は生死を共にした人だからな」

ローレンスもわかっていたし、アーヴィンもわかるだろう。

「そう……気を付けてね」

「ああ。それとここに転移の魔法陣を置いてもいいか?」

「家にあるやつ?」

「ああ。それを置けば王都内くらいだったらいつでも戻ってこられる」

さすがにここから家まで戻るのは無理だが、王都内なら範疇だ。

「転移はいいけど、実際のところ、どんな感じになるの? 夜の護衛よね?」

「多分、王太子と陛下がお休みになられた後、見張りをする感じだな」

「大丈夫なの、それ? フルフェイス・マスクマンで行くんでしょ? 怪しすぎ」

まあ、怪しいな。

「王族も暗部は信用すると思う。ましてや、俺達は色々と言われているが、ノクス戦争で活躍した英雄でもあるんだ。そして、隊長は王族からそれだけの信用があるということだろう」

すでに軍部を離れているが、陛下も俺達を無下にはしないだろう。

そして何より、これは俺達は関係ないというアピールでもある。

「なるほどね……気を付けてね」

「ああ。夜の見張りだから戻ってくるのは朝方になると思う。さすがに起きて待たなくていいからな」

「ちょっと無理ね。寝てるわ」

何時に戻るかはわからないが、アンジェラを起こさないようにしないとな。

「せっかくの王都旅行なのに悪いな」

「仕方がないことだし、いいわよ。メアリー達の面倒でも見てる。さて、お風呂に入って寝ましょうか」

「ああ。そうだな」

俺達は風呂に入り、さすがにもう飲む感じでもなかったので就寝した。

翌日、ちょっと遅めに起きると、アンジェラと朝食を食べる。

そして、10時くらいになると、アンジェラが出ていったのでナイフなどの武器のメンテナンスを始めた。

すると、ノックの音が部屋に響く。

「はい?」

『お客様、ローレンス様がお見えですが、いかがしましょうか?』

いつも食事を持ってきてくれる男性の声だ。

「通してくれ」

『かしこまりました』

そのまま待っていると、再び、ノックの音が聞こえてくる。

「開いてるから入っていいぞ」

そう答えると、扉が開き、ローレンスが部屋に入ってきた。

「よう。朝から物騒なもんを弄ってんな」

ローレンスが陽気に挨拶をし、L字ソファーの離れた位置に腰かける。

「まあな。俺はお前と違って現役じゃないからこういうのをしっかりしておかないと不安なんだ」

「お前はすぐに現役に復帰できるよ。嫁さんは?」

「もう出た。メアリー達と買い物だな。それよりもどうした? 18時に城の前で集合だろ?」

さすがに早い。

「やることがなくてな。さすがに夜に仕事があるとなると冒険者の仕事をする気もないし、部屋で待っていても落ち着かないからここに来たんだ」

まあ、わかるな。

俺も落ち着かないからメンテをしている面もある。

「ローレンス、お前、やれるか?」

「何をだ?」

「ハドン、ウォルトン、マーストンが来た場合に剣を取り、それを振れるか?」

「嫌なことを聞いてくるねー」

そうだな。

でも、お前が落ち着かないのはそれのせいだ。

「俺はお前と対峙するのに不安はなかった」

この前の領主宅を襲撃してきた時の話ね。

「お? 俺を殺せるか?」

「すまんな、ローレンス。俺にはお前以上に大事なものがあるんだ」

マジで戦って、現役バリバリのこいつに勝てるかは置いておく。

「ははっ! そりゃそうだ! というか、そうでなくてはいけないだろ。お前もアーヴィンも家族がいて、大事な生活がある」

俺にはアンジェラとメアリーがいる。

アーヴィンにもケリーさんとパトリックがいる。

「お前はどうだ?」

ローレンスは人一倍仲間想いな男だ。

「やるさ。国を想う気持ちだってあるし、もし、あいつらが本当にそんなことをしているなら止めないといけない気持ちもある。ま、あいつらが犯人と決まったわけじゃないがな」

それはそうだ。

とはいえ、ローレンスも隊長もわかっているだろう。

城に忍び込んだということはその道のプロだということ……

そして、俺達なら……黒影団なら後方支援担当のミスティですら可能だということも。