作品タイトル不明
第121話 こいつ、マジか……
「隊長、それはわかりましたが、それを俺達に話す理由は?」
「1週間前、城に何者かが忍び込んだ」
城に……
「それはまた物騒ですね」
「現在、厳戒態勢中だ」
「あれで? 観光で城を見ましたが、そんな風に見えませんでしたよ」
アンジェラにも言ったが、簡単に忍び込めそうだった。
「戦争が終わり、軍縮をしたと言っただろう。それと単純に平和ボケだ」
「俺達黒影団なら誰でも忍び込めます」
「わかっている。しかし、兵士共にこれ以上を求めるのは無理だ」
軍縮はわかるが、兵の練度を落とすなよ。
「犯人の目的は?」
「不明。しかし、あちこちで起きているテロを考えると、放っておくことはできない」
まあ、そうだな。
「俺とローレンスに協力しろと?」
「私達なら忍び込める。逆を言えば、忍び込んだらわかるし、護衛もできる。だが、私1人では無理だ」
1人では休憩もできない。
ましてや、隊長には家族がいる。
というか、乳飲み子がいるな。
「隊長、俺は協力します。というか、しないとマズいでしょ」
ローレンスが一歩前に出る。
「お前は最初から決定している。罪を償え」
そうするべきだと俺も思う。
「2人でできますか?」
「できると思うか、エリック?」
無理。
「俺、来週から再来週には帰るんでそれまでですよ? 店があるんです」
「いいのか?」
隊長がアンジェラを見る。
「ちょー良い女は男のやることに口を出さないの」
アンちゃん、かっこいい……
「そうか……では、仕事の協力を頼みたい」
「具体的には何でしょう?」
「王族の護衛だ。ただ夜だけだな」
まあ、昼間は近衛隊がやるか。
「王族は王様、王妃様、王太子殿下でよろしいですね?」
他にも王子様や姫様がいるが、俺達が守れるのは3名だけ。
ならその御三方だ。
「そうなる。具体的な仕事内容は明日、また話す。というか、城に来てもらうことになる」
城か。
久しぶりだな。
「隊長、一つ確認があります」
大事なこと。
「何だ?」
「我らは暗部であり、帝国には恨まれた存在です。そして、俺もローレンスもすでに軍属ではありません。俺に至っては店をやっています。国の上層部はともかく、城の者に姿や名前を晒したくありません」
そもそもそれが暗部だ。
「あ、できたら俺も……」
ローレンスもミルオンの町に来るわけだしな。
そうなると、俺達と旧友のアーヴィンも暗部であったことがバレる。
「わかっている。私も隠しているからな」
当然だ。
隊長には子供がいる。
「兵士達に怪しまれるかもしれませんが、その方向でお願いします」
「わかった。お前達のことは私が陛下や大臣に話しておく。名前は適当な偽名やコードネームでいい。姿も布で顔を覆っておけ」
そう言うと、ローレンスが長いマフラーみたいなものを取り出し、顔を隠す。
「これに黒装束でいいっすか?」
まんまこの前の領主宅襲撃犯だな。
「それでいい。コードネームはカラスだ」
かっこいいな。
「わかりました。そんな感じでいきます。えっと、お前は……」
「エリック……」
ローレンスとアンジェラが何かを予感した顔で見てくる。
「ふむ、エリックはどうするか……」
「隊長」
考え始めた隊長を制する。
なお、アンがため息をついた。
「何だ? あ、お前は自分で考えられるか。そういうのが好きだもんな」
黒影団と名付けたのは俺だしね。
「ちょっと上を見てください」
「んー?」
隊長が星空を見出したので腕輪のスイッチを押した。
すると、あっという間に正義のヒーローがこの場に現れる。
「ふっふっふ……」
「あーん? 声が変わっ…………」
こちらを見た隊長の時が止まった。
「こんばんは。メイベル殿」
「…………エリック?」
「私は漆黒の使者、フルフェイス・マスクマンだ」
「そうか……嫁の顔を見てみろ」
見なくても冷たい目をしているのはわかっている。
「私は正義のダークヒーローでいく」
「キャラまで作ってやがる……ミルオンの町に現れた謎の仮面男はお前かい……」
隊長の耳にも入っていたらしい。
さすがは暗部だ。
「メイベルさん、きっかけはメアリーが冒険者デビューをした際にこっそり覗くための変装です。これで冒険者登録もしています」
アンジェラが呆れた口調で説明する。
「すごい大物がウチの隊にいたもんだ……エリック、本当にそれでいくのか?」
「ええ。姿を隠すにはぴったりです」
「そうか……まあいい。では、明日の昼に城に行くから13時に中央の広場…………いや、城の前に集合な」
一緒に歩くのを嫌がったようだ。
「わかった」
「了解です」
俺とローレンスが頷く。
「アンジェラ、せっかくの旅行中なのに旦那を借りてすまない」
隊長がアンジェラに謝る。
「いえ、大事なことですから。私達が平和に育ったのもメイベルさん達のおかげです」
「なるほど。確かにちょー良い女だな。それに比べてお前は……」
何か?
「メイベルさん、いいんです。エリックが子供っぽいところがあるのはわかってましたから。だからこそ、メアリーと上手く暮らせていたわけですし」
メアリー……俺ら、ディスられてんぞ。
「そうか。エリック、嫁への感謝を忘れるなよ」
「当然だよ」
「そうかい……もう戻れ。そろそろ旦那がシャーロットの風呂を入れ終えただろうし、下に戻るぞ。飲み直そう」
「わかった」
腕輪のスイッチを押し、元の姿に戻る。
「どうなってんだ、それ?」
「そういう魔道具です。ウチは魔道具屋なんで。あ、風呂に浮かべるアヒルの親子さんセットをプレゼントしますよ。娘さんも大喜び間違いなしです」
「ありがとよ」
俺達はリビングに戻ると、マーティーさんを交えて飲み直した。