軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第119話 10年以上も疑問に思わなかった

隊長の家に招かれ、楽しい飲み食いをしていたが、シャーロットが食べ終えると、マーティーさんが赤ん坊とシャーロットを連れて、奥に入っていった。

「良い旦那さんですね」

かっこいいし、良いパパって感じがする。

「そうだな。ほら、飲め」

元の隊長に戻ると、俺とローレンスにワインを注いでくれる。

「あざっす」

「もらいます」

上官に勧められたのでありがたく頂き、ぐいっと飲む。

もはや条件反射と言ってもいい。

「よろしい。さて、場所を移すか。お前ら、ついてこい」

隊長はそう言うと、ワインの瓶を持ち、立ち上がった。

俺達も立ち上がると、隊長がマーティーさん達が入っていった部屋とは違う扉を開け、廊下を進んでいく。

そして、階段があり、そこを上がると、平屋の屋上だったが、すでに辺りは暗くなっており、星空と王都の町の明かりが見えた。

「屋上なんてあるんですね」

「洗濯物を干すところだな。あと、子供達が寝た後にここでたまに旦那と飲む。さっきローレンスが聞きたかったことを教えてやろう。こんな感じで外を眺めている時に告白され、また、同じようなシチュエーションの時にプロポーズされた」

「そっすか」

お前が聞いたのにその反応は何だ?

気持ちはわかるけど。

「失礼な奴だ。キスのシーンは省いてやったんだぞ」

言ってんじゃん。

「すみません。俺らにとっては鬼上官だったので」

「上官は鬼だ。じゃなきゃ死ぬ。まあ、それでもビルとローランは死んだがな……」

隊長の声色が弱くなった。

そして、隊長の後ろ姿が異様に小さく見えた。

「ビルとローランの家族には?」

「会った。ビルの親には怒鳴られ、ローランの親には酒瓶を投げつけられた」

何とも言えない……

「隊長、すみませんでした。やはり自分は勝手だったようです」

ローレンスが謝る。

「気にするな。それが上官の役目だ。ただな……私もせめて勝てましたと報告したかったよ。それなら殴られようが、酒瓶を投げつけられようが、我慢できる。誰が死のうが、どれだけ犠牲が出ようが勝利のためと鼓舞し、戦ってきたわけだからな」

隊長も俺達と同じ気持ちなのはわかっていた。

「すみません……」

「飲め」

隊長がこちらを向き、勧めてきたのでグラスを差し出し、ワインを注いでもらう。

そして、一気に飲み干した。

「一口でいいわ、バカ」

隊長が笑う。

「飲みたい気分なんですよ」

「アーヴィンも同じことをするでしょう」

あいつは普段から普通に飲み干すがな。

「そうか。エリック、お前はこれからどうする?」

「どうするとは?」

「そいつと結婚した後だ」

隊長がアンジェラを指差す。

「俺は店がありますし、これまで通り、頑張りますよ」

「そうか。よろしい。奥さんを大事にしろ。それとお前の娘だが……」

隊長が言いよどんだ。

「メアリーが何か?」

「いや、よい。ただ、これだけは知っておけ。10年前の戦争末期、帝国では内乱が起きそうになっていた。帝国が停戦に応じたのはそういう背景があったからだ」

内乱……メアリー……

「わかりました。ただ、メアリーは俺の娘です」

「よろしい。ローレンス、お前はどうする?」

隊長が今度はローレンスを見る。

「数日中にはここを出て、ノクスに向かいます。その後はミルオンの町に行きます。そこからは……ちょっと考えます」

「例のヴィオラだったか? まあ、良いことだな。私の目から見てもお前は所帯を持った方が良い。別にその子と上手くいかなくてもお前を良いという女はいくらでもいる」

そうそう。

ローレンスは欠点も多いが、良い奴なんだ。

「そうですかね? 隊長も?」

これは欠点の方。

「既婚者に言うな。それにお前は私を抱けんだろ」

「綺麗な人だとは昔から思っていました」

「よろしい。100点満点の答えだ」

隊長は満足そうに頷く。

そして、振り向き、瓶に口をつけ、ワインを飲んだ。

「教育、教育」

「シャーロットは風呂だ」

「まあ、そうですけど」

いつまでその良きお母さん仮面を被るんだろう?

「さて、エリック、ローレンス、私が主婦に見えるか?」

「見えます。良い奥様ですし、お母さんだと思いますよ」

「料理も美味かったですしね」

うんうん。

「本当は?」

「現役に見えます」

「まったく衰えが見えません」

最初に会った時からそう思っていた。

「その通り。エリックは最初、私が軍を辞めた後に何をしていたか聞いてきたな」

後で話すって言われた。

「はい。アーヴィンから軍の名簿に名前がないと聞きました」

「私は暗部を辞め、近衛隊に入った。そして、結婚と同時にそこも辞めた」

まあ、よくあることだ。

ましてや、旦那さんは騎士。

収入は良い。

「辞めてないんですね?」

「近衛隊を辞めたのは確かだ。だが、実際は暗部に戻っただけだ。黒影団のように部隊があるわけではないがな」

なるほどね。

「今でも王妃様からお茶会に誘われるのはその関係ですね?」

「ああ。本当にお茶ももらうが、仕事の話をするためだ」

やはりか。

「このことを旦那さんは?」

「もちろん、知っている」

そりゃそうか。

ローレンスに隠し事をしないように勧めてたし。

「それを俺達に言うのは何か話があるからですね?」

「ああ」

まあ、隊長が夕食に誘ってきたくらいでなんとなくそうじゃないかなって思ってた。

「何でしょう?」

「その前にアンジェラはいいのか?」

そう言われたのでアンジェラを見る。

アンジェラはいつもの涼しい顔のままだ。

「隠し事をするとロクなことがないのでは?」

「ふむ。では、話を続けよう。我らはかつて、同じ暗部だった。チーム名は黒影団。正式名称は特殊任務実行部隊だった。しかし、誰かさんが黒影団と名付けたため、そう呼ばれているし、実際に採用された。おかげで、私は何故か団なのに隊長というよくわからないことになった」

あ、ホントだ。