軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

912 クマさん、サタケさんと戦う その1

翌日、朝食を食べ終わり、のんびりしていると城から馬車が来た。

「なんすかね」

「分からんが、スオウが妾とユナに来てほしいと言っておる」

わたしとカガリさんの呼び出しだ。

しかも、手紙ではなく、御者付きの馬車だ。

「すぐに馬車に乗って来い」って意味だ。

使いの人に尋ねても、「国王様からは、なにもお聞きしていません。丁重にお連れしてくるように」と言われただけらしい。

「わたしはのけ者っすか」

呼び出しはわたしとカガリさんだけみたいだ。

だからと言って一緒に行ってはダメってことはないと思うけど。

でも、カガリさんはシノブに留守番を頼む。

「お主は冒険者ギルドや他から連絡が来るかも知れぬから、残ってくれ」

「カガリ様に頼まれたら、断れないっす」

「サクラもお願いね」

「はい、お任せください」

ここはシノブとサクラに任せ、わたしたちは城から来た馬車で城に向かう。

本当に、城とサクラの家を行き来してばかりだ。

「なんだろうね。妖刀の場所が分かったのかな?」

「それなら、伝えればいいだけじゃろう。城に呼ぶのは時間の無駄じゃ」

確かに、妖刀を持っている人物が見つかったなら、急がないと逃げられるかもしれないし、被害が出るかもしれない。

「う~ん、それじゃ、なんだろう」

「行けば、分かるじゃろう」

カガリさんは身も蓋もないことを言う。

そうなんだけど、カガリさんなら、なにか分かるかなと思ったけど、想像も付かないみたいだ。

馬車は城に到着する。

馬車から降りると、別の男性が「お待ちしていました。国王様がお待ちです」と言って歩きだす。

「えっと、わたしたちが呼ばれた理由は?」

「それは国王様から、お聞きしてください」

わたしとカガリさんは諦め、黙って付いていく。

わたしたちが連れてこられたのは国王の執務室ではなく、訓練場だった。

訓練場の端にスオウ王が立っている。

「来たか」

スオウ王は、わたしを連れてきた男の人に「ごくろう」と声をかけ、ここには誰も近寄ることがないように指示を伝える。

わざわざ、こんなところで話すってことは誰にも聞かれたくない話?

「それで、なにがあったのじゃ?」

「サタケが見つかった」

大事ことかと思ったら、サタケさんの発見報告だったみたいだ。

「それは、よかったけど」

「妾たちが呼ばれた理由が分からんのう。報告だけなら手紙や伝言でよかろう」

確かにそうだよね。『サタケが戻った。妖刀を回収した』ぐらいで十分だ。

もしかして、怪我を負ったとか?

わたしに治してほしいとか?

「サタケの部下が城下町で見つけたが、城に戻るには条件を付けられた」

「条件?」

「ジュウベイか、おまえさんと戦わせてほしいと言ってきた」

スオウ王がわたしに目を向ける。

「わたし?」

「ああ、どうやら、再戦をしたいらしい」

「……えっと、意味が分からないんだけど」

どうして、サタケさんが城に戻る条件が、わたしとジュウベイさんと戦うってことになるの?

「妖刀に飲み込まれたのか」

カガリさんがポツリと口を開く。

「分からない。会話はできる。自分の意思も持っている。ただ、ユナとジュウベイと戦いたいと言っている。それで、ジュウベイはいまだに行方は分かっていない。だから、ユナを呼んだ」

「妖刀に飲み込まれたみたいじゃな」

「会話ができるんでしょう。自分の意思があるんでしょう」

「それは関係ない。戦いたい。強くなりたい。持ち主と反したことでなければ妖刀は飲み込まない。サタケはお主に負けたことで強くなりたいと思ったのじゃろう。それが妖刀と一致した。だから、お主と再戦したいと思ったのじゃろう」

人を斬りたいと思っている妖刀は、人を斬りたくない人が持てば無理やりにでも斬らせるが、人を斬りたいと思っている人が持てば、無理やりにすることはない。

「本来なら、ジュウベイに頼むところだが、未だに行方が分かっていない。ユナ、頼めるか?」

「はぁ」

ため息しか出ない。

「戦うよ。それでサタケさんが納得してくれるならね。それに、妖刀の回収を手伝うって、自分で言い出したことだし」

「感謝する」

本当なら、ジュウベイさんに任せたいところだけど、ジュウベイさんはいない。

それに、ジュウベイさんも妖刀に取り憑かれている可能性がある。

「サタケさんの相手はシノブのはずだったのに」

話し合いの結果。

もし、戦うことがあるようなら、わたしが黒男で、カガリさんがジュウベイさん、サタケさんはシノブってことになっていた。

まあ、それは同時に現れた場合だけど。それとカガリさんが探している右京だった場合は譲ることになっている。

「ご指名じゃ、諦めるんじゃな」

カガリさんは笑う。

「じゃが、それなら妾はどうして呼ばれたのじゃ? 妾は不要じゃろう」

「もしものためと、サタケを逃さないためだ。ユナは他の者たちに戦いを見られるのは好まないだろう」

戦うのは百歩譲ってしかたないとしても、多くの兵士の中、戦うのは嫌だ。

「それと、サタケには隊長という立場があるから、サタケが負けるところを兵士たちに見られるわけにはいかない」

確かに、部下たちの前でクマの格好した女の子に負けたら、隊長の立場がなくなる。

部下たちだって、自分たちの隊長がクマの格好した女の子に負けたら、どんな顔で隊長に接したらいいか分からなくなると思う。

「お主は、ユナが勝つと思っておるのか?」

確かに、国王の言葉だとわたしが勝つ前提の会話になっている。

「サタケには悪いが、妖刀と大蛇を比べれば分かるだろう」

なにも言い返せない。

他の者でも妖刀だったら、勝ち目はある。実際に、封印されているんだから。

でも、大蛇は違う。多くの人が亡くなっている。

「だから、気にせずに、サタケに勝ってくれて構わない」

そういうことなら、勝たせてもらうことにする。

話もまとまり、わたしたちは訓練場の傍にある建物に向かう。

この中にサタケさんが待っているとのこと。

「サタケ、中に入るぞ」

スオウ王は返事も待たず、ドアを開け、部屋の中に入る。

わたしたちも続く。

建物は兵士たちの休憩所となっているみたいで、少し広い。

部屋の奥の一部は畳が敷かれており、その畳の上にサタケさんがいる。

サタケさんは畳の上で目を閉じ、正座をしている。

座禅のようなたたずまいだ。

「ユナを連れて来たぞ」

スオウ王が声を掛けると、サタケさんの目が開き、わたしたちを見る。

「来てくれたのだな」

サタケさんは横に置いてあった刀を手にすると立ち上がる。

「本気で俺と戦ってくれ」

国王の言うとおりに会話はちゃんとしているし、目も虚ろではない。

妖刀の意思とサタケさんの意思が同じなんだと思う。

「妖刀を使って、卑怯と思うかもしれないが、ジュウベイやおまえさんのような天才に勝つには、俺のような凡人は武器にすがるしかない」

「わたしが天才?」

「その年齢で、その強さ。天才だろう」

天才じゃないよ。

クマ装備のおかげだよ。

ゲームで手に入れた力はあるけど、それはクマ装備がなければ使うことはできない。

いくら、剣を扱える技術があっても、クマ装備がなければ、その技術を使うことはできない。

筋力はないし、そんなに動き回れる体力もない。

武器だって、剣を振り回せるほどの腕力はない。

ナイフだったら、可能かもしれないけど。動き回ったら、足がもつれそうだ。

だから、わたしは天才ではない。

クマ装備があるからこそ、動ける。

「戦えば、納得してくれるの?」

「嬢ちゃんが勝てば終わりだが、嬢ちゃんが負ければ、次はジュウベイだ」

つまり勝たないと終わらないってことだ。

わたしはサタケさんが持つ妖刀を見る。

「カガリさん、あの妖刀……」

わたしの言葉にカガリさんはサタケさんが持つ、妖刀に目を向ける。

「妾が逃がした妖刀か」

「わたしが逃がした妖刀だね」

カガリさんが逃がし、さらにはわたしが逃がした妖刀はサタケさんが持っていたみたいだ。

つまり、飛んでいった妖刀は男Aが拾い、サタケさんと戦うことになり、サタケさんが勝ち、サタケさんの手に渡ったみたいだ。

「お主に任せるつもりじゃったが、妾が戦ってもいいぞ。元は妾が逃した妖刀じゃ」

「ううん、わたしが戦うよ。わたしが逃した妖刀でもあるしね。なによりご指名だからね」

「それなら、頼むとするかのう」

わたしはサタケさんを見る。

「わたしが勝ったら、妖刀は封印させてもらうよ」

「いいだろう」

わたしたちは戦うため、建物から出て、訓練場に移動する。

訓練場は国王が近寄らせないように指示を出したため、周囲は誰もいない。

探知スキルで確認しても、近くに人の反応はない。

誰かが見ているってことはない。

「妖刀の名前を聞いてもいい? 聞かないほうがいい?」

「妖刀風切だ」

隠すこともなくサタケさんは教えてくれる。

つまり、動きが速いってこと?

「カガリさん、わたしが勝ったら、すぐに封印して、もしかすると飛んで逃げちゃうかもしれないから」

「分かった」

わたしとサタケさんは訓練場の中央に移動する。

「その刀に逃げられたら困るから、好きなルールで戦ってあげるよ」

「それって、手加減するってことか?」

「違うよ。本当のなんでもありだったら、戦いにならないってことだよ」

殺すほどの魔法を使えば、簡単に終わる。

でも、わたしは人に向かって、殺人魔法は使えない。

もし、使えたとしても、サタケさんが死んだあと、妖刀に飛んで逃げられたら、たまったものじゃない

「そうだな。魔法もありになれば、剣術の戦いでなくなる。魔法なしでいいか?」

「体の強化魔法は」

「ありだ。強化しなければ肉体が付いていけないだろう。俺も使っている」

ルールも決まり、お互いに武器を構える。

サタケさんは妖刀を。わたしは木の棒を構える。