作品タイトル不明
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立ち上がったジークフリートを見てレオルドは歓喜に震えていた。
完膚なきまでに叩き潰したはずだった。それでも、ジークフリートは立ち上がった。それは、英雄の資質と言っていいかもしれない。誰にだって出来ることだが、実際に出来るものは少ないだろう。
なにせ、レオルドの圧倒的な力を見て再び立ち上がり、立ち向かおうなどと思えるはずがない。
しかし、ジークフリートは立ち上がった。
これには多くの観客も感心した。よくぞ、立ち上がったと。
「マ、マジか……!」
「うっそだろ……!」
応援に来ていたロイスとフレッドは驚きが隠せなかった。先程のレオルドから受けた攻撃は間違いなく決まっていた。貴賓席から見ていたが、とてつもない威力であるのは誰の目にもわかるものであった。
それを受けて尚立ち上がるジークフリートに二人は、どうしても驚きを隠せなかったのだ。
「俺なら、もう諦めてるぞ……」
「ああ。あんなのと戦うなんて無謀にも程があるだろ。いや、そもそも一回戦の試合を見て戦おうって気が起きないだろう……っ!」
それでも立ち上がったのを見た二人は少なからず、胸が熱くなるのを感じた。もしかしたら、勝てるのではないかという期待が生まれたのだ。友達が圧倒的な存在に立ち向かう姿は少なくともかっこよく見えた二人であった。
その一方でジークフリートの応援に来ていた女性たちも胸をときめかせていた。やはり、ジークフリートはレオルド如きに負けるような男ではないとそう思っていた。
必死に声援を送る。彼女たちはジークフリートが勝つことを祈って声援を送り続ける。
その祈りが届いたのかジークフリートが少し笑う。遠くから確かに聞こえる声援にジークフリートは応える為にレオルドへと一歩踏み込む。
対するレオルドは踏み込んできたジークフリートよりも素早く動き、腹部を拳で打ち上げる。
「ぐふぅっ!?」
いくら結界に守られていようとも、その衝撃はひとたまりもない。まともに直撃したジークフリートは弧を描くように宙に浮かび上がり、地面に落下する。
ドシャッと地面に背中から落下したジークフリートは大きく息を吐く。
「かは……っ!」
倒れるジークフリートへレオルドは近づき、容赦なく踏みつける。
「どうした! お前の力はその程度か!」
「ぐっ!」
どこぞの悪役のように胸を踏むレオルドはジークフリートに問いかけている。対してジークフリートは答えることが出来ず、レオルドの足をどかせようと必死だ。
「さっきの威勢はどこへいったんだ」
「くっ……うぅ……!」
「思い出せ! 俺と決闘したときのことを!
あの時のお前のほうがよっぽど強かったぞ!」
そんなことはない。決闘した時はレオルドも弱く、ジークフリートも大して強くはなかった。ただ、決闘の時ジークフリートは一つのことで頭がいっぱいだったのだ。
それはクラリスを傷つけたレオルドに罪を償わせるというもの。たった、それだけを考えながらジークフリートは決闘の時戦っていたのだ。
だけど、今は違う。
ジークフリートは少し弱気になっていた。レオルドとの実力差に。
(やっぱり俺じゃ勝てないのか……!)
もうここらが限界だろうとジークフリートはレオルドの足をどかせようとしていた手の力を弱める。
「ッッッ……!」
それに気がついたレオルドは怒りを顕にした。足をゆっくりとジークフリートから離して、大きく振り上げると勢いよくジークフリートを蹴り飛ばした。
「ぐあっ!!!」
ゴロゴロと転がっていくジークフリートを見ながらレオルドは悲嘆に暮れていた。
(どうして、そこで諦めるんだよ……お前はまだ立ち上がれるはずだろう)
そもそも、レオルドがここまで期待するのがおかしな話だ。ジークフリートが本格的に強くなるのは学園を卒業後なのに、それを知らないレオルドではないはずだ。
だというのに、どうしてここまで執着するのか。それは、やはり 運命48(ゲーム) でのイメージが強すぎるせいだからだろう。
最初にジークフリートはゲームとは違うとレオルドは思ったはずだ。しかし、皮肉なことにレオルドは立ち上がったジークフリートを見て重ねてしまった。
ゲームのジークフリートと。
それはやってはいけないことだった。仮想と現実は違うというのに。
レオルドはもう十秒など待っていられないと倒れているジークフリートへと近づいていく。一歩、また一歩と足を進めてジークフリートの下へと辿り着く。
「これで終わりにしよう……」
止めの一撃を放とうとした瞬間、レオルドの耳に罵声が届く。
「このアホレオルド! ここは現実でしょうが!」
その一言でレオルドはピタリと止まる。声の聞こえた方に振り返ると、そこにはシャルロットがいた。息を切らしているのかシャルロットは肩を上下させている。そんな様子のシャルロットを見てレオルドは思い出す。
(ああ……まただ。また、俺はゲームと比較して……)
やっと気がつくことが出来た。レオルドは 運命48(ゲーム) に囚われ過ぎていた。だけど、シャルロットのおかげで思い出すことが出来た。
「すまない。ジークフリート。俺はお前と戦っているようで戦っていなかった」
「な、何を言ってるんだ……?」
倒れていたジークフリートは立ち上がっており、レオルドの言葉を聞いて混乱していた。
「……決闘の時のお前と今のお前を比べていただけだ」
適当なことを言って誤魔化したレオルドはジークフリートに止めを刺す。
ここで終わるはずだった。レオルドの一撃が決まり、決着が着くはずであった。
レオルドが放った一撃がジークフリートに当たるかと思われた時、それは起こった。
「な……に……?」
レオルドが振り下ろした手刀はジークフリートによって受け止められていた。これにはレオルドだけでなく観客も驚いていた。もう勝負は着いていたはずなのに、一体何が起こったというのだろうか。
それは世界の強制力か、もしくはそういう運命だったのか。
ジークフリートは最後の瞬間、目をつむり諦めていた。これで終わりだと。しかし、その時走馬灯のように今までのことが鮮明に思い出された。
約束した。
勝つと。絶対に負けないと。
負けそうになっても諦めたりはしないと。
だから、最後まで足掻いてみせると。
そう思った時、ジークフリートの中で何かが弾けた。それはずっと謎に包まれていたジークフリートが持つスキル。
そして、ジークフリートが 運命48(ゲーム) の主人公たり得る力であり、エロゲの最たる 要素(エロシーン) につながるスキル。
そのスキルの名は――
「――絆の力」
紡ぐ言葉はレオルドを驚愕させる。それは 運命48(ゲーム) であったならばジェックスという踏み台によって覚醒する力だったから。
安直な名前ではあるが、そのスキルの効果は絶大であり世界の理を覆すもの。本来、スキルは一人につき一つというもの。勿論、例外はいるが基本は一つだ。
しかし、絆の力はその理を覆す。絆の力の能力は名前の通りで絆が力になる。
それは、ジークフリートが絆を深めた相手のスキルやステータスを自身のものに加算されるという能力。まあ、エロゲなのでヒロインと心身共に結ばれれば真価を発揮する。
ただし、そこは男性向けだったりするので男の場合は握手で十分である。
「はは……ここに来て覚醒かよ……!」
冷や汗を流すレオルドの前には溢れてくる力を確かめているジークフリートがいる。右手と左手を握りしめたジークフリートは、この力があればレオルドにも勝てるかもしれないと再び闘志に火を宿した。