軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24 朝ごはんは和食を

すっきりと目覚めたサラは、今は夕方くらいかなと思った。

疲れは取れて、今度はお風呂に入りたいのと空腹を感じたので、アンナにテレパシーを送ってみた。

『アンナ、サラだよ。起きたから、お風呂の用意をお願いして良いかな』

『わかりました。すぐ伺います』

程なくしてパタパタと足音が聞こえ、アンナとミルコが「おはようございます」とやって来て部屋のカーテンを開けた。

眩しい陽の光が部屋の中を照らし、サラは「あれ、もしかしたら今って朝?」と驚いて起き上がった。

「はい。サラ様は、とても良くお休みでしたね。お疲れが取れたら良かったです」

「めちゃくちゃスッキリした。私、12時間以上寝てたんだね」

「あれだけの魔法を使われたら、それ位寝るのは当たり前だと、イーサンが話していました」

「そうなんだ」

アンナと話していると、ミルコが「お風呂の用意が出来ました」とやって来た。

「ありがとう。そうだ。悪いけど、お風呂に入ってから食事をするって、魔王様に言っておいてくれる? 昨日起きたら声かけてって言ってたから」

「かしこまりました」

部屋に付いているバスルームには、陶器の白いバスタブが置かれていた。憧れの可愛い猫足である。バスマットも部屋にあるラグと同じく、ブルーの糸で編まれていた。

(イーサン、これも心を読んで用意してくれたのかな…)

少女趣味でちょっと恥ずかしいと思いながら、サラはいい匂いのする入浴剤の入った湯につかった。しばらく湯を堪能していると、アンナとミルコが「サラ様。入ってもよろしいですか」と声をかけてきたので応じると、二人はシャンプーやトリートメント、その他沢山の美容グッズを持って入って来た。

「私たちが洗髪とマッサージをしますので、ゆっくりお休みください」と言われ、自分で出来るけれど、お願いしちゃおうかなと甘えたサラは、そのまま二人の施術に身をゆだねた。

(ふわー。極楽極楽)

さすがに12時間以上寝た後では眠らないと思っていたが、しっかりウトウトしたサラは、アンナから「サラ様。終わりました」と声をかけられて目を覚ました。

(信じられないくらい気持ち良かった)

ボーッとしたまま身体をタオルで拭いてもらい、楽な服を着てその上にガウンを羽織り果実水を飲んでいると、ノックの音と共に魔王の声がした。

「サラ、おはよう。入っても良いかな」

「どうぞ」

許可を得て入って来た魔王の姿は、朝の光に照らされ、昨日より一層輝いていた。

心なしか黒髪の艶も増し、瞳もあのブラックダイヤモンドよりきらめいている。

(魔族って夜とか暗闇のイメージなんだけど、輝きすぎだよ…反則でしょ)

「おはよう、魔王様。昨日はあのままずっと寝ちゃって、声かけられなくてごめんね」

眩しさに目を細めながら挨拶をすると、魔王は「昨日あんなに頑張ってくれたんだから、当然です」と微笑んで腰をかがめ、サラの手をすくい口づけを贈った。

(うわっ!)驚いてとっさに手を引っ込めようとしたが、ただ乗せられているだけの手が何故か動かず、数秒そのままの状態を保たれて気を失いかけた。

動揺しているサラを見た魔王は、妖艶に口元の笑みを深め、やっと手を離した。

「疲れが取れているようで良かった。一緒に朝食に参りましょう」

立ち上がると、いつの間にかイーサンが部屋の中にいる事に気付いた。

「あ、おはよう。イーサン」何となくホッとして挨拶をすると、「サラ。まだ髪が湿っている」

イーサンの手が動いたかと思うと、頭に温風が通って髪が完全に乾いたのが分かった。

「ありがとう」「どういたしまして」

サラがイーサンと会話して笑い合うのを、魔王は黙って見つめていたが「さあ、参りましょう」と再びサラの手を取って歩き出した。

朝食を取る部屋に入り、そこに並べられた品を見てサラは目を瞬いた。

「え、これって和食じゃない⁈」

白いご飯、鮭、卵焼き、味噌汁、加えてぬか漬け。つやつやしたご飯に、口の中につばが溜まるのを感じて、サラは一直線にテーブルに向かった。

「美味しそう!パンも大好きだけど、やっぱりご飯が食べたかったー」

これももしかしたらイーサン?と顔を見ると、イーサンはうなずいた。

「サラの好きな物を揃えてみたが、気に入ったか?」

「うん!ありがとう、イーサン。嬉しいよ」

いただきまーすとサラが食べ始めると、魔王とイーサンも席に着いて同じように食べ始めた。

しばらく夢中で和食を堪能していたサラだったが、人心地ついた頃、二人が自分と同様に箸を使い、普通に和食を食べているのに今さらながら気づいた。

「あのさ、何で二人は箸で普通に食べられるの。和食なんて、この世界には無いでしょ」

ちょうどぬか漬けをつまんで口に運んでいた魔王が、箸をおいて質問に答えた。

「無いですね。ですがサラの好きな物なら、私たちも好きなのが道理ですから。和食というこの食事も、大変美味しいですよ。

この道具の使い方も、サラの中のイメージをイーサンが読んで教えてくれたので、そのままなぞれば良いだけで問題ありません」

「サラの頭の中は食べ物で溢れていたからな」イーサンがニヤリと笑う。

「イーサン!やっぱり頭の中を沢山のぞいてたんじゃない」

二人がやり合い始めると、若干不機嫌な魔王が「そういう訳で、サラはここで暮らしても好きな食べ物に不自由はありませんよ」と話を終わらせた。

食事を終えソファのある部屋に移って、三人で大変美味しい緑茶を飲んでいた時、サラは「そういえば、魔王様。昨日この国の為に私が出来る事があるって言ってたよね」と思い出した。

魔王は「サラ様。覚えてくださっていたんですね」とそれだけで嬉しそうにして「実は、この国に結界を張り巡らせたいと思っているんです」と答えた。