軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

771 クマさん、鉱山に向かう

わたしたちは生き残っている他の人たちに会うため鉱山に向かうことになった。

「家が……」

わたしがクマハウスをクマボックスにしまうとボラードさんとリーゼさんは驚く。

「持ち運びができる家なんだよ」

「だから、道の真ん中に家があったんですね」

「でも、こんな大きな家が入るアイテム袋を……」

不思議そうに白クマパペットを見ている。

わたしは白クマパペットをパクパクさせる。

「それじゃ、2人はくまゆるに乗って」

「くぅ~ん」

くまゆるは名前を呼ばれて返事をする感じに鳴く。

「クマに乗って行くんですか?」

「そのほうが速いし、楽だからね」

わたしとカガリさんはくまきゅうに乗る。

くまきゅうに乗るわたしたちを見た二人は恐る恐るくまゆるに近づく。

「怖くないから大丈夫だよ」

「は、はい。その、くまゆるちゃん、よろしくお願いします」

「よろしく頼む」

「くぅ~ん」

くまゆるは鳴くと腰を下ろす。

「もしかして、言葉を理解しているんですか?」

「うん、理解しているよ。だから、怖がったりすると悲しむし、悪口を言えば怒るよ」

「ユナさんのクマは賢いんですね」

ボラードさんとリーゼさんは恐る恐るだけど、くまゆるに乗る。

「それじゃ、道案内お願いね」

「はい。あちらに向かってください」

リーゼさんが指さす方向へ、くまゆるとくまきゅうは走り出す。

わたしたちは街を抜け、鉱山に繋がる道を駆けて行く。

街から離れて行くと、氷は無くなり普通の風景が現れる。

「こっちは影響はないみたいだね」

「はい。だから、わたしたちは助かりました」

「ですが、街にいた者は……」

凍ってしまった。

緩やかな山道を通り、鉱山に向かう。

しばらくすると、ごつごつした岩が多くなる。

「もうすぐです」

リーゼさんの言葉どおりに開けた場所にでる。

いくつかの作業場と思われる小屋と山の中に入る穴がある。その小屋の近くに年配の男性が立っている。

「ボラードさん!? みんなボラードさんとリーゼちゃんが帰ってきたぞ!」

年配の男性は小屋に向かって声をかける。

小屋の中から人が出てくる。

ボラードさんとリーゼさんが言っていた、生き残った6人だ。

年配の男性が三人、女性が一人、40歳ぐらいの男性と女性が一人。計6人だ。

「ボラードさん、そのクマと女の子たちは!?」

「街の光の原因は彼女たちだった。このクマは彼女たちに危害を与えなければ大丈夫だ」

ボラードさんはみんなを安心させるためにくまゆるに優しく触れる。

「そ、そうか」

「嬢ちゃんたちは、どこから来たんだ。他の人はいないのか」

「わたしから説明する」

ボラードさんとリーゼさんは、わたしたちのことを説明する。わたしとカガリさんの格好は曖昧に説明してくれたので、深くは追求はされなかった。ボラードさんとリーゼさんが説明する間、何度もジロジロと見られていた。

「本当に食べ物を」

「魚じゃなくて」

「パンとか肉も野菜もあるよ。どこかに食べる場所ってある?」

「それなら小屋の中にある」

小屋は老夫婦が鉱山の管理人をしていたときに住んでいた小屋だと言う。

くまゆるとくまきゅうには外で待ってもらい、わたしたちは小屋の中に入る。

小屋の中は小綺麗に片付いている。

テーブルは付け足された感じで、椅子は8個あった。

みんなで助け合って、生きてきたのが分かる。

食べ物の取り合いとか、いがみ合ってもおかしくないのに。

わたしはテーブルの上にパンを出す。

「バランさんたちが、たくさん食べるといい」

年配の男性がボラードさんと同じぐらいの男性に向かって言う。

「そうじゃな。いつも、危険な中、わしらのために魚を捕りに行ってくれている」

老夫婦の息子は漁師だったとのことだ。

街が氷漬けになってからは、海に行って、魚を釣っていると教えてくれる。

「そんなことはない。みんなだって、洞窟の奥まで行って、水を運んで来てくれているだろう」

「そういえば、水は?」

「川があったのですが、ドラゴンが山の登頂に住み始めて、凍ってしまっています。鉱山の穴を掘っていたときに湧き水が出た場所があるので、今はそこから水を運んでいます」

湧き水?

地下水ってことかな?

わたしは食べ物がたくさんあることを証明するために、テーブルに食材を出す。

「パンだけじゃなく、他にもたくさんあるから、気にしないで大丈夫ですよ」

「肉だ!」

「こんなにいいのか?」

「たくさんあるから、大丈夫だよ」

ウルフの肉だ。未だに在庫は山ほどある。

「それじゃ、わたしが焼くわ。肉を調理するのは久しぶりね」

年配の女性が嬉しそうに肉を持って調理場に移動する。

「お義母さん、わたしも手伝います」

確か、息子夫婦と言っていたから、息子さんのお嫁さんかな。

2人は調理を始める。

みんな、嬉しそうにパンや肉、それから野菜を食べる。

「美味しい」

「もう、食べることはできないと思っていた」

「嬢ちゃんたち、ありがとう」

「そういえば、リーゼちゃんの服は?」

リーゼさんの服装が変わっていることに気づいた男性が尋ねる。

「ユナさんにいただきました」

「あと気になっていたが、2人とも小綺麗になっていないか?」

「その、お風呂をいただきました」

「お風呂!?」

全員が驚く。

国によって違うけど、お風呂文化があれば、入りたいと思う。

みんなは羨ましそうにしている。

クマハウスのお風呂に入ってもらってもいいけど、少し考える。

「ボラードさん、ちょっと周辺を見てきていい?」

「それは構いませんが、どうしてでしょうか?」

「お風呂を作ろうと思って」

わたしの言葉にみんな驚く。

「それなら、わたしが案内します」

「妾も行こう」

わたしはカガリさんとリーゼさんと小屋を出る。

外にいたくまゆるとくまきゅうが近寄ってくる。

「本当にお風呂を作るのですか?」

「お風呂があったほうがいいでしょう?」

「そうですが」

クマの転移門で他の街に行けば必要はなくなるけど、みんなの話を聞かないと、今後どうしたらいいか分からない。

別にお風呂を作るぐらい手間がかかるわけじゃない。

魔法でちょちょいっと作れる。

周囲を見る。

ちょっと広くて、洞窟の近くがいいかな。

「リーゼさん、このあたりに作っても大丈夫?」

洞窟の右側辺りに開けた場所がある。

「大丈夫ですが、どうやって作るんですか?」

「こうやって作るよ」

わたしは許可をもらった場所に移動すると地面に魔力を流す。土が盛り上がり、寝そべった大きなクマが出来上がる。

チビクマハウスって感じだ。

「本当に、お主はクマが好きじゃのう」

「話したか覚えていないけど、わたしにはクマの加護があって、クマにすると強度が増すんだよ」

ドラゴンが来ても大丈夫かは分からないけど、凍ることはない。

「凄い。こんな大きなものが一瞬で。魔法使いなら、誰でもできるのですか?」

わたしは他の魔法使いのことは知らないのでカガリさんを見る。

「カガリさん、どうなの?」

「お主は、本当に妾に聞くのう」

「わたしより、詳しいと思うから」

「結論を言えば、魔力が多い魔法使いならできる」

「やっぱり、魔力量なんですね。わたしに魔力が多ければ、お母様に会いに行けるのに」

「お母さん?」

そういえば、母親の話は聞いていない。

「お母様とお姉ちゃんが凍っています。でも、家が凍っているので、会いにいけてません。前に一度、ベンデさんが頑張ってドアを溶かしてくれましたが。大変なので、頼んでいません」

ベンデさんって、お爺ちゃんの一人かな?

しんみりとしてしまった空気を変えるために、わたしはお風呂作りを再開する。

寝そべっているクマの横っ腹にドアを付け、中に入る。

クマのお腹の中に入ったわたしは中央に2mほどの幅の部屋を作る。部屋と言っても通路みたいなものだ。

その左右にドアを付ける。

左右で男風呂と女風呂に分ける。

そして、シャワーと浴槽を作り、火と水の魔石を取り付けて完成する。

ちなみにクマの頭側を女風呂、尻尾側を男風呂とした。

途中でカガリさんも手伝ってくれたので、あっという間に完成した。

「後で、みんなに入ってもらって」

「ユナさん、カガリちゃん、ありがとうございます」

わたしたちがクマ風呂の外に出ると、ボラードさんたちがクマハウスを見ていた。

「お父様、凄いんですよ。ユナさん、魔法でクマの家を作ったと思ったら、あっという間にお風呂を作っちゃったんです」

リーゼさんは興奮気味に説明する。

「このクマ、お風呂なのか?」

「はい。中に入って、クマの頭が側が女風呂、尻尾側が男風呂になっています」

リーゼさんは、わたしの代わりに説明してくれる。

「水は?」

「水と火の魔石を使っているから、お湯がでるようになっているよ。さっき、お湯をためて置いたから、しばらくしたら入れるよ」

全員、わたしとリーゼさんの言葉を確認しに、クマの家に入っていく。

そして、しばらくすると出てくる。

「本当にお風呂だ」

「本当に入っていいの?」

「うん、作ったから、入ってくれると嬉しいよ」

みんな、喜び、クマの建物に中に入っていく。

先にお風呂に入ったボラードさんとリーゼさんだけが残る。

「ユナさん、なにからなにまでありがとうございます。それで、確認なのですが、ユナさんたちは、これからどうするのですか? ユナさんたちがどうやってここに来たのか分かりません。これほどの魔法を使えるってことは、わたしたちが想像できない方法で来たと思います」

わたしたちが曖昧にしてきたところを、ボラードさんは感じとっていたみたいだ。

「先ほど、みんなで話し合いました。もしよかったら、この子だけでも、連れて行っていただけないでしょうか?」

ボラードさんはリーゼさんの背中を押す。

「お父様!」

「お前は、まだ若い。残る必要はない」

「お父様だって若いです。それにバランさんだって、他のみんなだって」

ボラードさんは首を横に振る。

「バランさんは両親を置いて離れるつもりはないとのことだ。ベンデさんたちも仲間が眠る土地を離れない、死ぬまで見守ると言っている」

「お父様は」

「これでも領主だ。最後まで行く末を見守るつもりだ。ドラゴンが立ち去り、氷が溶けたとき、街にいないとダメだからな。それが最後の領主としての役目だ」

リーゼさんの頭に優しく手を置く。

ドラゴンが居ついて三年。いつ立ち去るかわからない。

明日かもしれないし、数年後、何十年後、ボラードさんが亡くなった後かもしれない。

でも、残ると言う。

「それに眠る妻と娘を置いて、離れることはできない」

「わ、わたしも残ります!」

「わたしを困らせないでくれ」

お互いに一歩も引かない。

その親子の間にカガリさんが口を挟む。

「お主たち待て、妾たちにも事情はある」

カガリさんがわたしを見る。

クマの転移門を使うかどうかの判断はわたしに任せられている。

「そうだね。わたしたちは、もう少し街にいるから、よく考えて」

「はい、分かりました」

リーゼさんたちを見捨てるつもりはない。

だからと言って、街に残ると言っている者を無理矢理に連れて行くつもりもない。

酷いと思われるかもしれないが、無理矢理に連れていっても、最後まで面倒を見ることはできない。

生活するにしても、その土地で生きていくにしても、いろいろなものが必要になる。

難しい問題だ。