軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レオルドは執務室を後にし、深呼吸をひとつ吐いた。

館内を静かに歩き、彼の心の中で、様々な思いが巡る。

自らの未熟さ、周囲への配慮の不足、そしてジークフリートに対しての真摯な想い――。

そして、ジークフリートがいる訓練所に着くと、一度立ち止まり、大きく息を吸って心を落ち着かせてから会いに向かう。

訓練所で他の騎士と共に訓練に励んでいたジークフリートはレオルドが来たことを知り、木剣を下ろして顔を向ける。

「……ジーク、少し話がしたい。いいか?」

「はい! 少しだけお待ちを!」

そう言ってジークフリートは汗を拭い、身綺麗にしてからレオルドの前に戻ってくる。

「お待たせしました! お話とはなんでしょうか? レオルド様」

「うむ。少し思うことがあってな。ちょっと、散歩がてら話そう」

「しかし、よろしいのですか?」

「バルバロト! すまんがジークフリートをしばし借りていく」

「はっ! 畏まりました!」

「というわけだ。行くぞ、ジーク」

「は、はい!」

レオルドはジークフリートを連れてゼアトの街を散歩する。

訓練所を後にしたレオルドとジークフリートは、ゼアトの街をゆっくりと歩き始めた。

陽光が差し込み、穏やかな風が街を抜ける。

人々は領主の姿を見て驚きつつも、温かな視線を向ける。

子供たちが無邪気に駆け回り、商人たちは忙しげに店を切り盛りしていた。

「……こうして共に歩くのは初めてだな」

レオルドはふと呟き、視線を街の喧騒に向ける。

「ゼアトもずいぶん変わった。昔は寂れた街だったが、今はこうして賑わいを見せる」

「ええ……。本当に、活気がありますね」

ジークフリートは周囲を見渡しながら答えた。

彼の瞳には、街の人々の笑顔が映っていた。

「この賑わいも、皆の努力があったからだ。俺一人で築けたものじゃない。……だが、それを忘れかけていたのかもしれない」

レオルドは歩みを止め、振り返らずに呟く。

「俺は、周囲の支えを無視し、ただ前を見て突っ走っていた。それが正しいと、信じて疑わなかった。お前の気持ちも、見えなかった」

ジークフリートは驚いたように目を見開き、前を歩くレオルドの背中を見詰める

「ジーク。本音で答えて欲しい。お前は今、どう思っている? この数日は怒涛の日々だっただろう。俺に言われてゼアトに来て、お前を追うようにクラリス、エリナとやってきた。俺はお前の気持ちを何一つ理解せず、ただ自分のためだけにお前をここに呼んだんだ。だが、大切な人たちから教えられた。ジークフリートの気持ちは考えたことがあるかと……」

立ち止まり、レオルドは空を見上げた。

そして、振り返り、レオルドは真っ直ぐジークフリートの目を見る。

「教えてくれ、ジーク。お前は本当にここに来てよかったのか?」

真っ直ぐレオルドに見詰められ、ジークフリートは悩む素振りも見せず、真っ直ぐな目で答えた。

「ああ。後悔はないよ。レオルド、俺はここに来てまだそんなに時間は経っていないけど、来てよかったと思ってる。何よりも、そうやって俺一人のために思い悩んでくれる主が……いや、友達がいるんだから」

嘘偽りのないジークフリートの言葉はレオルドの胸を打ち抜いた。

彼はもう主人公ではないのかもしれないが、その高潔な精神はきっと主人公足りえるものだろう。

全ての人間は己の人生の主役であり、主人公であるが世界にはその名前を轟かせる主人公のような者たちが多くいる。

きっと、ジークフリートもそのうちの一人で間違いないだろう。

「お前は……。そうだな、そういう奴だったな、お前は。学園の頃から変わらず、真っ直ぐで不器用で熱い男だ」

「へへ、そう言われると照れるな」

レオルドは小さく微笑み、ジークフリートの肩を軽く叩いた。

「これからはお前の力が必要だ。だが、俺一人でお前を決めつけることはしない。お前自身が選び、歩んでほしい。……その上で、俺は力を貸したい」

ジークフリートは深く息を吐き、真剣な表情で頷いた。

「……ああ。俺も、もっと強くなりたい。仲間を、ゼアトを守れる力を身に付けたい。そのために……力を貸してくれ、レオルド」

「任せろ。同じ道ではないが共に歩もうじゃないか」

「ああ! いつか、お前にも負けないくらい強くなってやるよ!」

「ふっ、そうか。それは楽しみだ」

レオルドは小さく笑い、ジークフリートは満足げに笑っていた。

「あっ! す、すいません。レオルド様。俺、いや、私は――」

「言っただろう。二人きりの時はいつも通りで構わん、と。これからもよろしく頼むぞ、我が友、ジークフリート」

ジークフリートは目を大きく見開き、そして思わず口元に笑みを浮かべた。

「……ああ、任せてくれ、レオルド!」

彼の声は、これまでのどんな返事よりも力強かった。

レオルドはその姿を見て、心の奥底から湧き上がる感情を押さえきれなかった。

誰よりも真っ直ぐな心を持つ男、ジークフリート。

その魂の在り方こそが、彼を真の戦士へと導くのだと確信した。

周囲には街の喧騒が聞こえていた。

だが、二人の間にはそんな雑音すら届かぬ、静謐な空間が広がっていた。

「……これから、どんな困難が待ち受けていても、共に進もう。ゼアトの未来のために」

レオルドが言葉を重ねると、ジークフリートは大きく頷いた。

「おう! これからもよろしくな、レオルド!」

これ以上の言葉は要らなかった。

二人は視線を交わし、心の底からの信頼を確認し合った。

しばしの沈黙の後、レオルドが先に歩を進めた。

「さて、そろそろ戻るか。お前の鍛錬の時間を邪魔してしまったな」

「いや、むしろ……いい時間だった」

ジークフリートの穏やかな笑顔に、レオルドは肩を揺らし笑った。

こうして二人はゼアトの街へ戻る。

待つのは鍛錬、政治、そして新たな戦いの始まり――

だが、今はただ、信じ合える仲間と共にあることが、何よりも心強いことだった。

二人の間に、静かな誓いが交わされた。

やがて、街の外れに差しかかると、広がる大地に風が吹き抜けた。

ジークフリートはその風に髪を揺らし、目を細めた。

「……俺、もっと強くなる。誰にも負けないくらいに」

「ああ。期待している。だが、俺も負けてはいられん。お前の先を俺は歩こう」

レオルドの言葉に、ジークフリートは小さく微笑み、大きく頷いた。

それから、談笑を交えながら二人はゆっくりと訓練所へと帰っていくのであった。

訓練所の前で、レオルドはジークフリートと別れた。

ジークフリートは仲間たちの元へ戻り、再び稽古に身を投じる。

「ふっ……やはり、あいつは強い」

静かに呟いたその声には、どこか安堵の色が滲んでいた。

背を向けると、レオルドはゆっくりと領主館へ向けて歩き出した。

夕暮れの柔らかな光が石畳に落ち、ゼアトの街並みを染める。

「さて……領主としてやるべきことは山積みだ」

館へ戻る道すがら、彼の脳裏には次々と案件が浮かぶ。

魔王の脅威に備えた兵站の確保、クラリスやエリナの居住地の整備、希望者たちの受け入れ調整、そして、ジークフリートに関わる様々な問題の整理。

「俺のすべきことは、山より高いな……」

しかし、その声には悲壮感はなく、むしろ心地よい緊張感が滲んでいた。

歩を進めるうちに、ゼアトの中心に佇む堂々たる領主館が視界に入る。

「俺の居場所、か……」

軽く笑みを浮かべ、足取りを速めた。

館の門が開かれ、控えていたシルヴィアが深く頭を下げる。

「おかえりなさいませ、レオルド様」

「ああ。ただいま」

扉が閉じられ、館内にレオルドの足音が響いた。

新たな局面を迎えたゼアトの主は、再び領主としての役割に身を投じるべく、執務室へと向かうのだった。