軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

772 クマさん、鉱山の中に入る

今後のことは、もう少し話し合って決めることになり、わたしは鉱山の中を見させてもらうことにした。

お風呂以外にもなにかできることがあるかもしれない。

みんなが、ここに住み続けるにしても、他の街に行くにしても、現状の改善は必要だ。

「鉱山の中ですか? 構いませんが、なにもありませんよ」

「小屋があるけど、鉱山の中で暮らしているんだよね?」

「基本的に寝るときだけです。昼間はみんなそれぞれの仕事がありますから外にいることが多いです」

それはそうだ。

衣食住の管理、洗濯だってするだろうし、食材集めもしないといけない。

なにより、太陽の光を浴びないと体内時計が狂い、体調を壊す。

洞窟に篭っているだけでは生きていけない。

「わたしは、ここでみんなを待っているから、リーゼはユナさんたちを案内してあげなさい」

「はい」

お風呂から出てくるのを待つボラードさんを残し、わたしとカガリさんはリーゼさんの案内で鉱山の中に入る。

その後ろをくまゆるとくまきゅうが付いてくる。

坑道の中は暗い。

光魔法を使おうと思ったとき、隣で光が灯る。

いつの間にかリーゼさんがランプを持っていた。

リーゼさんの持つ光の魔石が入ったランプが坑道を照らす。

「坑道の中には光の魔石は設置していないの?」

ゴーレム討伐をした鉱山には光の魔石が設置してあり、坑道を照らしていた。

「設置してありました。ですが、新しい魔石を手に入れることも出来なくなりましたので、鉱山で使っていた光の魔石は全て回収しました。そして、必要なときだけ使うようにしています」

当たり前だけど、物を使えば減るだけだ。不要な場所に貴重な魔石を使う必要はない。

そうやって物を大切に使いながら三年間、暮らしてきたってことだ。

わたしは光の魔法は使わず、リーゼさんのランプの光だけで坑道の中に入る。

鉱山に入って、しばらくすると扉を見つける。

あとから取り付けた感じだ。

扉を開け中に入る。

リーゼさんが壁にある魔石に触れると、天井に設置してあった光の魔石が光り、部屋を照らす。

「ここでみなさんと寝ています」

ベッドが8個、置いてある。本当に寝るだけの場所みたいだ。

この場所で三年間も……

「辛かったじゃろう」

わたしが心で思ったことをカガリさんが口にする。

「泣いてばかりで、お父様やみなさんを困らせていました」

今が15歳としたら、当時は12歳だ。

母親や親しい人を亡くし、大切な物は凍り、全てを無くした。

当時12歳の女の子が泣かないほうがおかしい。

いや、そんな状況になれば大人だって泣くと思う。

「そんなわたしを、みなさんがやさしく慰めてくれました」

リーゼさんは懐かしそうに当時の話をしてくれる。

わたしには想像ができないほど、大変な暮らしだったと思う。

どんな言葉をかけていいか分からずにいるとカガリさんがリーゼさんに近づき、手に触れる。

「カガリちゃん?」

「何度も泣いたことじゃろう。それを責める者はいない。お主は、全てを乗り越えて今があるんじゃ。誇るといい」

「ふふ、カガリちゃんって、お父様と話していたときにも思っていたけど、年上の人と話しているみたい」

正解です。

見た目は幼女でも、中身はうん百年生きてるお婆……。

そう心の中で思いながらカガリさんを見ていたら、カガリさんがわたしに目を向ける。

「ユナ。お主、変なことを考えていないか?」

するどい。

「なにも思っていないよ」

疑うような目で見てくるので、ゆっくりと視線を逸らす。

「わたし一人じゃダメだったと思う。お父様や、みんながいてくれたから、今まで頑張れました」

「それでも、お主が強いことには変わらぬ」

「ありがとう」

寝台に目を向ける。布を縫い合わせたようなものがある。掛け布団だと思う。

わたしは寝台の上に予備の布団を出す。

「布団?」

「使って」

「いいんですか?」

リーゼさんは布団に触りながら尋ねる。

「予備だから、気にしないで」

「ありがとうございます」

こんな、些細なことでもリーゼさんは嬉しそうだ。

寝やすいように改装を終えたわたしたちは、寝室を出る。

「他には食料を保管する倉庫もあります」

倉庫を見させてもらうと氷が置かれ、魚が置かれていた。

「この氷は?」

「街から持ってきた氷です」

「大丈夫なの?」

「少量でしたら、大丈夫です。なので、食材の保存に使わせてもらっています」

「それじゃ、肉も置いておくから」

わたしはウルフの肉を魔法で冷凍し、肉が長持ちするようにする。

冷凍すれば、あとで解凍すれば、食べることができる。

わたしは冷凍庫を作り、そこに肉を仕舞っていく。

クマの氷を作り、強化しておく。

それから、持っている野菜も出しておく。

助かった人数が少なかったから、争いが起きなかったのかもしれない。

人が多ければ、衣食住が大変なことになる。

10人、100人、1000人。少なければ、少ないほど、必要なものも少なくて済む。多ければ、その分、衣食住の量が必要になる。

人が多ければ、奪い合う争いが起きてもおかしくなかった。

でも、人数が多ければ、できることも多い。

助かった人数が少なかったことが良いことなのか、悪いことなのかの判断はできない。こればかりは、起きてみてから分かることだ。

「氷が足らなかったら言って、出してあげるから」

「えっと、それじゃ、お願いしてもいいですか?」

クマの氷を作り、置いていく。

クマの氷なら、簡単には溶けないと思う。

そう考えると、氷竜の氷と似ているかもしれない。

「ふふ、可愛いです」

リーゼさんはクマの氷を見ながら、微笑む。

「狐のほうが可愛いぞ」

カガリさんは争うように氷の狐を作る。

氷魔法、難しいはずだけど、カガリさんは簡単に作り上げる。

「カガリちゃんも魔法が使えるのですか?」

「そうじゃが」

「でも、子供は……?」

「妾は、普通の子供とは違うから、その辺りは気にしないでいい」

まあ、わたしのクマの転移門と同様に、妖狐のことは言えないからね。

リーゼさんも何かを感じ取ったのか、それ以上の言及はしてこなかった。

倉庫を後にしたわたしたちは、湧き水が出ているところを見せてもらうことにした。

「中は入り組んでいて、迷子になりますから、わたしから離れないでくださいね」

坑道はリーゼさんが持つランプだけが照らす。

お世辞にも明るいとは言えない。

毎日、こんな暗い道をランプの光だけで通っているのか……

「もし、わたしと離れて道に迷ったら、これを見て戻ってきてください」

リーゼさんは通路の壁をランプで照らす。

壁には「出口」と書かれて「→」矢印が書いてあった。

「昔、みんなのお手伝いをしたくて、1人で水を運ぼうとしたんです。でも、道に迷ってしまったんです。わたしは泣くことしかできませんでした。でも、みんなが探しに来てくれました」

優しい。

「そして翌日、お父様たちが、迷わないようにこれを作ってくれたんです」

「みんな優しいね」

「はい」

なんとかしてあげたいと思う。

「ここです」

湧き水は歩いて10分ぐらいの場所にあった。

思っていたよりも近い。

でも、水を運んでの10分は遠い。

「竹でもあれば、水を流すんじゃがな」

流しそうめんじゃないけど。竹は水を流すときに使われる。

湧き水が出ている位置はリーゼさんの頭ぐらいの高さにある。

確かに、斜行を作れば流すことができそうだ。

でも、それは竹でなくてもいい。

「それなら、魔法で作れば?」

「確かにそうじゃな」

わたしとカガリさんは話し合い、魔法で石の筒を作り、鉱山の出口近くまで繋げることにした。

湧き水が出ている場所に受け皿を作り、そこから魔法で作った石の筒に流れるように調整する。

筒を作るのは簡単だけど、傾斜を作るのが難しい。

角度を上げると、水が流れなくなるし、下げすぎると、これ以上流れなくなってしまう。

もちろん、上に流す方法もあるけど、面倒くさい。

わたしは滑らかに水が流れるように筒を壁に設置していく。

そして、寝室や倉庫がある場所までやってくる。

「このあたりでいいかな?」

「その壁際でお願いします」

リーゼさんの指示でカガリさんが溜め池みたいなものを作ってくれる。

わたしはそこに流れるように筒を伸ばす。

石の筒から水が流れ落ち、カガリさんが作った溜め池に落ちる。

「これで、いつでも水を使うことができます。ユナさん、カガリちゃん、ありがとうございます」

話していると、洞窟の外からボラードさんたちがやってきた。

「リーゼ、なにを騒いでいるのだ」

「ユナさんとカガリちゃんが、湧き水をここまで引っ張ってくれたんです」

ボラードさんたちはわたしたちが引いた湧き水を驚くように見ている。

「それだけじゃないんですよ。ベッドも、倉庫も、使いやすくしてくれました」

ボラードさんたちは確認しにいく。

それを見たボラードさんたちに感謝された。