軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13話 ルシアン王子の無駄足

「フェリシアの不正を教師たちに知らせてやろう」

「ルシアン殿下、私もお供いたします」

ルシアン王子は、婚約者ラルベル公爵令嬢セリーヌとともに、教師たちが詰めている研究室を目指して学院の廊下を歩いた。

まずは公用語の教師たちが詰めている研究室を訪ねた。

そしてそこで担当の教師に言った。

「フェリシアの試験結果はおかしい。不正の疑いがある」

ルシアン王子がそう言うと、教師は問い返して来た。

「不正の疑いとは……。どのような根拠があるのでしょう?」

「フェリシアの点数が高すぎる。不自然だ」

「フェリシア嬢は優秀です。妥当な得点でしょう」

「妥当なわけがあるか!」

ルシアン王子は眉を吊り上げた。

「フェリシアの成績は私より下だったんだぞ」

「むしろそちらのほうが不自然でした」

「は? どういう意味だ?」

「フェリシア嬢は授業では優秀でした。指名されてもすらすら回答していた。宿題のレポートもいつも素晴らしいものでした。しかし彼女は何故か、試験だけができなかったのです」

「授業では、隣りの席の者に回答を教わって答えていたのだろう。宿題など、いくらでも他の者にやらせることができる」

ルシアン王子はフェリシアの手口について、推理を述べた。

しかし教師は冷たい目でルシアン王子を見た。

「それはルシアン殿下がいつもなさっていることでは?」

「……っ!」

教師の指摘は図星だったので、ルシアン王子は怯んだ。

「……」

ラルベル公爵令嬢セリーヌは、ルシアン王子と教師とのやりとりを、ルシアン王子の後ろに控えて聞いていた。

(ルシアン殿下は、宿題を他の者にやらせていたの……?)

教師に見つめられて、ルシアン王子は明らかに怯んでいた。

そのルシアン王子の行動が、教師の指摘が正解であることを示していた。

(……宿題くらい些細なことよ。それにルシアン殿下は政治でお忙しいのですもの。きっと宿題などやっている暇がないのよ)

ルシアン王子は、王太子だ。

ルシアン王子が政治的な会議に出席して意見を言っていることを、セリーヌは聞き知っていた。

ラルベル公爵領の復興案は、ルシアン王子の提案だ。

その案を、提案できた事実こそが、ルシアン王子が政治的な会議に出席していることの証拠だった。

(政治に比べたら、宿題など些細なこと)

セリーヌは、ルシアン王子が宿題をやっていないことを許した。

「フェリシアの奴、教師たちを買収しているのか?!」

ルシアン王子は教師たちの研究室を回り、フェリシアの不正を訴えた。

だがどの教師も、フェリシアのことを優秀だと褒め、今回の試験結果は妥当だと言う。

フェリシアが、教師たちを何らかの方法で買収したとしか考えられなかった。

「ルシアン殿下、マルク・セルネなら何か知っているかもしれません」

セリーヌが、セルネ男爵令息マルクの名を出した。

マルクは秀才の誉れ高く、今回の試験で首席だった生徒だ。

「そうなのか?」

ルシアン王子は首を傾げた。

マルクは、ルシアン王子がフェリシアの不正を指摘したときに、フェリシアやユベールの肩を持ち、ルシアン王子に意見した生意気な下位貴族だ。

「マルク様はもともとユベール様とは犬猿の仲でした。何か知っていたら教えてくれるかもしれません」

「あの男は、授業を聞いているだけで八十点が取れるというフェリシアやユベールの戯言に同意をして、あいつらの肩を持った男だぞ?」

「あの場には他の生徒たちの目がありました。マルク様の実家は男爵家。モンフォール公爵に睨まれたら、立ち行かなくなることでしょう」

「……! なるほど。フェリシアに脅されているのか!」

「人目が無い場所でなら、真実を話すかもしれませんわ」

「はあ? 脅されてなどいません」

ルシアン王子は、セルネ男爵令息マルクに尋ねた。

モンフォール公爵家の権力を笠に着たフェリシアに脅されていないかと。

しかし、答えは否だった。

「そもそもフェリシア様とは話をしたことすらありません」

「そんなわけがあるか!」

「この学院の生徒のほとんど全員が、フェリシア様とはろくに話をしたことがないと思います」

マルクは冷めた目で語った。

「フェリシア様は、ルシアン殿下のご婚約者だったときには、いつも一人で自主勉強をしていました。ルシアン殿下とのご婚約を解消した後には、ユベール殿にべったりです。彼女は他の誰とも話をしていません」

マルクがそう言うと、セリーヌが異を唱えた。

「私はフェリシア様と話したことがありましてよ!」

「それはセリーヌ様が、フェリシア様に話しかけたからでしょう。話しかければフェリシア様は答えるようです」

「……」

マルクの説明に、セリーヌは黙った。

「脅されていないのであれば……」

ルシアン王子はマルクに質問した。

「どうしてフェリシアやユベールの味方をしたのだ」

「お二方の味方をしたわけではありません」

マルクは淡々と答えた。

「事実を言っただけです」