作品タイトル不明
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特に何事もなく冬は過ぎ去り、春がやってきた。桜が舞う季節になったがレオルドに新たな出会いは訪れない。
今年は闘技大会が開催される。レオルドも参戦予定である。ゼアトから参加するのはレオルドのみだ。他にも参加しないかとレオルドは誘ったが全員に断られてしまった。レオルドと戦いたくないとか、面倒くさいとか、そういう理由ではなく仕事や用事があるからだ。
そんな事を言いだしたらレオルドも領主としての仕事があるのだ。しかし、今のゼアトはレオルドが抜けても経営がうまく回るようになっている。
レオルドの努力の証である。
しかし、それならば他の者も闘技大会に出場可能なのではと思うのだが参加はしない。一人だけの参加でレオルドは寂しく感じたが、応援に来てくれるということなのでそれならばと納得した。
闘技大会は学園も休みの夏に開催される。つまり、それまでは暇というわけではないが、時間はあるのでレオルドは領主としての仕事をこなしながら、鍛錬に明け暮れるのであった。
早朝に鍛錬を行い、朝食後は書類仕事を片付け、午後からは現場に移動して自動車製造や区画整理に励む。そして、就寝前にはシャルロットと魔法の鍛錬である。はっきり言って、オーバーワークである。だが、そこまでする必要がレオルドにはある。
死の運命を回避するために。
運命48(ゲーム) で死ぬ運命にあるレオルドは、この世界が運命48だということを知っている。だから、自分はいずれ死ぬということも。本当にそうなるかはわからないが、世界は確実に運命48と同じ流れになっている。
勿論、全てが一緒というわけではない。レオルドが決闘に負けてゼアトに送られたということ以外は、運命48とは異なっている。しかし、これはレオルドが持つ真人の記憶にないだけだ。
レオルドと混ざりあった真人の記憶ではレオルドがゼアトに送られた後のことは知らないのだ。なぜならば、運命48はジークフリートの物語だから。
それ故にレオルドが分かっているのは自分が遠くない将来死ぬということだけ。当然、人間なのだからいずれは死ぬだろう。だが、レオルドは分かっているだけでも十年以内には確実に死ぬ。死因は様々であるが、そのほとんどが他殺である。
帝国、聖教国、暗殺者、魔物といった要因に殺される。ならば、鍛えるのは当然であろう。
現在レオルドは死の未来を回避するためにではなく、闘技大会に向けて猛特訓をしてる。出場選手は不明であるが、レオルドの予想ではベイナード、リヒトーが出ると思っている。
そして、もうひとり忘れてはならない男がいる。それはレオルドと因縁の深いジークフリートである。
恐らく、いいや、確実に参加するであろう。なにせ、ジークフリートはレオルドが参加することを知っており、今のレオルドと一度会ってみたいと思っているのだ。ならば、参加は必然である。
そう、いよいよレオルドとジークフリートが再会する時が訪れるのだ。
「ふう……」
「ねえ、レオルド」
「なんだ?」
「ジークフリートってそんなに強いの? 今の貴方は少なくともこの国だったら屈指の実力者よ?」
「ふむ……まあ、そうだな。シャル、お前には教えたと思うがジークは 運命48(ゲーム) の主人公だ。弱いと思うか?」
「だから〜、それはゲームの話でしょう? ここは現実なの。ゲームでは強いんでしょうけど、今のジークフリートが貴方と互角に戦えるとは思えないわ〜」
「む……そうかもしれんが、弱いと決まったわけでもないだろう?」
「う〜ん、言っておくけど今も鍛えているレオルドと学園に通っているジークフリートじゃ実力に差が開いてると思うのだけど?」
「いや、ジークはいくつかの修羅場をくぐっている。学園にいる間はイベントがあるからな」
「ゲーム通りならジークフリートは強いってわけ?」
「いや、多少は強くなっているが基本的に成長するのは学園を卒業してからだな」
「それなら、やっぱり貴方のほうが強いんじゃないかしら?」
「それは分からん。お前が言ったようにここはゲームではなく現実だからな」
「つまり、戦うまではわからないってことね〜」
「ああ」
深夜、レオルドはシャルロットと魔法の鍛錬を行っていた。今は疲れ果てたレオルドが地面に転がっており、そこへシャルロットが話しかけている最中だ。
冷たい夜風が火照ったレオルドの身体を冷やす。心地いい感覚にレオルドは身を任せる。
「なあ、シャル。俺は勝てると思うか?」
「な〜に? 弱気になってるの?」
「……お前は知らないだろうが主人公補正という不可思議な力があるんだよ」
「そうなの? それって、どうにも出来ない力なの?」
「本当に存在するなら、まず俺に勝ち目はない」
「ええ〜〜〜っ!? 私でも?」
「ああ。主人公補正ってのは世界の概念すら覆す。とんでもない力だ」
「へえ〜〜〜、なら闘技大会が楽しみね!」
もしも、本当に主人公補正なる力が存在するのならレオルドは勝てないだろう。そして、運命にも。
だが、諦める理由にはならない。勝てる勝てないじゃないのだ。レオルドはそれでも運命に立ち向かわなければならない。
闘技大会まで残り三ヶ月。レオルドは万全を期して挑む。