軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ジークフリートの決意を受けたレオルドは、彼の肩にそっと手を置いた。

「じゃあ、決まりだな。ゼアトに行く準備を進めよう」

その言葉に、ジークフリートは小さく頷く。

シルヴィアとシャルロットも、どこか安心した表情を浮かべた。

「とはいえ、準備には時間がかかるわよ。荷物もあるでしょうし、身辺整理もしなきゃならないでしょ?」

シャルロットがやや茶化すように笑うが、ジークフリートはどこか申し訳なさそうに視線を逸らした。

「ふむ、そうだな。ジークの問題を解決してやると言った以上は俺たちの方でどうにかしよう」

「どうにかと仰られても、どのようにするのですか?」

「ジークの周囲にいる者たちもゼアトに、と考えていたがまずは希望者を募る。全員来るとなれば大所帯だろうが――イザベル」

「はい。その点は心配ないかと。ジークフリート・ゼクシアを慕っている者たちは多くいますが、半数以上は別の道を歩む覚悟を決めておられますので、希望者は予想よりも減るでしょう」

その言葉に、レオルドは静かに頷いた。

「い、いつの間に調べてたんだ? そういう情報は」

ジークフリートの戸惑いに、イザベルは落ち着いた口調で応じた。

「ゼアトに迎えることを前提に、事前に動いておりました。私どもは閣下――いえ、レオルド様の御意志に従い、万全の備えを進めておりますので」

ジークフリートは目を見開き、半ば呆れたように笑みを漏らした。

「……やれやれ、もうすっかり手の内にあるってわけか」

「そう思ってくれていい。だが、だからといって、お前自身の意思を無視するつもりはない」

レオルドの言葉に、ジークフリートは再び真剣な表情を取り戻した。

「分かった……俺は、ゼアトに行く。だけど、それでも迷惑をかけることになると思う。それでも――」

言葉を切り、深呼吸を一つ。

「それでも、レオルド。俺は俺の信じる道を行きたい。傲慢かもしれないけど……それが俺だから」

その言葉に、レオルドは穏やかな笑みを浮かべ、ジークフリートの肩を強く叩いた。

「それでいい。迷子になられても困るからな。俺たちの道は交わらないかもしれないが、共に歩んでいこうじゃないか」

「あ、ああ!」

談話室の空気が、一瞬和やかになる。

「じゃあ、荷物の整理をして、準備が整い次第、ゼアトに向かおう。迎えの馬車は手配済みだ」

「お、おいおい、早いな……!」

「ゼアトの面子が揃えば、その方が王都も落ち着くだろうしな。それに――」

レオルドはふと、窓の外に目を向けた。

「……これから、ますます忙しくなるぞ。お前も俺もな」

その言葉に、シルヴィアとシャルロットも頷き、イザベルは静かに一礼した。

そしてジークフリートも、ゆっくりと立ち上がり、レオルドに向き直る。

「まだまだ未熟な俺だが精一杯頑張るよ、よろしく頼む」

「当然だ。ようこそ、ゼアトへ。俺たちの新たな戦いの始まりだ」

その場の空気は、これまでの迷いや不安を拭い去るように、静かに、だが確かに未来への決意で満ちていた――。

レオルドのその言葉に、ジークフリートの表情がわずかに緩む。

どこか吹っ切れたような、そんな表情だった。

「……じゃあ、俺はこれで失礼する。準備を終えたら、必ず行く」

「分かった」

立ち上がり、踵を返すジークフリート。

その背に、レオルドは小さく呟いた。

「待ってるからな、ジーク……」

扉が閉じられ、談話室に静寂が戻る。

「さて、私たちもゼアトに戻る準備を進めましょう」

シルヴィアが柔らかく告げる。

「ああ。ゼアトに嵐が吹く前に、迎えの舞台を整えないとな」

レオルドが小さく笑みを浮かべ、シルヴィアとシャルロットに視線を向けた。

「シャル、あいつが来る前に領内の防衛網も見直しておくぞ。あいつを迎える準備、万端に整えるためにな」

「もちろんよ~! 生意気な面はあるでしょうけど、根性はありそうよね! 鍛え甲斐がありそう~!」

「鍛えるつもりか?」

「当たり前じゃない! 魔王への戦力として数えてるんでしょ? 今のままじゃただの足手まといよ!」

「……そうだな。少なくとも背中を任せられるくらいは強くなってもらわないとな」

「任せといて~。私がしっかり鍛えてあげるから~!」

笑顔を浮かべるシャルロット。

その声に、シルヴィアも小さく微笑んだ。

「これから先、どれだけの困難が訪れようとも、私たちならきっと乗り越えられますわ」

「……ああ。ゼアトで、すべてを迎え撃つ」

談話室の空気は、確かに新たな未来を迎え入れる決意と覚悟に満ちていた。

――そして、物語は次なる局面へと進む。

レオルドたちは王都の騎士団宿舎の近くで、ゼアトへの帰路につく準備を整えていた。

街の喧騒から少し離れたその場所は、ひときわ落ち着いた空気に包まれている。

「……さて、あとはジークを待つだけだな」

「彼も、きっと色々と準備に手間取っているのでしょう」

シルヴィアが微笑み、シャルロットが軽口を挟む。

「だとしても、あんまり遅いと置いていっちゃうからね~!」

「お前、それ冗談じゃ済まないからな」

レオルドが苦笑し、皆が軽く笑みを浮かべる。

その時、騎士団宿舎の扉が開き、一人の男が姿を現した。

銀の鎧を脱ぎ、旅装束に身を包んだジークフリートだ。

手には最小限の荷物と、腰には剣を携えている。

その姿は、どこか新たな決意を帯び、重い覚悟を背負っているように見えた。

「待たせたな……」

低く、けれどどこか澄んだ声で、ジークフリートは歩み寄る。

レオルドがその姿を見て、小さく頷きながら迎える。

「いや、むしろ早いくらいだ」

「準備は、整った。もう、迷いはない」

「そうか」

短い会話の中に、ジークフリートの変化が確かにあった。

レオルドは軽く肩を叩き、視線を交わす。

「なら、行こう。ゼアトへ」

「ああ」

騎士団宿舎の近く、街道沿いに停められていた馬車の準備も万端だった。

御者台にはイザベルとギルバート、護衛のバルバロトが控えている。

シャルロットがにこやかに手を振り、「これで全員揃ったわね!」と声を上げた。

「ゼアト行きの馬車にようこそ、ジーク!」

「……ああ、よろしく頼む」

少し気恥ずかしそうにジークフリートは応じ、馬車へと歩み寄る。

シルヴィアが微笑を浮かべ、彼の後ろ姿を見守るように視線を送った。

扉が開き、ジークフリートが乗り込むと、レオルドも続いて馬車に乗る。

ゼアトへの帰路は、いよいよ始まるのだった。

とはいっても、王都の転移魔法陣で移動は一瞬だったが。

王都から一瞬で故郷の風景を映し出す。

その中には、初めてこの地に足を踏み入れるジークフリートの姿もあった。

「これが……ゼアト……」

窓の外を流れる風景は、豊かな大地と整然とした街並み、そして遠くにそびえる城砦の姿。

王都とは異なる穏やかさと、どこか厳かな気配が漂う。

「意外と……広いな」

「ただの辺境じゃなくなったからな。ゼアトはこれからの時代を切り開く要の地だ」

レオルドの言葉に、ジークフリートは小さく息を吐き、わずかに口元をほころばせた。

それでも、どこか緊張を滲ませているのは、この地に自分が本当に迎えられるのか、という不安が拭えないからだろう。

街の入り口に差し掛かると、見張りの衛兵たちが即座に気づき、馬車を迎え入れる態勢を取った。

レオルドたちだと知って、街の住民たちがざわめきを見せる。

「あれは……? 領主様の帰還だ!」

「見慣れない人もいるぞ。あれが噂の……?」

ジークフリートは馬車の窓越しに感じる視線に、肩をこわばらせた。

しかし、レオルドは隣に座る彼の肩をぽんと叩いた。

「大丈夫だ。お前は俺が連れてきた男だ。誰も文句は言わない。……いや、言わせない」

「……ああ」

ジークフリートはわずかに頷いた。

王都では避けられていた視線も、ゼアトでは違う。

少なくともこの地では、自分を待っている者がいる――

そんな気配を、彼は初めて感じ取った。

やがて馬車は門をくぐり、ゼアト領主館前に到着する。

従者たちが駆け寄り、扉が開かれる。

「ようこそ、ゼアトへ」

レオルドの穏やかな声と共に、ジークフリートは重い足を地に下ろした。

石畳の感触が、心の奥まで染み渡る。

「……ここが……俺の、これからの場所か」

呟いた言葉は風にかき消されたが、彼の胸の奥には確かな決意が芽生えていた。

やがて、後から続いて降りてきたレオルドが、城館の扉を見上げる。

「ジーク。これからが本番だ。……お前の力を、そして信じる心を、ここで見せてくれ」

「……ああ」

二人の視線が交わり、言葉以上のものが通じ合ったその瞬間、城館の扉がゆっくりと開かれる。

ゼアトの新たな歴史の幕開けだった。