軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

913 クマさん、サタケさんと戦う その2

わたしは木の棒を構える

わたしが持っているのは勇者の剣。

そんなわたしの勇者の剣をサタケさんが見る。

「俺は真剣に戦ってくれと言ったと思うが」

「そのとおりじゃユナ、本当にその木の棒で戦うつもりなのか? 相手は妖刀じゃぞ」

カガリさんまでが、勇者の剣には否定的みたいだ。

「妾の刀を貸してもよいぞ」

わたしは首を横に振る。

「ううん、武器に魔力を流させてもらうから、大丈夫だよ」

黒男が持っていた妖刀みたいに魔力を吸われたら使えないけど。

風切なら大丈夫なはずだ。

もし、勇者の剣が切られたら、ミスリルナイフを使うか、カガリさんから刀を借りるか、そのときに考えればいい。

「それに強さは武器で決まるものじゃないことをサタケさんに教えないといけないからね」

「武器を否定するってことは鍛冶職人をバカにすることじゃぞ」

「別に武器で強くなれるのは否定はしないよ。わたしだって、強い武器は欲しいと思うし」

ゲームで遊んでいたときは強い武器を作るために、どれだけレア素材集めを頑張ったことか。

ミスリルナイフだってそうだ。

「強度、軽さ、バランス、魔力の流れの良さ、武器には無限の可能性があると思う。でも、今のサタケさんは妖刀の意志なのか、自分の意志なのか、曖昧になっているから違うと思う」

だから、今回は武器が強くなくても、強くなれるってことを証明しないとダメだと思う。

それに木の棒なら間違って殺すこともない。

「だから、わたしはこれで相手をするよ」

わたしは勇者の剣を構える。

「いいだろう。その傲慢な考え、叩き潰してやろう」

どうやら、怒らせてしまったみたいだ。

どっちにしても、勝って納得させるしかない。

そして、国王の開始の合図で試合が始まる。

お互いに様子見で動かない。

このままでは、時間が経つばかりだ。

「先手は譲るよ」

「誘いか?」

相手の攻撃を誘って、反撃する方法もある。

「それなら、わたしから行こうか」

「いや、この妖刀の力が嬢ちゃん相手にどれほど使えるか、確かめさせてもらう」

サタケさんが動く。

踏み込んだと思ったら、一瞬で間合いが詰まる。

速い!

反応して、勇者の剣で受け止める。

魔力を込めている勇者の剣は切られない。

サタケさんはすぐに切り返し、斬り掛かってくる。

わたしはサタケさんの流れるような攻撃を躱し、捌き、受け流す。

ためらいがない。

これがサタケさんの通常通りの行動なのか、妖刀の意志が混ざっているせいなのか分からない。

ただ、純粋にわたしを倒しにきている。

「どうして、避けられる」

「経験だよ」

ゲームでも速度アップの防具はあった。そんな防具を着た人たちと戦ってきた。

動きが速い魔物だっている。

そんな相手には、武器の動き、足の踏み込み角度、目線、体全体を見て、動きを予測する。

反応できるのはクマ装備のおかげだけど、動きを読むのは経験だ。

「経験だけで、それほど強くなれるのか?」

「経験は大きいよ。武器を向けられても慣れてくるし、ギリギリで見切ることができる」

「でも、その年齢で、それほどまでの経験をどうやって積んだ!?」

サタケさんは攻撃をしながら尋ねてくる。

勇者の剣で受けながし、切り返すと横に振り抜く。

サタケさんは避け、後ろに逃げる。

「わたしがいたところは毎日、無数の魔物が現れ、毎日戦っていたからね」

毎日経験値稼ぎとお金のために魔物と戦っていたから、嘘ではない。

対人戦も上位の賞品が欲しかったから、頑張った。

「サタケさんは毎日、命懸けで戦ったことがある?」

現実の世界では不可能。

でも、ゲームの中だったわたしには可能。

「何度も死にかけるまで戦ったことはある?」

そんな経験は数回、あるかどうかだ。

何回、何十回、何百回も殺されかけたし、殺された。

一日に何度も挑戦して、何度も殺されたこともある。

「強くなるのは戦いの数だよ」

経験……なんでもそうだけども経験は人を強くさせる。

料理の経験値が高ければ、美味しい料理を作ることができる。そこそこの料理の経験があるから料理が作れる。料理の経験がなければ美味しい料理は作れない。

学校だって、勉強をして経験値を得る。得意科目は経験値が高くなる。

社会に出ても、経験が生きる。まあ、わたしは社会経験はゼロだけど、お爺ちゃんの会社を見てきたから、少しは分かる。

社会経験がない新人とベテランでは違う。

仕事をサボってばかりの両親と、ちゃんと仕事をしている親戚では天と地の差がある。

経験は人のレベルを上げ、強くさせる。

対話やコミュニケーションの経験値が高ければ、友達が多くなる。わたしは友人はいないから……。

「俺の戦いの数が少ないと言いたいのか!」

サタケさんの刀を避ける。

「少ないよ。毎日何時間も戦ったことがないでしょう。魔物じゃない対人戦は?自分より強い人と戦った経験は?」

「おまえさんはあると言うのか」

「あるよ。何度も負けたよ。そうやって成長してきたよ」

強くなればなるほど、同等の力を持った相手は消えていく。

たぶん、サタケさんよりも強い人は少ない。少ない上に、戦う機会がない。

だから、今以上のレベルアップが難しくなる。

成長するには、自分より同等以上の力を持った者、強い者が必要だ。

ゲームは自分だけが強くなるわけじゃない。わたしが強くなれば、周りも強くなっていく。

わたしが強い武器を手に入れれば、相手も強い武器を手に入れる。

新しい技を身に付ければ、相手も新しい技を身につける。

わたし以上のゲーム廃人はたくさんいた。

魔物だって、先に進めば、どんどん強い魔物が現れた。

だから、戦う相手には困らなかった。

人は一人では強くなれないと聞いたことがある。

一人で強くなれるのは天才か、転移チートを貰ったり、わたしのように神様からチート装備を貰った人ぐらいだ。

「わたしが胸を貸してあげるから、本気でかかってきていいよ」

「その言葉、後悔しても知らんぞ」

サタケさんとわたしの戦いが再開される。

サタケさんの戦い方は綺麗だ。

たぶん、部下たちに教えるため、基本に忠実になっているのかもしれない。

そう考えると黒男の攻撃は端々に嫌らしいものがあった。

でも、それはゲーム内では当たり前のことだった。

いかに相手に勝つかが勝負。汚いとか綺麗とかはなかった。

いきなり、蹴りは飛んでくるわ。隠し武器が出てくるわ。一瞬も気を抜けなかった。

だから、サタケさんの綺麗な戦い方は初心者の時を思い出す。

みんな、最初は不慣れで基本通りの攻撃ばかりだった。

勇者の剣で受け止め、サタケさんの腹を蹴り飛ばす。

「卑怯とは言わないよね。魔法は禁止だけど、蹴りは禁止じゃないよね。もしかして、綺麗な戦いがしたかった?」

煽ってみる。

「ああ、禁止じゃない」

サタケさんがお腹を押さえながら答える。

サタケさんは怒りを抑え、攻撃を仕掛けてくる。

前回、戦ったときよりも、速い。

ただ、それだけだ。

刀に振り回されている。

怖さはない。

軌道も読める。

なにをしてくるか分からない怖さは感じない。

真っ直ぐな剣。

黒男やわたしのように汚れていない剣筋。

カガリさんの攻撃も捻くれていた。

ジュウベイさんの戦い方は綺麗ではあるが、研ぎ澄まされていた。さらには応用があったように感じた。

サタケさんは同じ型の練習を繰り返してきたんだと思う。

それは悪いことではない。

基本ができていない人は弱い。

極めた技なら格下へは一撃で終わる。

でも、それだけで、先はない。

格上になれば、防がれたら終わる。

強くなるには、その先の何かを見つけないといけない。

「強いな。ジュウベイの奴が負けるわけだ。さらに、魔法も使えるんだから、嬢ちゃんが本気で戦ったら、俺はあっという間に負けていたんだろうな」

なんでもありなら、わたしが勝つ。

妖刀よりも卑怯なクマ装備を持っているんだから。

「それじゃ、これが最後だ。受け止めたら、嬢ちゃんの勝ちだ」

サタケさんの雰囲気が変わる。

なにか仕掛けてくる。一瞬も見逃すな。

サタケさんの足が動く。踏み込んだと思ったら、一瞬で間合いが詰まる。

最速。

上段斬り。体を横にずらし、躱す。クマのお腹の前をギリギリ、通る。

でも、サタケさんの攻撃は止まらない。腕を切り返し、刀を斜め上に切り上げてくる。

速い。

勇者の剣で受け流す。

これもギリギリだ。

そして、すぐに斬り上げた刀が振り下ろされる。

左手にミスリルナイフが現れ、刀を弾く。

耐えた。

サタケさんが驚きの表情をするが、笑う。

サタケさんは流れるような動きで刀を引く。

綺麗な動作。

全ての動作が繋がっている。

どれだけの練習してきたか想像もつかない。

「俺の勝ちだ」

引いた刀が突き出される。

狙いは右肩。

膝を折り、肩を下げる。

わたしの右顔の横を突きが通る。

サタケさんは驚愕の顔をする。

伸び切った腕に向けて勇者の剣を下から上に向けて振るう。

勇者の剣がサタケさんの腕を斬る。

サタケさんの顔が歪み、膝が崩れ、わたしの目の前にサタケさんの顔が現れる。

わたしは左手に持つミスリルナイフをクマボックスに仕舞い、拳を握りしめるとサタケさんの顔に向けて打ち込んだ。

サタケさんの体が吹っ飛び、地面を転がる。

手応えあり。

黒男みたいに後方に跳んで力を逃すようなことはされていない。