軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

766 クマさん、街を調べる

わたしとカガリさんは街の中を歩く。

建物の外には誰もいない。

みんな家の中で凍っている。

「この街の近くに、人が住んでいる場所があったりしないかな」

もし、人がいれば情報を得ることができる。

「そうじゃのう。なら、上から周囲を確認してくる」

カガリさんは、そういうと体が浮かび上がり、空高く飛んでいく。

やっぱり、空が飛べるのは便利だよね。

空を飛ぶのは少し怖いけど、クマ装備があれば落ちても大丈夫そうだし、飛空魔法がほしいものだ。

上空で、キョロキョロと周囲を見るカガリさん。

しばらくすると、降りてくる。

「なにか見えた?」

「ここは巨大な島かもしれぬ」

「島かも?」

言い方が曖昧だ

「この位置からからだと、山の向こう側が見えん。じゃが山以外は海に囲まれておる」

つまり、島かもしれないが、半島の可能性もあるみたいだ。

「それで、他の人が住んでいそうなところはあった?」

カガリさんは首を横に振る。

「山の向こう側は分からんが、見える範囲にはなかった。山の反対側は楽に行き来はできぬじゃろう。回り込む道もなかったから可能性は低いじゃろう」

つまり、情報を入手することはできないってことだ。

「それじゃ、この街に来る方法は、船を使って来るしかないってこと?」

「現状では、そうなるな。山にトンネルを掘るバカがいない限りはな」

なんだろう。遠回しに、わたしがバカにされているような。

でも、カガリさんはクリモニアとミリーラの間にある山に、わたしがトンネルを掘ったことは知らないはずだし、被害妄想かな。

「でも、海があるから他の交易が……」

「ないとは言わん。だが、その交易先がどこか分からん。さらに言えば、交易があったとしても、この現状を見て見捨てられた可能性が高い」

街と人が凍り、助け出すことができないなら放置するしかない。死の街を救う方法はない。

もし、この状態を見れば、自分も同じようになる可能性を考えると思う。

関わらないのが一番だ。

だからと言って、海賊や盗賊は気にしないかもしれない。

でも、家とか壊された様子はないので、泥棒とかには入られていないみたいだ。

海賊や盗賊がいないのか、海賊や盗賊さえも近寄りたいとは思わないのか。

それを現状のわたしが知ることはできない。

「これから、どうするつもりじゃ? 原因を突き止めるのか? それとも、あの玉が光った原因を探すのか?」

どうしよう。

街が凍った原因を突き止める?

その意味は?

誰かに頼まれたわけでもないし、知らない街だ。知り合いもいない。酷いと思われるかもしれないが、わたしには関係ないって気持ちが大きい。

もちろん、可哀想だとは思うけど。

もう一つの「クマの道しるべ」が指したことを調べることだけど、現状だと何をしたらいいのか、全然分からないのも確かだ。

ただ、凍り漬けの街を見ると、この凍り漬けになってしまった街とクマの道しるべに、何か関わりがあるとしか思えない。

理由もなしに、「クマの道しるべ」が凍り漬けの街を示すわけがない。

「もう少し見て回ってみるよ」

「仕方ないのう。それなら、妾も付き合おう」

「ありがとう」

「暇つぶしじゃから、気にするな」

その言葉を素直に受け取る。

凍り漬けの街を一人で探索するのは精神的に辛い。

くまゆるとくまきゅうもいるけど、話し相手がほしいから、カガリさんが付き合ってくれるのは感謝だ。

「それじゃ、情報収集するなら、人が集まる場所に行ったほうがいいじゃろう」

確かに、情報を集めるなら人がいる場所だ。

「酒場?」

「お主、バカか。酒場に行ってどうする。人なんていないぞ。いたとしても、凍り漬けになっている人間だけじゃろう。そんな者から話は聞けぬじゃろう」

ゲームや漫画だと情報収集すると言ったら、酒場だ。だから、そう言葉が出てしまった。

「こういう場合はギルドじゃろう」

「冒険者ギルド?」

「商業ギルドでもいい。まあ、この街にギルドがあるかは分からんが、街を管理をする場所じゃな」

「でも、ギルドに行っても酒場と同じように凍っているんじゃ」

「それは否定はせぬ。だが、こんな状況なら資料とかあるじゃろう」

流石、年の功。

人から聞けないなら、物的資料を探せばいいということだ。

人から聞くだけが、情報収集じゃない。

わたしたちは大きな建物を探すことにした。

街はまるで時間が止まったように静かだ。

建物は凍っているが、朽ち果てたりはしてない。

冷蔵保管されている感じだ。

「どのくらい時間が経っているのかな」

「見ただけじゃ、分からん。そのあたりの情報も調べれば分かるかもしれん」

やっぱり、カガリさんは頼りになる。

「あれはギルドっぽいのう」

カガリさんの視線の先には大きな建物がある。

確かに冒険者ギルドっぽい建物があった。

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは建物の前までやってくる。

他の建物同様、寒さから守るためなのか扉は閉まり、凍り漬けになっている。

カガリさんはくまゆるから降りると扉に近づき、火の魔法で氷を溶かす。

木の部分が少し焦げていたことに気付いたが、黙っておく。

そして、凍っていた扉の氷が溶け、わたしたちは建物の中に入る。建物の中は他の家同様に凍っている。テーブルも椅子も柱も。

「人はいない?」

「いや、一番奥にいる。暖炉じゃろう。あそこに人がおる」

カガリさんのいう通りに、奥のほうに人が毛布にくるまっている。もちろん、氷っている。

「受付には誰もいないね」

「こんな状況じゃ、仕事なんて出来ぬじゃろう」

普通はそうだよね。

大寒波が来ていたなら、仕事どころではない。家に引きこもっているのが普通だ。

日本人だと地震が起きようが、電車が止まろうが、会社に行こうとする。

テレビでひどい満員電車の映像を見たものだ。

学校なら災害が起きれば休みの連絡があるけど、会社とかはないのかなと、いつも思っている。

あれが、社畜って言う人たちなのかもしれない。

社会人でもないわたしも毒されていたかもしれない。

引きこもりのプロとしては、ダメだ。

カガリさんは冒険者ギルド内を調べ始める。

わたしもなにか手がかりがないか、手分けをして調べる。

依頼ボードらしきものがあったので、確認しにいく。

でも、依頼ボードにはなにも貼られていない。

「依頼ボードには、なにもないね」

「依頼がなくなったってことじゃろう」

カガリさんは受付の中に入っている。

「カガリさんのほうはなにか見つかった?」

「見つかったが、確認はできない」

「……?」

どういう意味か分からなかったので、カガリさんのところに移動する。

カガリさんは本棚を見ている。

本棚にはファイルらしきものが並んでいる。

棚にある資料を見れば少しは状況が分かるかもしれない。

でも、カガリさんの言うとおり確認はできそうもない。

本棚は凍ってて、本は取り出せない。

「魔法で溶かす?」

「溶かすには火の魔法が必要じゃ。そして、紙は火で燃える」

カガリさんが言いたいことは分かる。

氷を溶かしても、そのまま紙は燃えるってことだ。

「調整すれば」

「お主ができるなら、やってみるがいい。じゃが、妾がやるとダメじゃ」

カガリさんは机の上にあった凍った紙に目を向ける。

紙は机にへばり付いて取れそうもない。

カガリさんは机にへばり付いている紙に手を置いて、火の魔法を使う。氷が溶けたと思うと、紙も燃えてしまう。

「扉の氷を溶かすときにも思ったが、弱い火では氷は溶けない。ある程度強くないとダメじゃ」

カガリさんが扉の氷を溶かしたときのことを思い出す。扉は少し焦げ付いていた。

「お主も確かめてみるがいい」

わたしは別の机の上にあった紙にクマさんパペットを置く。

そして、火の魔法を使う。

なるべく弱い火の魔法を使う。

氷が溶けない。

魔力を強めに込める。

氷は溶け、紙は燃えてしまった。

火が強すぎる。

でも、弱いと氷は溶けない。

「カガリさん、この氷って」

「普通の氷じゃないじゃろう。妾が違和感があると言ったことを覚えておるか?」

「うん」

そのカガリさんの違和感を信じて進んだら、この氷漬けの街があった。

「その違和感はこの街を覆っている氷から感じるものと同じじゃ」

「それじゃ、この氷は普通の氷じゃないってこと?」

「そうじゃ」

つまり、北国でおきるような異常気象で起きた寒波ってわけではないってことだ。

人為的に起こされたってこと?

魔法陣のことが頭をよぎる。

過去に何度も不思議な魔法陣によって、起こされたことを知っている。

「お湯で溶かすのは?」

「濡れた本を読めると思うか?」

紙がへばり付いて、読めたものじゃない。

失敗すれば、紙を破くことになる。

「さらに言えば、インクが滲んで文字が読めなくなるぞ」

普通はそうだよね。

日本の漫画や小説が水に浸かっても文字や絵は滲まない。

でも、この世界のインクは普通に水に浸かれば滲む。

「これは、いろいろと厄介なことになりそうじゃな」

どうやら、簡単に解決ってわけにはいかなそうだ。