軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

770 クマさん、話を聞く その2

食べることに夢中になってる2人を見ながら、これからのことを考える。

ドラゴンか。

「カガリさん、そのドラゴンについて、何か知っていることってある?」

「お主、妾のことをなんでも知っておると思っていないか?」

「わたしよりは知っていると思っているよ」

異世界から来たわたしより、この世界に住んでいるカガリさんのほうが詳しいと思う。それに見た目は幼女でも、何百年も生きている。

「まあ、話を聞く限り、おそらく氷竜じゃろう」

「氷竜?」

「皮膚は青白く、触れたものを凍らせる、危険な生き物じゃ」

「カガリさんは見たことがあるの?」

「あるわけがなかろう。氷竜は人が住まぬ山奥に住んでいると言われておる。人里に姿を見せることはない」

氷竜がいるってことは火竜とか、風竜とかもいるのかな。

そんな魔物討伐の依頼は見たことがないし、遭遇率は低いんだと思う。

でも、たったの一体で街を凍らせるって、どれだけ強いんだか。

一体だよね。

「確認だけど、そのドラゴンって一体だけだよね」

わたしは心で思ったことを尋ねる。

「え、ふぁい。……一体しか見てません」

リーゼさんは口に入れていたパンを飲み込み、答えてくれる。

一体でよかった。

「それで、2人はどうして、こんな早朝に街に来ていたの?」

わたしとカガリさんは夢の時間だった。くまゆるとくまきゅうが起こしてくれなかったら、もっと寝ていた。

「それは昨日の夜に、街に灯りが見えたからです」

「灯り?」

「このクマの家から漏れた灯りじゃろう」

昨日、灯りを付けて、カガリさんと遅くまで話し合っていた。

そのとき、クマハウスから漏れた灯りが、見えたみたいだ。

「それで、街に誰かがいるんではないかと考えたわたしたちは話し合い、お父様とわたしが確認しに行くことになりました」

そして、街を調べていると、道の真ん中にわたしのクマハウスがあって、どうしようか窺っていたらしい。

「それで、聞いていいのか、分からないのですが」

「答えられることなら、答えるよ」

「どうして、ユナさんはクマの格好をしているのですか?」

「…………」

「…………」

沈黙の時間が流れる。

「それは、こやつがクマ好きなだけじゃ」

沈黙を破り、答えたのはカガリさんだった。

「クマ好き?」

「この家を見ても分かるじゃろう。そして、連れているクマも」

カガリさんは家を見てから、くまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「さらには、クマのぬいぐるみまでもっておる。ただのクマ好きだから、深くは追及してやるな」

「あ、はい。ごめんなさい」

なぜか、リーゼさんから謝罪を受ける。

「それと、カガリさんの服装も見たことがないのですが」

和服を知らないってことは和の国を知らないってことかな?

地名は知っている可能性はある。ただ、交易が無いだけかもしれない。

でも、話すとややこしいことになるので、答えるつもりはない。

「妾の服装は、遠く離れた国の服じゃ、こちらも気にしないでくれ」

「あ、はい。分かりました」

話している間に、ボラードさんとリーゼさんは食べ終わる。

「まだ、聞きたいことがあるけど、2人ともお風呂に入って来て」

「お風呂ですか。もしかして、わたし臭いですか? タオルで拭いているんですが」

リーゼさんは申し訳なさそうにする。

「違うよ。こんな状態じゃ、お風呂も入れていないと思ったから」

お茶の準備をするときに、お風呂のお湯の準備はしておいた。

準備と言っても、魔石に触れてお湯を出すだけだ。

今頃、お湯が張っているはずだ。

「いいのですか?」

リーゼさんは入りたそうに父親のボラードさんを見る。

「ありがたく使わせていただきます。リーゼ、入らせてもらいなさい」

その言葉にリーゼさんは嬉しそうにする。

わたしはリーゼさんをお風呂場に案内する。

「そこにあるタオルと石鹸は自由に使っていいからね」

「ありがとうございます」

「それじゃ、ゆっくり入ってきてね」

わたしは扉を閉め、カガリさんがいるところに戻る。

「お風呂、ありがとうございます。あの子には苦労させてばかりで、お風呂も入らせてやることもできませんでしたので」

「ううん、気にしないで」

父親として、苦労してきたんだと思う。

お風呂ぐらい、なんでもない。

「そういえば、どうして、娘さんと2人で街に? 他にも6人いるんでしょう」

「鉱山を管理している老夫婦。休みだったので会いに来ていた息子夫婦。それから鉱山の責任者たちですが、わたしたちと息子夫婦以外は、お年をとっていまして」

年寄りに無理をさせるわけにはいかないなら、来ることができるのは息子夫婦とボラードさんたちだけになる。

「それと、わたしがこの街の領主でもあります。もし、人がいましたら、交渉する立場でもあります。あの子は、わたしのことが心配で付いて来てくれました」

父親思いの女の子だ。

「それで、やって来たら、クマの家があったわけじゃな」

「あ、はい」

それで、わたしたちに会ったところに繋がる。

「今までに、誰かが街に来たことはなかったの?」

「この街と交易がある船が来たことがあります。船が来たことを知ったわたしはすぐに街に下り、船場に向かいました。ですが、再びドラゴンが街に下りて来ました。氷漬けになった街とドラゴンを見た船は、ドラゴンを恐れて遠ざかって行きました。それからしばらくは船が来ることが何度かありましたが、それも数ヶ月後には来なくなり、それ以降、船を見ることはありません」

「見捨てられたのじゃな」

「…………」

海からでも望遠鏡を使えば確認できる。

凍った街、さらにはドラゴンの確認。生きている人間がいないと判断され、見捨てられた。

「誰もいないと思ったんでしょう。仕方ありません」

「狼煙とかあげて、助けを求めればよかったんじゃ」

「それは考えましたが、当時のわたしたちはドラゴンに気づかれてしまうことを恐れ、悩んでいるうちに船は来なくなってしまいました」

ドラゴンが反応する可能性もある。

戦う手段も逃げる手段もないボラードさんたちには危険を冒す可能性がある決断はできなかったかもしれない。

沈黙が流れていると風呂場に繋がるドアが開き、リーゼさんが出てくる。

「お風呂ありがとうございました」

ボサボサだった髪は綺麗なロングストレートになっていた。

ただ、服は汚れたままだ。

「お父様も入ってきて、とても気持ちよかったよ」

「そうだな。それでは、わたしも入らせていただきます」

ボラードさんはリーゼさんとすれ違うように、お風呂場に向かう。

「リーゼさん、服ってどうしていたの?」

「服は鉱山に残されていた服を着ています。鉱山の人が着ていたので汚れていましたが、生きるために着るしかありませんでした」

だから、サイズがあっていないのか。リーゼさんにしては大きな服を着ていた。

「当時のわたしは嫌がって、お父様を困らせました。悪い子供です」

三年前、12歳ぐらいの女の子が鉱山で働く男の物の服を着るのは抵抗があったと思う。まして、領主の娘さんだ。当時は良い服を着ていたと思うし。

「カガリさん。少し、リーゼさんをお願いできる?」

「なんじゃ?」

わたしはカガリさんに小さい声で耳打ちをする。

「リーゼさんの服を用意してくるよ」

カガリさんはリーゼさんを見て、すぐに理解してくれる。

「早く戻ってくるのじゃぞ」

「うん」

わたしは倉庫にあるクマの転移門を使って、クリモニアに移動する。

そして服屋に向かっていると、名前を呼ばれる。

「ユナお姉ちゃん!」

声がしたほうを見るとフィナがいる。フィナは小走りで駆け寄ってくる。

「ユナお姉ちゃん、どこに行くの?」

「防寒着を買いに行くところだよ」

「防寒着ですか? 寒いところに行くの?」

わたしは歩きながら、フィナに説明する。

カガリさんと一緒にタールグイに行っていたら、陸を見つけたこと。

そこは寒く、防寒具を必要としている女の子がいることを。

「そうなんですね。それなら、こっちの店がいいよ」

わたしはフィナの案内で店に向かう。

「それじゃ、わたし、お母さんに頼まれた買い物があるから」

「ありがとうね」

フィナは手を振って、去って行く。

わたしは店の中に入り、男の店員さんに声をかける。

「すみません。15歳ぐらいの女の子向けの可愛い防寒具ください」

「うん? クマの嬢ちゃん?」

店員さんが、わたしを見て反応する。

どうやら、わたしのことを知っているみたいだ。

でも、わたしは店員さんのことは知らない。

これって、有名人になった気持ちなのかもしれない。

「女の子が着る可愛い防寒着ってあります?」

再度尋ねる。

「嬢ちゃんが着るのか?」

「わたしじゃないけど、同じぐらいの女の子だよ」

少しだけ、わたしより背が高いことを伝える。

店員さんは数着、防寒着を見せてくれる。

白い綺麗な防寒着があったので、それにする。

派手なのは目立って困るかもしれないし。

それから、首に巻くマフラーなども購入する。

こんなものでいいかな。

わたしはお礼を言って、店を出る。

そして、そのまま、クマハウスに戻り、転移門を使って、氷の街に戻ってくる。

「戻ってきたか」

カガリさんが、わたしを見て、安堵する。

30分ほどで戻って来たけど、心配させたみたいだ。

ボラードさんはお風呂を出て来ており、椅子に座っている。

「ユナさん、どこに行っていたんですか?」

「ごめん、ちょっと倉庫で、これを探していたんだよ」

クリモニアで買ったとは言えないので、倉庫で探していたってことにする。

わたしは先ほど買った防寒着をテーブルの上に出す。

「これは……」

「よかったら着て」

「いいのですか?」

「わたしは、このクマの服が温かいから、着ることはないから、着てくれると嬉しいかな」

せっかく買って来たんだし。

「ありがとうございます」

リーゼさんは嬉しそうに防寒着を手にする。

「風呂場で着替えるといいよ」

リーゼさんは風呂場に移動し、着替えて戻ってくる。

うん、似合っている。

白い防寒着にズボン。首には黄色のマフラー。

「温かいです」

リーゼさんは嬉しそうだ。

買って来てあげてよかった。