軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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先頭を歩く二人にイザベルが近づく。

シルヴィアへこっそりと寄り添い、レオルドに聞かれないよう耳打ちをする。

「シルヴィア様。ハーヴェスト家到着予定の時間をずらしますか?」

「 義母(オリビア) 様に伝えてください。少し遅れると」

「畏まりました。ごゆるりとお越しください」

「なるべく、そこまで時間をかけないように致しますわ」

シュバッと忍者のように姿を消したイザベル。

ギルバートの使い魔である鷲を使えばいいのだが、人通りの多い場所で呼んだら騒ぎになるのでイザベルが先行したのである。

相変わらず気遣いの出来るメイドだ。

「レオルド様。そろそろ昼食でもどうでしょうか?」

「ふむ。少し早いかもしれんが混雑に巻き込まれるよりはいいだろう」

「では、ランチに行きましょう」

「そうだな。そうしよう」

ファッションショーで大分時間を割いてしまったが、まだ昼食を取るような時間でもない。

とはいっても、しばらくすれば昼食時になるので少し前倒しになるだけで問題はない。

レオルド一行は少し早いが昼食を取ることにして移動を開始した。

雑貨や衣服などの店が多く並んでいる通りから飲食店の多い通りへ移る。

「最近、あまり通らなかったから知らない店が増えているな」

「そうですね。どれも魅力的に見えてしまいますわ」

「何を食うかな……」

「レオルド様は何を食べたいのです?」

「朝食はパンだったからな。がっつり食いたい気分ではある」

「でしたら、肉料理がよろしいでしょうか?」

「肉か。いいな。それでいこう!」

「ふふ。では、肉料理のお店を探しましょうか」

肉料理と決めたレオルド一行は飲食店を物色していく。

歩き回っているレオルドはあることに気が付いた。

「……魚料理の店が増えていないか?」

「転移魔法のおかげで流通が良くなりましたからね。恐らくは港から直送してきているのでしょう」

「なるほど……」

以前に比べると魚料理を出す店が増えており、レオルドは疑問に感じていたがシルヴィアの話を聞いて納得した。

確かに転移魔法であれば新鮮な魚介類を運送することは容易だろう。

多少、値は張るかもしれないが王都で新鮮な魚料理を食べられるとなればそれくらいは出し惜しみしない。

「魚料理も魅力的に見えてきた……」

「王都では川魚くらいしかありませんでしたからね……。どうされます? お肉はやめてお魚に変えますか?」

「……どちらも捨てがたい!」

突然、湧いて出てきた海鮮料理にレオルドは頭を抱える。

つい先ほどまでは肉料理で頭が一杯だったと言うのに。

このままでは一生迷ってしまいそうだ。

「別にどっちも食べればよくな~い?」

そこへ助け舟を出したのがシャルロットである。

彼女は頭を抱え、肉か海鮮のどちらかで迷っているレオルドに両方でもよくないかと提案を出す。

「食べれないということもないが……」

「だったら、それでいいじゃない。悩んでいてもしょうがないでしょ」

「シャルお姉様の言う通りですがどちらか一方に絞った方がいいと思いますわ。夕飯もあるのですから」

どちらの言い分も正しいだろう。

贅沢に魚と肉の二つを食べるか、もしくは我慢して夕飯に期待するか。

どちらも捨てがたく、魅力的な選択だ。

レオルドは非常に悩んで、唸り声を上げた末に答えを出した。

「王都の海鮮料理が気になるから海鮮にしよう!」

「そうと決まれば早速、向かいましょう」

「単純ね、レオルドも~」

「まあ、多分実家に帰れば肉が出ると思うからな」

実家に帰る報告をしているので恐らくは夕飯に好物が出てくるだろう。

オリビアが気を利かせてくれているならレオルドの好物は間違いなしだ。

基本的にレオルドは好き嫌いがない。

強いて言えば肉が好きなので肉料理が出てくるだろうとレオルドは予測した。

海鮮料理を求めて、レオルド一行はさらに飲食店の並ぶ通りを歩き続ける。

しばらく進むと、ちょうどいい具合に賑わっている店が目に入った。

外観は素朴ながら、漂ってくる香ばしい香りに食欲をそそられる。

「ここが良さそうだな……」

「新鮮な魚介を炭火で焼いているようですわね」

「炭火焼きか……そそるな!」

決め手となったのは、店先に吊るされている看板だった。

そこには『本日直送! 港町直営の海鮮料理店』と誇らしげに書かれている。

「ここにしよう。この香りには逆らえん……!」

「ふふ、それは大変ですわ。早く入りましょう」

一同は暖簾をくぐり、店内に入った。

中は賑やかで、活気に溢れている。

大皿に盛られた刺身や、串に刺された焼き魚がテーブルの上にずらりと並んでいる光景が、すでにレオルドの胃袋を刺激していた。

「いらっしゃいませ! 五名様ですね! こちらへどうぞ!」

元気な店員に案内され、少し奥まった席へと通される。

席に着くなり、レオルドは勢いよくメニューを開いた。

「どれも美味そうだな……くっ、悩ましいな!」

「落ち着いてくださいませ、レオルド様。まずはおすすめを聞いてみましょう」

「う、うむ」

シルヴィアに宥められつつ、店員を呼び、おすすめを尋ねる。

すると、店員は満面の笑みで答えた。

「今日は港町直送の真鯛の塩焼きと、特製海鮮丼がイチオシですよ!」

恐らく、転移魔法陣を利用しているのだろう。

産地直送という謳い文句は非常にそそられる。

それにオススメと言うのだから相当な自信があるに違いない。

「両方食べたいな~!」

「レオルド、さすがにそれは食べすぎじゃない?」

「ですが、どちらか一品を選ぶのも酷というもの……」

悩みに悩んだレオルドだったが、最終的には一番惹かれた特製海鮮丼を注文した。

シルヴィアとシャルロットもそれぞれ刺身盛り合わせや煮付けを頼み、しばしのんびりとした空気が流れる。

ほどなくして料理が運ばれてくると、テーブルの上は豪華な海の幸で彩られた。

プリプリの海老、脂の乗ったマグロ、きらきらと輝くいくら!

「お、おお、これは……!」

レオルドは思わず目を輝かせ、祈るように手を合わせた。

「いただきます!」

箸を取ると、勢いよく海鮮丼に飛びついた。

新鮮な魚の甘みと、ほのかに香る海の匂いが口いっぱいに広がる。

「う、うまい! なんだこれ、うますぎる!」

まるで子供のようにはしゃぐレオルドを見て、シルヴィアとシャルロットは微笑ましそうに見守る。

至福の時間がそこには流れていた。

海鮮丼を頬張るレオルドの隣では、シルヴィアが上品に刺身を口に運び、シャルロットが煮魚に舌鼓を打っていた。

バルバロトも魚介たっぷりのスープを嬉しそうに味わい、ギルバートは焼き魚に無言で集中している。

「この脂の乗り具合……! 絶妙だな……!」

「レオルド様、そんなに急がなくても料理は逃げませんわよ」

「わかってはいるが、手が止まらんのだ!」

シルヴィアがクスリと笑い、レオルドの食べっぷりを眺める。

王都でこんなに新鮮な魚が食べられる時代が来るとは、彼女にとっても驚きだった。

「シャルロット様のお料理も美味しそうですね」

「でしょー? こっちもなかなか……あむっ、うん! 最高!」

賑やかで和やかなひととき。

ふとギルバートが手を止め、珍しく口を開いた。

「……ここの仕入れ先、あとで調べておきましょう」

「ギルバートったら、すっかり仕事目線ね~」

「当然でしょう。坊ちゃまの食いっぷりを見ればわかると思いますが」

ギルバートは休暇中であるがレオルドの満足そうな顔を見た以上はメモに記しておかねばならないと素早くメモを取り出した。

こうして外食先で有望な店を見つければ、すぐに役立てようとする姿勢は彼らしい。

「それにしても……」

レオルドは、海鮮丼の最後の一口を名残惜しそうに見つめながら呟いた。

「腹が……幸せだ」

「それは何よりですわ」

「お腹いっぱいになったら、次はゆっくり散歩でもしますか?」

「うむ。……いや、その前にデザートはどうだ?」

シャルロットが噴き出しそうになった。

「まだ食べる気なの!? さっきまで海鮮と肉で迷ってたのに!」

「別腹というやつだ」

「ふふふ、レオルド様は甘い物もお好きですものね」

シルヴィアが小さく笑う。

レオルドは豪快なだけでなく、意外と甘味好きでもあった。

「ちょうどこの先の通りに、有名な菓子店があると聞きましたわ」

「なら行くしかあるまい!」

レオルドは立ち上がると、気合十分に拳を握った。

バルバロトとギルバートも苦笑しながら後に続く。

こうして、一行は満腹のまま次なる目的地――スイーツの名店へと向かうのであった。

通りを抜け、石畳の広場を横切ると、目の前に白壁の可愛らしい建物が見えてきた。

看板には、『ル・リュミエール 王都本店』と書かれている。

「ここが……!」

「王族御用達のスイーツ店らしいですわよ」

「ふむ……期待できそうだ」

店の前には小さな噴水があり、涼しげな水音が心地よい。

入り口をくぐると、バターと甘い砂糖の香りが鼻をくすぐった。

「うわ……!」

「たくさんありますね~!」

ショーケースには色とりどりのケーキ、タルト、マカロンがぎっしりと並び、どれもこれも芸術品のように美しかった。

「これは……また選べないぞ……」

「もう……レオルド様ったら」

呆れたようにシルヴィアが微笑み、シャルロットも肩をすくめた。

だが、それもまたレオルドらしい光景だった。

「ええい、こうなったら! ケーキセットを頼んでしまえ!」

「開き直りましたわね……」

一同は結局、それぞれ好みのスイーツを選び、のんびりとティータイムを楽しむことにした。

暖かな陽光が差し込む窓辺で、幸せな甘味の時間が流れる――。

(母上へのお土産も忘れずに買っていかなくてはな)

レオルドはふと思い出し、笑みを浮かべた。

こうして、満腹と甘味に満たされた彼らは、ようやく重い腰を上げて、ハーヴェスト家へと向かうのであった。