軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

883 クマさん、妖刀の話を聞く その2

サタケさんがシノブに目を向ける。

「シノブ、ジュウベイから報告は?」

「ないっすよ」

「最後に会ったのはいつだ?」

「妖刀を探すように命じられてから会っていないっす」

「そうか」

「スオウ王も言っていたっすが、連絡がないっすか?」

「ない。まあ、たったの2日だ。そのうち連絡があるだろう」

嫌な予感がするのはわたしだけかな。

こういうのって、ミイラ取りがミイラになるお話の展開が多い。

ジュウベイさんが妖刀に操られていたら、かなりヤバいと思うんだけど。

あの実力に、妖刀の力が加わり、心が無くなっていたら……。

まあ、そんな展開は盛り上げるための小説や漫画の中だけのお話だよね。

……だよね?

「それにしても妖刀がどこにあるか分からないなら、動きようがないね」

「部下に情報を集めさせている。手がかりぐらい見つかるだろう」

「そのときは死体がいくつ転がっていることか分からないっすよ」

「分かっている」

サタケさんは少しイラついたように言う。

サタケさんだって、急がないといけないって分かっているはずだ。でも、妖刀がどこにあるか分からないなら動きようがない。

わたしも妖刀の情報が欲しいから、サタケさんとの試合を受けた。

「無差別に斬りかかっていないことだけが幸運っすね」

「血を好む妖刀赤桜なんて、無差別に斬りかかってもいいのにね」

「もしかして、血が嫌いな人が持っているかもっすよ」

つまり、血が好きな妖刀と血が嫌いな人の心が相殺しているってことか。

意外とあり得ない話ではないかも。

お化け屋敷が嫌いな人が、お化け屋敷が好きな霊に取り憑かれても、お化け屋敷に行きたいとは思わないかも?

そのときの感情は取り憑かれた本人しか分からないけど。

そもそも、妖刀に取り憑かれた状況が分からない。

実際は、大丈夫って可能性もある。

こればかりは、この目で見てみないと分からない。

「それじゃ、話はここまでっすね。あとは新しい情報が入ったらお互いに情報交換するってことで」

「ああ、構わない」

シノブが話をまとめ、サタケさんは了承する。

「新しい情報が入ったら、どうやって嬢ちゃんに伝えればいい?」

「それなら、サクラのところにお願い」

「サクラ様のところ?」

流石に温泉がある屋敷と街を往復するわけにはいかない。

なにより、わたしがいない可能性のほうが高い。

カガリさんがいれば、情報の受け取りを頼んでおくんだけど。

そういえばカガリさん、どこに行ったんだろう。

シノブやサクラなら知っているのかな。

カガリさんのことは秘密になっているはずだから、後で尋ねよう。

「サクラ様には、今回のことを話したっすから、大丈夫っすよ」

「おまえな、機密情報を」

「怪我をしたっすから、仕方なかったすよ」

「まあいい。新しい情報が入ったら、サクラ様に伝えるようにさせる」

「わたしのほうは?」

「サクラ様から、俺宛に連絡をしてくれればいい。手紙なり、伝言なりしてくれれば、俺に届くように手配しておく」

「了解」

情報交換はここまでとなった。

わたしとシノブは部屋を出る。

「シノブはこれからどうするの?」

歩きながら尋ねる。

「情報収集をしようと思っているっすけど」

「あんな怪我をしたあとなのに?」

「ユナが治してくれたっすから、大丈夫っすよ」

はっきり言って、わたしの治療魔法の効果がどれほどのものなのか分かっていない。

治療した回数もそんな多くないし、相手が痛みを我慢していたら、それこそ分からない。

「本当に大丈夫なの?」

「ユナは、心配性っすね」

あんな怪我を見たあとだ。心配するのも仕方ない。

「本当に?」

わたしはシノブに近寄り、怪我をしていた横腹をクマさんパペットで軽く押す。

その瞬間、シノブの顔が変わる。

「ほら、痛いんでしょう」

「それはユナが押すからっすよ。普通にしていれば大丈夫っすよ」

「とりあえず気休めになるかどうか分からないけど。もう一度治療魔法をかけるから、サクラの家に戻ろう。それと、ちょっとシノブとサクラに聞きたいこともあるしね」

「聞きたいことっすか? なんすか?」

「2人に聞きたいから、サクラの家に戻ってからね」

二度手間になるので、そう言う。

わたしとシノブは馬車に乗り、サクラの家に向かう。

「それにしても、サタケさんに勝つなんて、本当にユナは強いっすね」

「あっちも本気じゃなかったでしょう」

「う~ん、それなりに本気だったと思うっすよ。あくまで練習試合っすけど。まあ、それを言ったら、ユナもそうっすけど。だから、ルール内の試合ではユナが強かったっすよ。それは動きを見れば分かるっすから」

「サタケさんとジュウベイさんとどっちが強いの?」

本気のサタケさんと戦っていないので、2人の実力を知っているシノブに尋ねる。

「もちろん、それは……おっと危ないっす。わたしの口から言えないっすよ。わたしが言っていたと知られたら、片方の人に文句を言われるっす」

「わたし、口は堅いよ」

「ダメっす。言わないっす。2人に目をつけられたら、面倒っす」

何度か尋ねたけど、シノブは口を割らなかった。

「お帰りなさい。遅かったですが、もしかして叔父様がユナ様の申し出を断ったとか」

サクラが出迎えてくれる。

「ううん、ちゃんと許可をもらったよ」

「ユナがサタケさんに絡まれて、実力を測ることになって試合をすることになったっす。それから現状の話をサタケさんとしたっす」

「サタケにですか。それで、試合は?」

「もちろん、ユナが勝ったっすよ」

シノブがわたしとサタケさんの試合を手振りを入れて解説をする。

外から見るとそんな感じなんだ。

「わたしも見たかったです」

サクラは残念そうにする。

「それで、わたしとサクラ様に聞きたいことってなんすか?」

シノブが思いだしたように尋ねてくる。

「カガリさんが屋敷にいなかったんだけど、なにか知っているかなと思って」

カガリさんがあそこに住んでいるのは内緒になっている。

知っているのはごく僅かな人だけだ。

「カガリ様ですか? いなかったのですか?」

「うん、どこにもいなかったよ」

「トイレとか、お風呂じゃないっすか?」

「くまゆるとくまきゅうにも確認したけど、家の中、周囲にもいなかったよ」

わたしの探知スキルでなく、くまゆるとくまきゅうには魔物や人が近くいれば分かる力があることを2人は知っているので、そう説明する。

「いつも屋敷に行くとカガリさんがいるから、気になって」

「わたしは知りませんね。シノブはどうですか?」

「カガリ様なら、先日、会いに行ったすよ。そのときはいたっす」

「先日って?」

「妖刀が盗まれたあとっす。カガリ様って、お婆ちゃ……長く生きているっすよね」

今、お婆ちゃんって、言おうとしたよね。

「それで、妖刀について知っていることがあるかもと思って、カガリ様に聞きに行ったっす」

「確かに、カガリ様なら妖刀についても知っているかもしれませんね」

カガリさんは長く生きているから、妖刀が起こした事件の当時の生き証人って可能性もある。

「それで、妖刀についてカガリ様はなんと言っていたのですか?」

「そうっすね。言い伝えは正しいから、気をつけろと言われたっす」

「それだけですか?」

「盗まれた妖刀の種類を聞かれたので、教えたっす」

「他は?」

「他に盗まれた妖刀がないか尋ねられたっすけど、部屋が荒らされたから確認中と答えたっす」

「そのときのカガリさんに変わった様子は?」

「お酒を飲んで、窓から外を見ていたっす」

でも、そのあとにカガリさんは消えた。

なにかあるのかな?

それとも、普通に用事があるから、出かけただけかもしれない。こればかりは会って本人に確認しないと分からない。

「あのう、盗まれた妖刀はなんなんですか?」

そう言えばサクラには話していなかった。

「妖刀赤桜、妖刀風切、妖刀馬鉄の3本っす。他にも盗まれた可能性もあるっすが、調査中っす」

「妖刀赤桜、斬った瞬間、桜のように血が散るので、そう付けられた妖刀ですね」

つまり赤は血、桜が血吹雪ってことか。

「詳しいね」

「詳しいってわけではありません。自分と同じ名前がついた妖刀だったので、昔にちょっと調べたことがあっただけです」

「サクラの名前が入っているから、綺麗な刀に聞こえるね」

「昔に見たことがあるっすが綺麗な刀だったっすよ。うろ覚えっすけど」

「見たことがあるの?」

「昔っすよ」

「刀の特徴は覚えていないの?」

「昔のことっすからね」

そう言って、少し考える仕草をする。

「赤桜は綺麗な刀だったっす。ちょっと赤みがかかっているように見えたっす」

「言い伝えだと血を吸うと赤くなると……」

妖刀っぽい刀だ。

「風切は、そんな特徴はなかったっす。普通の刀だなと思った記憶があるっす」

うん、参考にならない。

でも、普通の刀っぽいのが、貴重な情報かもしれない。

「妖刀馬鉄は、なんと言うか、手に持ちたくなったっすね」

「手に持ちたくなった?」

「ずっと見つめていたら、そんなことを思ったっす」

封印されていたのに?

ただ、シノブが刀マニアって可能性もある。

「赤桜と風切りはなんとなく分かるけど、馬鉄って結局どんな妖刀なの?」

「確か、名刀を目指した鍛治職人の最後の一振りだったと聞いたことがあるっす」

「自分の持ち主にふさわしい人を探すだっけ?」

「言い伝えでは宿主が負けると、宿主に勝った者を、新たな宿主にすると」

「それって、どんどん持ち主が強くなっていくってこと?」

どんどん持ち主のレベルが上がっていくことになる。

「当時は、どうやって封印? 回収することができたの?」

「妖刀の言い伝えは残っていますが、最終的にどうなったのかは一般的には伝えられていないんです」

「そのあたりもサタケさんに調べてもらうしかないっすね。当時の情報が残っていれば、簡単に回収ができるかもっす」

「わたしのほうでも調べておきます。過去に妖刀に関わった巫女がいるかもしれません」

確かに、巫女が関わっている可能性もある。

サタケさん、サクラ、あとはカガリさんから情報が手に入れば、思っていたよりも早く妖刀を回収できるかもしれない。