軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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玉座の間での謁見が終わった後、レオルドはシルヴィアと共に、国王から特別に用意された談話室へと案内された。

そこは格式張った謁見の場とは異なり、古びた地図や書架、王家ゆかりの品々が飾られた歴史ある部屋だった。

やがて、アルベリオンがゆっくりと現れ、レオルドの前に立つ。

「……すまないな。突然、呼び出してしまって、忙しかったのだろう?」

「いえ、構いません。むしろ、待ち望んでいたことですから」

「そうか。お前は本当に成長したようだ」

そう言って微笑んだ国王に、レオルドも僅かに表情を緩めた。

「本題に入ろう。先ほど、謁見の間で口にしたことは真意で間違いないか?」

「ええ、勿論にございます」

「その妙な言い方が不気味で仕方ないが……今までのお前の功績や姿勢を見ているからな。一応は信じよう。それで今度は何を企んでいるつもりだ?」

国王は怪訝そうに片目を閉じて、レオルドを見詰める。

あらぬことを疑われているレオルドは隣に座っているシルヴィアを一瞥し、今回の件を包み隠さず話しても問題ないかと目で訴えた。

シルヴィアはレオルドの意図を理解し、国王には全てを話しても問題ないだろうと、ゆっくり頷いた。

「陛下。今回、私がフリューゲル公爵家と友誼を結んだ最大の理由についてなのですが、一度ゼアトに足を運んではいただけないでしょうか? お忙しい身ではあると思いますが、どうかお願いできないでしょうか?」

「ふむ……。宰相、今後の予定はどうなっている?」

宰相は即座に、懐にしまっておいた羊皮紙に目を落としながら応じた。

「陛下の御予定は、三日後に外交団との会談、その後は貴族評議会が控えておりますが……それ以外であれば、移動を挟んで一泊二日程度の余裕はございます」

「一泊二日、か」

国王は短く顎に手を当て、レオルドを見た。

「つまり、その程度の時間で済むということか? ゼアトまで転移すれば、実質滞在は半日程度。何がある?」

レオルドはしばし口を閉じたのち、静かに答えた。

「――見ていただきたいものがございます。ゼアトの今と未来を」

その言葉に、シルヴィアがそっと補足を添える。

「陛下。言葉では伝えきれません。あの地に立ち、目で見て、肌で感じていただかない限り……レオルド様が、そしてゼアトが目指しているものは、きっと理解していただけないでしょう」

アルベリオンは娘とレオルドの顔を順に見つめ、やがてひとつ深いため息をついた。

「全く、お前には振り回されてばかりだ……。だが、いつもお前は我々を“いい意味で”驚かせてくれたな」

そして再び目を閉じると、静かに、しかし確かな声で続けた。

「—―つまり、今回もそういうことなのだろう? 今度は一体どのようにして私を驚かせようというのか。宰相! リヒトー! 支度を整えよ。レオルドとシルヴィアがここまで言うのだ。この目で確かめようではないか!」

玉座にいた時の重々しさとは異なる、朗らかで人間味に満ちた声が室内に響いた。

その笑みの裏に宿る期待と信頼に、レオルドは胸を張って応えた。

「やれやれ、陛下ほどこの老骨は元気ではないのですぞ?」

「まあまあ、いいではありませんか。宰相殿。今回のゼアト遠征で少しは羽根を伸ばされてはいかがですか?」

「リヒトー殿は楽観的で羨ましいのう。レオルドがあそこまで言っているのだ。一体、ゼアトで何が待ち構えているのか。私の心臓が止まらなければいいのだが……」

「心臓が止まる前に、感動で涙腺が緩むかもしれませんよ、宰相殿」

肩をすくめるようにして笑ったのは、護衛騎士のリヒトー。

年齢も地位も違えど、気の置けない関係性が、この私的な場の空気を和ませていた。

シルヴィアも微笑を浮かべつつ、控えめに言葉を添える。

「ゼアトには、今の王国にはない風があります。それは懐かしくもあり、新しくもある――不思議な場所ですわ」

「ふむ……娘がそう言うなら、ますます楽しみになってきたな」

アルベリオンは両手を後ろに組み、私室の窓際まで歩み寄った。

窓の外には王都の朝が広がり、人々の営みが小さく、しかし確かに続いているのが見える。

「私はな、レオルド。時折こうして、王という肩書を忘れて空を見上げるのが好きでね……何も考えず、ただ、この国がどうか平和であれと、祈るような気持ちでいる」

その背に、齢を重ねた王としての重みがあった。

だが、同時に、ひとりの父としての背中でもあった。

「王というのは、常に誰かの未来を見なければならん。だが、今日お前が見せてくれる新たなる未来は――その中でも、特別な意味を持つ気がしてならない」

振り返ったアルベリオンの瞳には、王としての厳しさと、人としての希望の両方が宿っていた。

「期待しているぞ、レオルド。お前がただの風雲児ではなく、真にこの国を変える“始まりの者”であることを」

レオルドは静かに頭を下げ、真摯な声音で応じた。

「……そのご期待、確かに受け取りました。俺は――変えます。この国の未来を。俺が歩んできたすべてを、無駄にしないために」

室内に、静かな決意が響いた。

それは、過去を背負い、今を生き、未来を切り拓こうとする者の言葉だった。

そして、しばしの後――

国王の指示により、ゼアト訪問の準備が正式に整えられることとなる。

正式に訪問の準備を整えた一行は王都にある転移魔法陣へ向けて出発した。

◇◇◇◇

転移魔法陣の光が瞬き、王国の中枢から一行が姿を現した先は――ゼアト領内、外周区に設置された転移施設だった。

まだ朝の名残を残す空には雲一つなく、清らかな風が整備された石畳の通りを吹き抜ける。

一行は馬車でなだらかに舗装されている道をゆっくりと進み、ゼアトの中心へ向かう。

穏やかで自然の中をのんびりと進んだ先にゼアトの中心街へ続く門を抜けた。

そこで国王の目を引いたのは――

眼前に広がるゼアトの都市景観だった。

「これは、まさか……!」

国王の目が見開かれた。

整然と並ぶ建物群、衛兵や役人たちの機能的な動線、そして通りを行き交うのは――商人たちに加え、見目の異なる異民族たちも多く見られる。

活気、秩序、そして、異様なほどの効率。

報告では聞いていたが。かつてのゼアトとはまるで別物のような都市が、そこにはあった。

「これが、あのゼアトか? 私の知っている辺境とは、まるで……」

「はい。変えました。いや、変わらざるを得なかったのです。生き延びるためにも、民を守るためにも、そして何よりも私の大切なものを守るために……」

レオルドの言葉に、国王は口を閉じて頷く。

そして、一行は大通りを抜け、ゼアトの中心街を進む。

やがて、見えてきたのは領主の館。

玄関前で馬車は停まり、従者が扉を静かに開ける。

一番最初にレオルドが降り立ち、シルヴィア、リヒトーと続き、宰相、国王と馬車から降りた

「ついたか」

「改めて陛下にはご挨拶を。ようこそ、ゼアトへ」

恭しくレオルドは国王にお辞儀をする。

「うむ。では、お前の見せたいものとやらを見せてもらうとするか」

「はい。これより、ゼアトをご案内しましょう。どうぞ、ごゆるりとお楽しみください」

「待て、レオルド。まさか、歩きでゼアトを回るのか?」

宰相が国王を歩かせるつもりなのかとレオルドに問いかける。

「ええ。陛下には酷かもしれませんが歩いてもらおうかと」

「それは流石に――」

「良い。たまには城下を散歩するのも悪くない」

「ありがとうございます。あ、宰相殿はお年を召されているので馬でも用意しましょうか?」

「馬鹿にするでない。私の足腰はそうやわではない!」

「では、変装をした後にゼアトを散策しましょう。最後に今回、フリューゲル家と友誼を結ぶこととなったものをご覧いただきます」

国王はしばしの沈黙ののち、重々しく頷いた。

「わかった。では、よろしく頼む」

変装を済ませた一行は、ゼアトの中心街へ赴くのであった。