軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

201

剣を一合、二合、三合と切り結んだ二人は一度離れる。

たったそれだけであったがレオルドはジークフリートの技量を見切り終わった。元々、試合を見ていた時から薄々思っていたが、ジークフリートは弱い。

(そっか。そうだよな。ここは現実なんだ。

ジークはプレイヤーによって操られているキャラじゃない。

自分で考えて自分で行動して、確かな意思を持っているんだ。

その根幹には 製作者(かみさま) の作った性格が反映されてるんだろうけど……

でも、確かにジークは生きている)

その通りである。

確かに、この世界は 運命48(ゲーム) の世界かもしれない。

だが、間違いなくこの世界の人間にとってはここが現実なのだ。

レオルドは真人の記憶と人格が宿り、ゲームの世界だという認識をしているが、そちらの方が間違っている。

ここは真人にとっては 仮初(ゲーム) の世界かもしれないが、レオルドにとっては本物の世界なのだ。

(当然か……

まあ、今は余計な事を考える時じゃない。

ただ、どうやってジークを倒そうか)

はっきり言ってしまえばレオルドは余裕で勝てる。手加減をしてもだ。

しかし、ジークフリートは恐らくこの時の為に猛特訓をしてきたに違いないと思っているレオルドは悩んでいた。

(あっさり勝ってしまったら、ジークが挫折したりしないだろうか?)

考えすぎである。レオルドは運命48を通してジークフリートの性格を熟知しているのだから、分かるはずなのに、どうして分からないのか。

それは簡単な事であった。

難しく考えすぎなのだ。世界の強制力が、原作ではと余計な事を考えすぎなのだ。

そんな事は考えなくてもいい。そもそも、既にレオルドは自由に生きている。ならば、思う存分自由にやればいい。

たったそれだけだ。

でも、レオルドはそれが出来ない。

真人の持つ中途半端な知識が邪魔をしている。冷静に考えれば誰だって分かる事なのに、まさかこのようなことで躓くとは予想だに出来なかったであろう。

「はあああっ!」

勇ましい声を上げながらジークフリートがレオルドを攻める。

レオルドは軽くあしらいながら、考えていた。どのようにして勝てば一番丸く収まるのだろうかと。

しかし、それはジークフリートに対する侮辱である。お互いにベストを尽くそうと自ら発言したのに、手を抜くなど人をバカにするにも程があるだろう。

それは、ジークフリートにも伝わる。レオルドのやる気の無さ、手加減をしている素振り、それらを目の前で見れば、余程の鈍感ではない限りは気がつくだろう。

明らかに手加減をしているレオルドにジークフリートはギリッと奥歯を噛みしめる。

自分は戦うに相応しくないのかと。

自分では相手にすらならないのかと。

(そんなことは分かってる!

今のレオルドは俺なんかよりずっと強い!

でも、でも!

こっちを見ろよ!!!)

悔しさと怒りが頂点に達したジークフリートは加速する。油断しているレオルドの隙を見つけたジークフリートはありったけの思いを叫ぶ。

「どこを見てる!!! 今、戦ってるのは俺だろうが!」

ほんの僅かな隙を突いてジークフリートは会心の一撃をレオルドに叩き込んだ。それは、奇しくも二人が決闘をしていた時のようにレオルドの頬をジークフリートが拳で打ち抜いた。

腕輪による結界が作動しているので直接当たることはないが、確かな衝撃がレオルドの頬に走る。

「ぶひ?」

口にしたのはいつぶりだろうか。レオルドは、昔に戻ったかのように豚の鳴き声を出した。

「ハア……ハア……何を考えてるかは知らないが、今は俺との試合の最中だろうが!

お前、最初に言ったよな! お互いにベストを尽くそうって!

あれは嘘だったのかよ!?

なあ、どうなんだ!

答えろ、レオルド!!!」

(あ、ああ……は、ははははは。

俺は馬鹿だな……

そうだ、そうだよ!

ゲームで見てきただろう!

ジークがどういう男かを!

俺が心配する必要なんてないだろう!

だって、アイツは主人公なんだから!)

ぐだぐだと余計なことを考えていたレオルドはジークフリートの一撃で吹っ切れる。もはや、悩むことはない。ここから先は、何も考えない。

ただ一つのことを成すだけである。それは全身全霊全力全開でジークフリートを倒すだけだ。

「ふ……はっはははははははははは!」

ニヤつく顔を隠すようにレオルドは高笑いを始める。その様子に会場にいた全ての人が息を呑む。なぜならば、高笑いをしているレオルドからありえざる魔力の奔流が立ち上っているからだ。

レオルドの魔力が高まり天を衝くように立ち昇る。その光景は全ての人を驚愕させた。

「非礼を詫びよう。そして、ありがとう。ジークフリート。

お前のおかげで目が覚めた。俺はもう何も迷わない。

全身全霊全力全開でお前を倒そう!!!」

嵐のように吹き荒れていた魔力が収束していき、レオルドの身体に収まる。次の瞬間レオルドが剣を構えると、背後に雷で出来た剣が八本浮かび上がる。

「な……!」

驚くジークフリートだがすぐに思考を切り替える。

(驚くな! アイツが強いのは知っていただろう!

なら、怖気づくな!

俺も全部出すだけだ!)

力強く剣を握り直してジークフリートはレオルドに目を向ける。その瞳には決して揺らぐことのない炎が宿っていた。