軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

202

覚醒したレオルドはトントンッと軽く跳ねると弾丸のように飛び出す。そのスピードにジークフリートは度肝を抜かれるが、剣を握り締めてレオルドを迎え撃つ。

しかし、ジークフリートの眼前に迫っていたレオルドの姿がブレると背後に姿を現した。全く反応出来ていないジークフリートにレオルドは容赦なく蹴りを叩き込む。

結界で守られているがレオルドの蹴りは強力でジークフリートの身体がくの字に曲がる。

「がっ……!?」

わけも分からずジークフリートは吹き飛ぶ。そのまま、壁に激突するかと思われたがレオルドが先回りしており、飛んできたジークフリートを地面に叩きつける。

顔面を掴まれて地面に叩きつけられるジークフリートは、あまりの速さに理解が追いつかない。一体自分は何をされたのかと混乱している。

痛みと衝撃だけが唯一わかるものだった。

(く……全く見えなかった)

掴まれていた顔面を離されたジークフリートは、レオルドの強さに呆れながら立ち上がる。そこには、ご丁寧にも待ってくれていたレオルドがいた。

腕を組み、いつジークフリートが立ち上がるのかをじっと待っていたようだ。そんなレオルドを見てジークフリートは拳をギュッと握りしめる。

(情けねえ……俺が望んだことじゃねえか!

なのに、レオルドに気を遣わせてどうすんだよ!)

己の不甲斐なさが悔しい、とジークフリートは顔を歪めている。顔を歪めるのを見たレオルドは、ジークフリートがどういう気持ちなのかを理解する。

かつて、自分も似たような気持ちになったことがあるからレオルドはジークフリートの気持ちが痛いほどに理解できた。

だからこそ、手は抜かない。先程は、待ってやったが次は一切の慈悲はない。確実に、勝負を決めるために倒す、とレオルドは組んでいた腕を下ろして剣を構えた。

「構えろ、ジーク!!!」

レオルドの声にジークフリートが反応する。声に従うように剣を構える。

剣を構えたジークフリートに向かってレオルドは駆け出す。今度は見失わないと意気込むジークフリートは向かってくるレオルドを睨みつける。

すると、また眼前でレオルドの姿がブレる。同じ手は喰らわないとジークフリートが背後に振り向くが、そこにはいない。

では、どこにいるかと思えばレオルドは跳躍して上空にいた。そのまま落下する勢いを味方にしてレオルドは剣を叩きつける。

だが、寸前のところでジークフリートは反応した。偶然、足元に映ったレオルドの影に気がついたのだ。間一髪のところでジークフリートは回避に成功する。

危うくまた一撃を貰うところだったと一安心するジークフリートだったが、すぐにその考えは消えることになる。着地したレオルドが次の瞬間にはジークフリートに剣が届く距離に迫っていた。

「は、はやっ……!?」

「呆けてる暇はないぞ!」

腰を低く落とし下から切り上げるレオルドにジークフリートは成す術もない。そのまま、切られて打ち上げられるジークフリートは息を吐く。

「がは……っ!」

打ち上げられて無防備なところにレオルドは剣を振り下ろす。まともに斬撃を受けたジークフリートは倒れてしまう。

レオルドはこれ以上の追撃は必要ないと判断して剣を収める。

「これはいらなかったな……」

背後に浮かんでいる雷の剣は無駄に終わってしまい、レオルドは少々残念に思いながらも消した。後は、十秒待つだけだ。そうすれば、勝敗は決してレオルドは先へ進むことが出来る。

最後にレオルドは倒れているジークフリートを一瞥すると出口に向かって歩き出す。もう立ち上がることはないだろうと見切りをつけて。

試合を見ていた観客たちもレオルドの圧勝で終わりだと確信していた。やはり、ベイナードに勝った男は伊達じゃないと息を呑む。

しかし、まだジークフリートが勝つと信じている者達はいる。それは、もちろん 彼女達(ヒロイン) だ。誰もが思っている。

ジークフリートが立ち上がり、レオルドに勝利する事を。

そんなものは幻想に過ぎない。都合のいい願望だ。奇跡でも起きない限りジークフリートが、再び立ち上がりレオルドに立ち向かうことなどあるはずがない。

彼女たちは必死に声援を送るがジークフリートは立ち上がらない。残り一秒となり、もはやここまでかと思われた時、会場にいた全ての人が驚きに目を見開く。

「待てよ……どこに行くんだ」

「そうだ。それでこそ、お前は主人公なんだ」

誰よりも理解していた。誰よりも期待していた。誰よりも信じていた。

だって、そうだろう。

真人の記憶にあるジークフリートは 運命48(ゲーム) の主人公で、最後にはどんな逆境も跳ね返した。それは、プレイヤーという導き手がいたからかもしれない。しかし、現に今ジークフリートは自らの意思で、自らの力で立ち上がった。

それが何よりも嬉しかった。賛否両論あったが、真人は 運命48(ゲーム) が大好きでキャラを愛していた。その中には当然 主人公(ジークフリート) がいた。

男ならば誰だって一度はヒーローに憧れるだろう。幼い頃にはいつかヒーローになると息巻いていたこともあるはずだ。真人も例外ではない。純粋に憧れて夢を見ていた。

だけど、それは年を重ねるごとに薄れていき、大人になる頃には現実に打ちのめされる。だから、ゲームや漫画やアニメに求めた。

自分の理想を。

そんな追い求めて止まなかった 主人公(ヒーロー) がいるのだ。自分ではないけれど、期待するくらいはいいだろうとレオルドは微笑む。

「さあ、来い。 主人公(ジーク) !」

見せてくれ、お前の全てを。

そう願い、レオルドはジークフリートに振り向く。