軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

405話 乗り込め、敵の本丸へ

翌日。

自分の体調を冷静に受け止めつつ、皆で朝食後に支度の準備を進める。

「ごめんね~仕事増やしてばっかで」

「いや、それは構わないが……今回もまた、それなりに多いな」

「これもどこかの軍隊?」

「一応そうなるのかな? 盗賊に扮して民間人殺し回ってた連中だから、まったく兵とは言えないけど」

「この人達も、ラグリースで悪いことしたの?」

カルラとゼオは庭の花畑を見るくらいに平然としているけど、なぜかエニーがやたらと順応早いんだよなぁ……

死体の山を見ても、もう動揺している様子がまるで見られない。

「そそ。ラグリースがヴァルツに攻められて大変な時に、同盟国のくせして背後から南西のオーバル領を襲ったんだよね。ジュロイの仕業ってバレないように、わざわざ野盗に変装までしてさ」

「何それ、最悪じゃん」

「ほとんど生存者がいないんだからほんと最悪だよ。だから俺が悪いことしたジュロイのやつらをぶっ飛ばして、ついでにオーバル領の復興用資金ぶんどってきたってわけ。まだ全部は終わってないけどね」

「なんかロキ、領地のために頑張るって、王様っぽくない?」

「ほんとだ、ちょっと王様っぽい」

「いや、おまえ、一応王様だろ」

ロッジから冷静な突っ込みが入るも、まったく自覚がないのだからスルーしておくしかない。

それより、だ。

「あと崖の下に教会もどき作っといたから、祈祷とかステータス判定とか、気になったら好きにやってもらって構わないからね。ちょっとした裏技で、 神官(プリースト) 無しでも職業選択までできるようにしてあるから。しかも全部無料で」

「え? もどき??」

「いや、待て、意味が分からないんだが?」

「6体の神像と黒曜板を設置したの。戦争で潰れた教会なんてラグリースにいっぱいあるからさ」

さすがにここはバカ正直に答えられないからなぁ……

でもこれで納得できたっぽく、頷きながら少しずつロッジの首が傾げていく。

「職業選択って一人でどうやんだよ?」

「えーと、今自分が就ける職業の種類は 神官(プリースト) がいないから教えてもらえないけど、こないだ見せた『本』でも参考にしながら、"この職業になりたい"って限定して願えば、なれる場合はそのまま職業に就けちゃうんだよね」

「おーすごっ!」

「マジかよ!」

「無事に就けたかどうかは横の黒曜板が使い放題なんだから、表示されたスキルレベルで判別できるんだし、初級職でもなければそう難しくないでしょ?」

【神託】が必要ないやり方として、アリシアと二人で頭を捻りながら考えた裏技なので間違いない。

二人に説明しているようで、これはちゃっかり後ろで聞いているゼオに解説してるようなもの。

ゼオが興味を示せばカルラも示す。

上手くいってくれればいいんだけどな。

「本はリコさんのいる図書館に行けばいつでも見られるから、用がある時はついでに覗いておくと勉強になると思うよ」

そのように告げ、俺は一度カルージュへ。

そこからマッピングを進めつつ北に向かい、夕方前にはかなり規模の大きい町。

王都『フォブシーク』に到着した。

しかしすぐに乗り込んだりはしない。

一晩経ってもまだ副作用と分かる反応が残っており、できれば8000人の反動はどの程度で消えるのか。

戦争絡みでもなければここまで数が短期間で伸びることもないので、この機会にしっかり把握することを優先した。

王都に知らせるなと執事の爺さんには釘を刺しているし、癒えるのを待つ間もやることはあるしね。

どうせならこのままジュロイの地図も作ってしまおうと思っていたので、ある意味この休息も丁度良いと言える。

そんなわけで、寄れる狩場もないままマッピングを進めて2日後。

あぁ、これは間違いなく解けたなと。

そう思えるくらい腹の中がクリアになった状態を確認し、いよいよジュロイ王国の宮殿に乗り込んだ。

「この国の王に会いたいので通りますね」

「へ? ちょ、ちょっ、へあッ!?」

届いていた手紙からは王が大事にしたくないような雰囲気も感じられたが、少なくとも襲った事実は把握しているのだ。

後々のことまで考えつつ、この国に対してどう対処すべきか。

軽い【威圧】を振り撒きながら宮殿内を探索すれば、それらしい反応は一際大きな扉の先から。

ドアを開けるとそこは謁見の間であり、以前ラグリースで見た時よりかは遥かに少ないけれど、左右には多くの兵と、正面には偉そうな雰囲気を漂わせる男達が何人かいることは確認できた。

それに丁度今も、誰かが玉座に座る王の前で片膝を突いていたが……

そんな中をツカツカと、お構いなしに王の下へ向かっていく。

何かを陳情でもしている人には申し訳ないけど、こちらは挨拶しに来たわけでもないのだから律儀に順番を待つ必要はない。

当然周囲は大きくざわつき、兵は武器を握りながら走り寄ろうとするが。

まるでその動きを制止するように玉座の横に立っていた男が、やや怯えた表情を見せながらも大声で問い掛けた。

「何者ですか!?」

「ロキです。オーバル領の件で来たと言えば分かりますよね?」

「ッッ!?」

この言葉にすぐ反応した王が先ほど俺に問い掛けた男――宰相らしき人物に目配せし、その宰相が俺の後方に視線を向ければ、兵が走って部屋を出ていく動きを捉える。

しかしこの動き……

待ち構えていたわけじゃないけど、俺が来ることは十分想定していたっぽいな。

戦力になりそうな応援でも呼びに行ったとして、問題は相手がどこまで話を大きくしてくるのか。

そんなことを考えながら膝を突いた男の横を抜け、そのまま壇上を上っていくと――

「済まなかった!」

「……」

先に行動を起こしたのはジュロイの王だった。

耐えかねたように立ち上がり、大きく頭を下げながら口にした言葉は謁見の間に強く反響する。

「軽率な行動であったこと、王の立場からこの通り謝罪させていただく!」

少々予想外、だな。

クソみたいな策を実行に移すくらいなのだから、ヴァルツ王と同種くらいに思っていたが……

恥を掻いてでも、このような場で謝罪はできる王なわけか。

「自ら謝罪するということは、レイムハルト辺境伯の兵を賊に偽装させ、ラグリースの背後を突くようにオーバル領を襲わせたことは事前に把握していたわけですよね?」

「無論、全てではないが知っていた」

「ん? 全てではない?」

「ラグリースの領土が落ち切る前に、我が国との国境を少しばかり弄らせてもらう。ただしヴァルツと真正面から事を構えるのはまだ尚早ゆえ、周囲に気付かれることなくオーバル侯へ近づき、住民を含めた身の安全や一定の資産保障などを条件に、『地図』との齟齬が大きく生まれない範囲で領地の割取を進める。これが作戦遂行前に余へ報告が上がり、許可を下ろした内容の全てだ」

「住民の安全……ということは、賊に扮した兵がオーバル領に住む住民を無差別に蹂躙し、その資産を強奪したことはあなたにとって想定外だったと?」

「想定外にもほどがある……」

その様子を見て、自然と自分の手は口元を覆う。

これは――、どちらだ?

憔悴した様子で告げたジュロイ王が嘘を吐いているようには思えないが、目は完全に死んでもいない。

さすがにここの真偽はかなり影響が大きいし、判断が怪しいなら対象を変えるか。

そう思い、王の横に立つ男へ視線を向ける。

「あなたはこの国の宰相ですか?」

「そ、その通りです」

「ならば、今回の件は同様に知っていましたよね?」

「当然です。私が下から持ち上がった話を陛下に進言しましたので」

「ならば念のため、あなたを一時的に奴隷化し、真偽の確認を取らせてもらっても問題ありませんか?」

「それはまったく問題ありません。ヴァルツの二の舞を避けられるのであれば、私は喜んでお受けいたします」

迷いや動揺の見られない様子は、やる前からおおよそ答えも分かっていて。

それでも実際に確認すれば、王と同じ証言を得られたばかりか、賊に扮することすら想定外だったことが判明していく。

つまり王を含むジュロイの上層部は、敗戦を目前にしたオーバル侯爵に血の流れない交渉を行い、領土を誤魔化しの利く範囲でどれほど得られるかという調略を謀ろうとしていたわけか。

まいったな……

「話と違うのが分かったのはなぜですか?」

そう奴隷化したままの宰相に問えば、簡潔に答え、その補足を横にいるジュロイ王がしてくれる。

「ロイエン子爵に、真実を告げられた、からです」

「ヴァルツが敗れ、ヴァルツ王家も潰えたという報がラグリースから届けられた時、このままでは余計な火種に発展し兼ねないと、作戦の指揮を任せていたロイエン子爵を呼びつけたのだ。オーバルとの交渉を全て白紙に戻し、無かったことにせよと伝えるためにな」

「あぁ……本来なら再度の合意一つで戻せるはずが、実際に遂行されていた策は違っていたため、元に戻すことなどできなくなっていたわけですか」

「そうなる。レイムハルト辺境伯が向こうの住民を殺し、私財を奪うなど……ここで初めて、事態があまりにも深刻であることを知った」

「そのロイエン子爵とやらがこの案を持ち出した元凶であると、そうレイムハルト辺境伯は言っていましたが、それは事実ですか?」

「事実、です」

「二人は軍部の繋がりで元から関係が深かった。ゆえに都合良しと作戦の指揮を執らせ、レイムハルト辺境伯とのやり取りも任せていた」

なるほど。

これでおおよその流れは掴めてきたな。

事の発端であるロイエン子爵が、功績を求めて調略を提案。

それに王が乗っかり、レイムハルト辺境伯とのやり取りも任せる。

そしてどちらかが……、いや、辺境伯のあの怒り具合からするに、十中八九はロイエン子爵が凶悪な策への切り替えを辺境伯に打診したと見る方が自然か。

もしくは初めからその策しか伝えていなかった可能性もある。

目的は、当然――。

思案していると、王の視線が俺の後方に流れ、ボソリと一言呟く。

「来たか……」

その言葉に振り向けば、後ろ手に縛られて、口には布のようなモノを噛ませられた男が兵に連れられ、謁見の間に登場した。