軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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王都にやってきた理由は主に息抜きの為。

勿論、シルヴィアとレオルドのデートという名目もあるが、一番は日頃の感謝を込めてである。

ひとまず、先日に約束した通り、レオルドはシルヴィアの願いを叶えるため、まずはどこに行きたいかを尋ねた。

「シルヴィア。まずはどこから行きたい?」

「そうですわね……。やっぱり、服を見に行きたいですわ」

「じゃあ、服屋へ行こうか」

レオルドは紳士らしく振る舞い、シルヴィアをエスコートする。

シルヴィアの歩幅に合わせ、ゆっくりと歩くレオルドはしっかりと彼女の手を繋いでいる。

所謂、恋人繋ぎというものでお互いの指と指を絡めていた。

「ふふ……」

レオルドの横顔を見つめ、それから恋人繋ぎの手を一瞥してからシルヴィアは嬉しそうに笑う。

「どうした? 急に笑ったりして」

「いえ、とても幸せだなと思って」

「そうか。俺もだよ。こうして二人で並んで歩く事は今もよくあるが、こういう風に手を繋ぐのは久しぶりだ」

シルヴィアが思っていたようにレオルドもまた嬉しかったのだ。

面倒だなんだと愚痴を言いながらも、こうしてシルヴィアと出掛けるのは嫌いではなかった。

最近は仕事で一緒に出掛ける事が多かったため、こうして二人でまったりと過ごせる時間はレオルドにとっても幸せであったのだ。

「行く前はあんなに渋った癖に現金よね~」

「男とはそういうものですよ」

レオルドとシルヴィアの後ろを歩いているシャルロット達は目の間で広がっている甘酸っぱい光景を目にしながら歩いている。

「ねえ? 旦那様」

「きゅ、急にこちらへ話題を振ってくるのはやめてもらえないか……」

「あら? 何か心当たりでも……?」

「わ、私達も今度どこかに出かけようか!」

「楽しみにしていますね。旦那様」

「奥方は大切にしないといけませんぞ。バルバロト殿」

「肝に銘じておきます。ギルバート殿……」

突然の流れ弾にバルバロトは胸を締め付けられるような痛みを覚える。

人生の大先輩であるギルバートの忠告を心に刻みつけ、今後もイザベルへの感謝は忘れないようにしようとバルバロトは誓うのだった。

「後ろの方が騒がしいな……」

「久しぶりの休暇で浮かれているのでしょう」

「休暇でいいのか?」

レオルドとシルヴィアは休暇ではあるが、後ろの四人に関しては違うだろう。二人の護衛兼お世話係を担当しているのだから仕事と同じである。

ただし、シャルロットだけは毎日が休暇である事は違いない。

何せ、彼女は自由奔放で誰にも縛られない人間なのだから。

「賑やかでいいではありませんか」

「まあ、そうだな。しんみりとしてるよりは断然いい」

「ほら、レオルド様。参りましょう」

「ああ」

騒がしいのはあまりよろしくないが、賑やかなのはいい事だ。

他の人達に迷惑を掛けなければ特に問題はないだろう。

レオルドとシャルロットの二人はよく大勢の人間に迷惑を掛けているが、今は大丈夫のはず。

しばらく歩いて服屋に辿り着いたレオルドとシルヴィア。

「では、入りましょうか」

「う、うむ」

「レオルド様? もしかして、緊張されてます?」

「いや、そんな事はないが?」

「でしたら……買い物が長引かなければいいな~と思ってますか?」

「……そんな事はないさ」

内心で思っていた事を当てられて、咄嗟に目を逸らすレオルド。

目を背けるレオルドをジト目でじーっと睨みつけるシルヴィア。

ついにレオルドは観念したようでシルヴィアに申し訳なさそうに頭を下げる。

「すまん。思ってました……」

「素直に謝れるのはいい事ですわ。でも、今日は私に付き合ってくださる約束ですので、とことん付き合ってもらいますわね。勿論、反論も文句も異論も受け付けません」

「はい……」

何も言い返す事の出来ないレオルドは大人しくシルヴィアの後についていく。その様子を見ていた後ろの四人は、仲が良くて何よりだと、微笑ましく思っていた。

「なあ、シルヴィア。今日は君の買い物に来たんじゃないのか?」

「そうですわ」

「では、何故俺が試着を?」

「そんなの簡単です。私がレオルド様の服を買いに来たのです」

「いや、でも、俺も服は結構持ってるが……」

「同じようなものばかりでしょう?」

レオルドの服装は無難なもので大胆なものはない。

オシャレに無頓着という程でもないがシルヴィアからすれば味気ない。

レオルドならばもっと幅広くファッションを楽しめると言うのに、普段から同じような服装なのでシルヴィアはいつも思っていたのだ。

もっと、違う格好をしたレオルドを見たいと。

「オシャレには気を遣ってるつもりなんだがな……」

「気を遣ってると言いながら普段から似たような恰好ばかりではありませんか」

「ダメか?」

「ダメではありませんが偶には冒険をしてみてもいいと思いますわ。ですから、今日は私がコーディネートして差し上げます!」

最初に文句も異論も反論も受け付けないと言われているのでレオルドは何も言い返す事が出来ない。

「……わかった。よろしく頼む」

「お任せくださいまし!」

張り切っているシルヴィアは店員に注文を述べ、服を運んできてもらい、それを吟味してはレオルドに着せるといった作業を繰り返す。

シルヴィアによるレオルドのファッションショーが開幕される。

「どうだ?」

「素晴らしいです! これも買いますわ!」

「お買い上げありがとうございます!」

試着室のカーテンが開けられ、シルヴィアがチョイスした服装に身を包んだレオルドが姿を見せると、彼女は興奮して感動すると、すぐに店員へ購入する事を告げた。

「レオルド様! 次はこちらを!」

「わ、分かったから、そう急かさないでくれ」

「何を言ってるのです! 時間は有限なのですよ!? 今という瞬間を逃したら、次はいつになるか……! 分かってるのですか! レオルド様!」

「お、おう。すぐに着替えるよ」

シルヴィアから服を押し付けられたレオルドは、彼女の気迫に押され試着室のカーテンを閉じる。

その間にシルヴィアは店員からカタログを貰い、今の流行を取り入れたファッションを組み立てていく。

「イザベル!」

「は!」

「すぐにこれらの商品をここに!」

「直ちに!」

「それから、そこの貴女!」

「は、はい!」

「こちらの品を持ってきてくださる?」

「はい! 今すぐに!」

テキパキと指示を出し、シルヴィアはレオルドの服を選んでいく。

勿論、ファッションショーも全力だ。

レオルドはシルヴィアの手の平で踊るように彼女の美辞麗句で煽てられ、用意された服を着ていく。

「あ~らら。アレはもう完全に乗せられてるわね~」

「やはり、恐ろしい方ですね……」

「坊ちゃまは旦那様の子ですからな~。奥様に踊らされていた旦那様を思い出します」

ギルバートはレオルドがかつてのベルーガと同じように見えていた。

レオルド同様に服装に頓着しないベルーガはオリビアに賛美を贈られ、気を良くしては服を買っていたのだ。

まるで当時を再現しているかのような光景にギルバートは目の奥が熱くなるのを感じていた。

「このような光景をまた見られようとは思いもしませんでしたな~」

長い間、ギルバートはハーヴェスト侯爵家に仕えていた。

当然ながらレオルドが腐っていくのを最初から最後まで見ていたのだ。

公爵家当主であるベルーガや母親のオリビアの前では素性を隠し、使用人へ乱暴を働き、不当に解雇させ、挙句の果てには伯爵家の令嬢を襲う始末。

罪を償う為に辺境ゼアトに送られる事になり、ギルバートは公爵家へ最後の恩返しとばかりにレオルドの人格矯正を引き受けた。

何の因果か知らないがゼアトに送られたレオルドは自らの行動を省みて、ダイエットを決意し、今までの罪を償うかのように多くの事に励んだ。

その結果が今だ。第四王女であるシルヴィアと婚約し、仲睦まじく買い物をしている。

その光景がどれほど嬉しいか。きっと誰にも分からないだろう。

「余生を穏やかに過ごせそうです……」

「どうしましたか? ギルバート殿」

「いえ、なんでもございません。我々は巻き込まれないように離れておきましょうか」

「そ、そうですな! 我々は邪魔になるでしょうから離れておきましょうか!」

着せ替え人形と化しているレオルドの様にされては堪らない、とバルバロトはギルバートと一緒にその場から離れ、遠くから見守るのであった。