軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

882 クマさん、妖刀の話を聞く その1

試合に勝った。

強かったけど、本気じゃなかったのかもしれない。

わたしの実力を確かめる感じだったのかな?

ジュウベイさんが繰り出してきた三段突きみたいな必殺技はなかった。

三刀流、四刀流とか、燕返しとか、必殺技をもってないのかな。

でも、魔法とか隠しているっぽかったから、なにかしら必殺技を持っている可能性は十分にある。

でも、隠し技を持っていたとしても、今回はわたしの勝ちだ。

「それじゃ、わたしが勝ったんだから、わたしの命令を聞いてくれるんだよね?」

勝負はわたしの勝ちだ。

「約束は守ってもらうよ」

わたしの言葉に男性は嫌そうな顔をする。

「約束は守るが、無理難題を押し付けられても、できないこともある」

まあ、無理難題を言うつもりはない。

いろいろと無理難題を言って、嫌われて、約束を守ってくれないのも困る。

「わたしがほしいのは情報だけ。情報は共有して」

「それだけか?」

「情報は命だよ。情報がなければ、わたしはなにもできないよ」

わたし1人じゃ、広い和の国の中から妖刀の持ち主を見つけ出すことはできない。

シノブは手伝ってくれると思うけど、街の中を探すには人手は必要だ。

「スオウ王、この者に妖刀の情報を渡してもよろしいでしょうか」

「初めからそのつもりだ。できる限り便宜を図ってやれ」

スオウ王の許可がすんなりと下りる。

「それじゃ、まずは現在の妖刀に関する情報の共有っすね」

「悪いが俺は仕事に戻る。現状で俺が得ている情報はサタケに伝えている。詳しいことはサタケから聞いてくれ」

スオウ王は背中を向けて歩き出す。目の前の男に聞けってことらしい。

スオウ王にもいろいろと聞きたかったけど仕方ない。

この国の国王だ。仕事もあるだろうし、妖刀だけに構っているわけにはいかない。

それに妖刀の回収は部下の仕事だ。

国王が前に立って動くものではない。

「それじゃ、これからどうする?」

残されたわたしは尋ねる。

「シノブの情報と俺が持っている情報の交換だな。俺の部屋に行くぞ」

「女を2人も部屋に連れ込んでどうするつもりっすか?」

シノブがそう言った瞬間、風が切れる音がしたと思ったら、男の木刀がシノブの目の前で止まっていた。

速い。

やっぱり、手加減していた?

「俺は、その手の冗談は好きじゃない。行くのは俺の仕事部屋だ」

「冗談っすよ」

シノブは笑って誤魔化す。

男は木刀を引っ込めるとシノブのお腹に目を向ける。

「傷が酷いのか?」

「大丈夫っすよ」

「お前だったら、後ろに躱していただろう」

確かに、言われてみるとそうかも。

「寸止めをしてくれると信じていたっすよ」

そう言われると、シノブなら見極めるかも?

どっちが正しいのかな。こればかりはシノブ本人にしか分からないことだ。

「そういうことにしておこう」

男は歩き出し、壁の端にある練習用の武器が並んでいる場所に木刀を片付ける。

わたしも、それにならい、持っている木刀を片付ける。

「さっき名を名乗ったが、俺はサタケ。第5隊長をしている。好きに呼んでくれ」

「わたしはユナ。わたしのことも好きなように呼んでいいよ」

「ちなみに、わたしはシノブっす。よろしくっす」

わたしとサタケさんは顔を見合わせるとため息を吐く。

「こっちだ」

「うん」

わたしとサタケさんは歩き出す。

「酷いっす、無視をしないでほしいっす。自己紹介をしただけっすのに2人とも酷いっす。待ってくださいっす」

シノブが追いかけてきて、わたしの横に並ぶ。

わたしたちはサタケさんが事務仕事をする隊長室にやってくる。

事務仕事をする部屋ってこともあって、室内には本棚などが並んでいる。

甲冑とか刀が飾ってあるのを期待していたんだけど、なかった。少し残念だ。

「適当に座ってくれ」

シノブが座布団を用意してくれて、わたしとシノブは座布団の上に腰を下ろす。

「シノブ、城下街と言っていたが、どのあたりだ」

サタケさんは城下街と思われる地図をわたしたちの前に広げる。

シノブはジッと見て、指さす。

「このあたりっすね」

「この辺りの調査をさせよう」

「サタケさんのほうはなにか情報を掴んでないっすか?」

「ないと言いたいが、スリ師が斬られた」

「それって妖刀を持っている人物に殺されたってことっすか?」

「現状では分からない。ただ手首と首を綺麗に斬られていたそうだ」

首を斬られたってことは死んだってことだよね。

スリとはいえ、なんともいえない気持ちになる。

「一流の剣士なら、同等のことができる。でも、妖刀の可能性も捨てきれない。だから、可能性の一つとして調べさせている。目撃者が見つかれば、分かるだろう」

「そうっすね」

「俺のほうでは妖刀が盗まれたあとに、刀で起きた殺傷事件を中心に情報を集めている」

確かに、刀で起きた事件でも妖刀とは限らない。

そのあたりの情報の精査は難しいかも。

「ちなみに、それって、どこの辺りで起きたっすか」

「この辺りだ」

サタケさんは城下街の地図を指さす。

シノブが指したところと離れている。

「わたしが会った人物と同じっすかね?」

「分からない。シノブが見た人物は?」

「男性、年齢は20代か30代ぐらい。服装も目立った特徴はなかったっす。夜中ってこともあって、暗かったっすから、他に分かる特徴はないっす」

「それじゃ、なんで妖刀って分かったの?」

「夜中に刀らしき物を手に持って一人で歩いていたっす。声をかけて確認するか、応援を呼ぶか、どうするか悩んだっす。後者を行えば見失うっすから、前者を選んだっす」

確かに、その場を離れたら、見失う。

2人で行動していたら、片方が応援、片方が尾行もできたかもしれない。

「それで、声をかけたっす。男はわたしを見ると斬りかかってきたっす。警戒していたっすから避けられたっすが、あと少し遅かったら首が飛んでいたっす」

シノブは手首を首に当てて、首が斬られる仕草をする。

「警戒をしていたのに、お腹を斬られたの?」

「それはっすね、理由があるっすよ。まずは確認のため話しかけたっす。そしたら、無言で斬りかかってきたっす。そのとき、通りかかった人がいたっす。わたしがそっちに気を取られてしまったっす。その一瞬で斬られたっす。そのあとは防戦一方、逃げたっすよ」

「通りかかった人は?」

「すぐに逃げたっすよ」

「つまり、シノブはその人物が妖刀に操られているように見えたわけか」

「そうっす」

「現状で分かっていることはこんなものか。嬢ちゃんは他に聞きたいことはあるか?」

名前を名乗ったけど、嬢ちゃん呼びらしい。

まあ、サタケさんからしたら、わたしなんて子供だろうし、気にしない。

「う~ん、妖刀が盗まれたところって見ることはできるの?」

見たからと言って、漫画みたいな推理ができるわけじゃないけど、現場に証拠が落ちている可能性もある。

「妖刀の管理されていた部屋の確認許可は出せない。別に嬢ちゃんに意地悪するために言っているんじゃないぞ」

「他にも妖刀などが置かれているっすから、立ち入りが禁止されているっす」

サタケさんを擁護するようにシノブが理由を付け足す。

「そんなに危険なの?」

「本来、妖刀は封印されているから危険ではない。だが、妖刀が管理されていた部屋は争った跡があり、封印が解けている妖刀もある」

「争った跡があるの?」

「調べた者によると、盗みに入った者は2人以上。妖刀を手にした者が取り憑かれて、仲間を攻撃したのではないかと考えている」

だから、盗まれた妖刀の数も把握できていないわけか。

しかも、妖刀に操られる可能性もあるから、片づけも進んでいないと。

クマ装備があるわたしだったら、操られない可能性もあるけど、それを証明する手段はないので、頼むこともできない。

「だから、今は慎重に片付けが行われている。そっちの情報はスオウ王からの報告待ちとなっている」

確か、スオウ王の部屋に入ったとき、サタケさんもスオウ王に盗まれた妖刀の数と状況を聞いていた。

「せめて盗まれた妖刀の数だけでも判明してくれると助かるんだが」

「今は、盗まれた3本を取り戻すっすよ」

「その盗まれた妖刀の名前は判明しているんだよね。えっと……」

「妖刀赤桜、妖刀風切、妖刀馬鉄っす」

シノブが答えてくれる。

「妖刀赤桜、血塗られ、血を好む。妖刀風切、軽い刀で、多くの人を切り裂いた。妖刀馬鉄、最強の刀を追い求めた鍛治職人の刀だっけ?」

「よく覚えているっすね」

まあ、その手の話は嫌いじゃないから、なんとなく覚えてしまった。

「それで、その妖刀についての話はあれだけなの?」

「わたしも詳しいことを知っているわけじゃないっす。ほとんどが言い伝えっす」

「そのあたりのことは調べさせている。分かり次第、共有しよう」

「なにか、優しくない?」

気持ち悪いんだけど。

あれだけ、喧嘩をふっかけてきて。

「認めただけだ。ジュウベイを倒し、サクラ様を救い、この国を救ってくれたことを」

「そのことは……」

「詳しいことは知らされていない。スオウ王からも調べるのは禁止されてる。ただ、情報を持っている者なら分かっている。それが事実なのか、半信半疑だったってところだ」

「あなたも半信半疑だったってこと?」

「この目で見ていないからな。自分の目で見ないと信じられないこともある。嬢ちゃんは俺に勝った。実力を示した。それだけで十分だ」

「よく、こんな格好をした人物のことを信用できるね」

わたしは自分の格好を見る。

「そのことは嬢ちゃんが、この国に来たときから知っている。だから、今さらだ」

自分は相手のことを知らないのに、相手は自分のことを知っているのは不愉快だね。

でも、ジュウベイさんと戦い、勝ったのも事実だし、大蛇を倒したのも事実だ。

こればかりはしかたない。

まあ、新しい情報が入れば、教えてくれると言う言葉を信じよう。