軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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シルヴィアに踊らされ、ファッションショーを開催しているレオルド。

次から次へと着替えさせられ、新たな衣装に身を包み、シルヴィアの前に躍り出ては褒め称えられる。

豚もおだてりゃ木に登る、という言葉がピッタリの状況だ。

レオルドはシルヴィアに褒められ、いい気になり、言われるがままになっている姿はまさに道化だろう。

「カッコいいわよ。レオルド~」

「よくお似合いですよ。レオルド様」

しかも、シルヴィアだけでなく、シャルロットとイザベルからも黄色い声援を送られている。

そのおかげでレオルドは増々いい気分になっており、シルヴィアの目論見通りとなっていた。

「坊ちゃま……」

「レオルド様も単純ですな~」

完全に弄ばれているレオルドを見てギルバートは不憫に思い、バルバロトは呆れるように笑っていた。

レオルドも男であり、美女にチヤホヤされ、調子に乗っている姿は同じ男として理解出来るのだろう。実に単純な生き物であると。

しばらくの間、レオルド一人によるファッションショーが続いたが、この後にも予定は控えているのでイザベルがシルヴィアに耳打ちする。

「シルヴィア様。もうすぐお時間です」

「もうそんな時間ですの?」

「はい。お楽しみの所、申し訳ありませんがこれ以上長引けば、この後の予定に差し支えが出てしまいます」

「分かりましたわ。では、次の一着を最後にして会計にしましょう」

「畏まりました」

シルヴィアとイザベルが小さな声で打ち合わせを終わらせる。

レオルドはシルヴィアから受け取った衣服を手に取り、試着室へ戻っているとイザベルが店員に会計を伝え素早く支払いを済ませた。

控えていた従業員一同が出て来て、シルヴィアがレオルドの為に購入した衣服を大急ぎで包んでいく。

勿論、一切の不備がないよう細心の注意を払って手を動かしていた。

「とんでもない量ですな……」

「女性なら分かりますが、これ全てがレオルド様のですか……」

レジの隣に並んでいる数々の袋を見てギルバートとバルバロトは戦慄していた。

恐らく、何着かは着ないだろうと二人は予想する。

しかし、レオルドがシルヴィアに勝てるはずもない。

きっと、服装チェックを毎日され、レオルドはその度に言い負かされる事になるだろう。

「そろそろ、疲れて来たな……」

「大丈夫ですわ。レオルド様。それが最後ですから」

「そうか。ようやく終わるのか」

「ようやくって言うけど、途中しっかりと楽しんでたじゃない」

「……そんな事はないぞ?」

「いいえ、レオルド様。途中からノリノリでしたわ。態々、顔まで作って、決めポーズまでしていましたよ」

「……記憶にないな」

がっつり記憶に残っているレオルドはシルヴィアから気まずそうに目を逸らしている。

最初は渋々であったのに、結局はシルヴィアの思惑に嵌まり、ノリノリでファッションショーを開幕していたのだ。

あまりにも失礼なのでシルヴィアの顔は直視できないだろう。

レオルドは自身の記憶を消し去りたかったが、忘れる事はないだろう。

「イザベル。次の予定はどうなってる?」

「露骨に話題を変えたわね」

「仕方がありませんわ。早く忘れたいでしょうから」

シルヴィアとシャルロットがヒソヒソと話し合う。

当然ながらレオルドの前でワザとだ。

内緒話ではなくレオルドの耳に届くような声量で話している。

ピクピクとレオルドの頬が引き攣っているが、自業自得なので甘んじて受け入れていた。

「んん! イザベル。時間は問題ないか?」

「その点は抜かりありません」

「そうか。では、次に行こう」

これ以上は耐えられないのでレオルドは早々に話を打ち切る。

レオルドが会話を打ち切って店を後にしようと出口へ向かうのを見たシルヴィアは近くの店員に声を掛けた。

「こちらの商品は後で届けてもらえるかしら」

「はい。畏まりました。どちらにお届けしましょうか?」

「ハーヴェスト公爵家にお願いしますわ」

「分かりました。早急にお届けいたします」

「ゆっくりで構いません。では、私達はこれで」

「毎度、お買い上げありがとうございました」

従業員一同揃ってレオルド達に頭を下げる。

太客であるレオルド達を見送り、店員は通常業務へと戻っていく。

「少し羽目を外しすぎたな……」

「フフ、いいではありませんか。私はとても楽しかったですよ」

「む……、そうか。シルヴィアが楽しんでくれたのなら俺も道化を演じた甲斐があるというものだ」

「な~にが道化を演じた、よ。途中からはノリノリだったじゃない」

「レオルド様はシルヴィア様の手によっていい様に転がされておりましたよ」

「うるさい。余計な事は言わなくていい!」

図星を突かれてレオルドは少しだけ怒気を含んだ声でシャルロットとイザベルの二人を静かにさせるも二人は黙らない。

「や~ね~、男って。ちょっと、本当の事を言われたらすぐに怒るんだから」

「それに関しては男女関係なく全員怒りますよ。とはいえ、今回のレオルド様は些か理不尽かと思いますね」

「やかましいわ! あっちいってろ!」

この二人が近くにいては精神的によろしくないのでレオルドはシャルロットとイザベルの二人をギルバートとバルバロトの二人に押し付けた。

「全く……」

「まあまあ、いいではありませんか。二人も久しぶりの外出で少しはしゃいでるのですよ。少しくらいは大目に見てください」

「それは分かってるが限度と言うものはあるだろう?」

「それは勿論です。ですから、きちんとその一線だけは越えないようにしている二人を許してはあげませんか?」

シルヴィアに諭されてレオルドは渋い表情を見せるが、もとはと言えば自分が調子に乗ったせいである。

自業自得なのは間違いようがなく、レオルドは煮え切らない思いであったが二人を許す事にした。

「分かった。今回は俺が調子に乗っていたというのも確かだ。二人の言い分については黙認しておこう」

「ふふ、流石レオルド様。寛容ですわね」

「……」

恥ずかしそうにレオルドはソッポを向く。

そんな可愛らしい反応にシルヴィアはクスリと笑う。

「照れてる~」

「照れてますね」

「やかましいっ!」

茶々を入れてくる二人に怒鳴り声を上げてレオルドはズンズンと大股で先を歩き始める。

その後ろをシルヴィアは微笑みを浮かべて、ほんの少しだけ小走りでレオルドについていく。

レオルドとシルヴィアは合流すると一言、二言ほど交わして二人は手を繋ぎ、ゆっくりとした歩幅で歩き始めた。

その様子を後ろで見ていた四人は生温かい目で二人の行く末を見守りながら、その後ろをついていくのであった。

「レオルド様。もしかして、ショッピングはもう終わりだと思ってませんか?」

「……思ってないが?」

「そうですか。では、次のお店に参りましょうか」

「いくらでも付き合おう」

「レオルド様。頬が引き攣っていますわよ」

シルヴィアの指摘にレオルドはバッと口元を手で隠す。

しかし、それ自体が誘導だったようでシルヴィアは勝ち誇ったように笑みを浮かべた。

「引っかかりましたわね。レオルド様。今のは嘘です」

「……お手柔らかにお願いします」

「嘘を吐いた分は上乗せさせていただきますね」

「はい……」

簡単な罠に引っかかったレオルドはガックリと頭を垂れる。

そんな様子を見てシルヴィアは嬉しそうに微笑む。

かつてのレオルドならば簡単に引っかかったであろう誘導尋問であるが、今の彼ならばそう簡単に引っかかるようなものではない。

恐らくは自分を喜ばせるためにワザと引っかかってくれたのだろう。

口にするのが恥ずかしいのか、それとも態度に表すのが恥ずかしいのか。

どちらかは分からないが、少なくともレオルドと過ごし時間が増えるのであればシルヴィアからすればどちらでもいいことであった。

「さあ、レオルド様。行きましょう」

「ん? ああ」

何やら上機嫌のシルヴィアにレオルドは少しだけ疑問を浮かべる。

しかし、怒っていないのであれば有難いことだ。

嘘を吐いたことにシルヴィアが怒るかと思っていたのに上機嫌だというのは嬉しい誤算だ。

「(何故、嬉しそうにしてるんだろう?)」

まさか、レオルドが演技ではなく本気で嘘を吐いたとはシルヴィアも思わないだろう。

普段のレオルドはシルヴィアが思っているよりも優秀ではない。

婚約者を喜ばそうと演技ができる程、器用ではないのだ。

気障なセリフこそ吐けるが細かな部分は疎かなのがレオルドなのである。