軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

765 クマさん、氷の街を見つける

「お主は、それを見たとき、自分の物じゃと言っていたな」

カガリさんが「クマの道しるべ」を見ながら尋ねてくる。

「よく覚えているね」

「お主以外、触れることができぬ物じゃったからのう。そのときの物が光り、どこかを指している。まるで、お主を導いているかのように」

するどい。

クマ=わたし

クマの道しるべ……わたしが進む道。

だから、これがわたしを導くものだと思っている。

「確認じゃが、その示す先に、なにがあるのかは知っているのか?」

「分からないよ」

わたしが分かるのは、このアイテムの名前が「クマの道しるべ」って名前ってことだけだ。

だから、なにも分からない。

わたしの言葉にカガリさんも納得したのか、「クマの道しるべ」について、それ以上は尋ねてこなかった。

「行くのか?」

わたしが光の先を見ていると尋ねてくる。

もちろん、行かない選択肢もある。

でも、タールグイが移動してきたところだ。二度と来られない可能性が高い。ここを見つけ出すのは不可能に近い。

でも、行った先でクマの転移門を置いておけば、いつでも確認しに来ることはできる。

それに「クマの道しるべ」が、どういう状況で反応するかも分からない。

クリモニアに帰っても反応するとは限らない。

離れすぎると光らない場合もある。だからと言っても、光りっぱなしなのも困る。

「ちょっと、行ってみるよ。転移門を設置すれば、すぐに帰れるし。タールグイが遠くに離れる前に行きたいから。だから、カガリさん、悪いけど和の国に」

「妾も付き合おう」

「来るの?」

「あの門を設置するなら、問題はない。お主の言葉じゃないが、すぐに戻って来られるからのう」

そんなわけで、わたしとカガリさんは雪山が見えた陸に向かうことになった。

わたしとカガリさんは、くまゆるとくまきゅうに乗って、海に飛び出す。

くまゆるとくまきゅうは海の上を駆けていく。

手に持つ、「クマの道しるべ」の光は雪山がある陸を指し示している。

わたしをどこに導こうとしている?

神様は、わたしになにをさせようとしている?

過去の神様のメールを見ると、わたしの行動を楽しんでいる気配もある。

そもそも、神様ってなに?

いろいろと今回のことを考えていると陸が近づいてくる。

「少し寒いのう」

カガリさんがそう言うと、体が一瞬、赤っぽいものに包まれた思うと消える。

「なにかしたの?」

「保温魔法じゃ。火属性魔法の応用じゃな。魔力で体を包み込み、寒さから守ってくれる」

おお、便利な魔法だ。

クマ装備は耐熱、耐寒効果があるから、わたしには不要だけど、他人にかけられるなら、突発的に寒くなったときに、フィナにかけてあげることができる。

今度、わたしも確かめてみよう。

そして、わたしたちが陸に到着すると、案内を終えたと言わんばかりに「クマの道しるべ」の光は消えてしまった。

「光が消えたのう」

「そうみたい」

目的地まで案内してくれると思ったのに。

自分で探せってことかな?

「それで、どうするのじゃ?」

どうしよう。

山を目指すべきか、周辺を調べるべきか。

「クマの道しるべ」が指していたのは、あくまで雪山がある陸であって、雪山頂上ってわけではない。

「とりあえず、周囲の確認かな。雪山の確認は、そのあとでも遅くないし」

「そうじゃな」

まずは、探知スキルで周囲の確認をする。

周囲に魔物と人の反応はなし。

わたしたちは海岸線を歩き出す。

「それにしても導くなら、最後まで光っておればいいもの。消えるなんて不便じゃのう」

それには同意だ。

案内するなら、最後まで案内してほしいものだ。

何事も中途半端はよくない。

でも、神様が仕込んだことなら、あり得なくはない。

ミスリルゴーレムのときや大蛇の時も、討伐し終わったあとに、アイテムが手に入っている。

初めから、教えてくれていたわけじゃない。

やっぱり、ここで自分で探せってことなのかな。

くまゆるとくまきゅうに乗ったわたしとカガリさんは目的がないまま移動する。

「なにもないね」

「そうじゃが、お主はなにも感じないか?」

「感じる?」

なにも感じないけど。

「保温魔法を使っているのに、寒気がする」

「風邪じゃ?」

「違う。この周辺に漂っている魔力のようなものが原因じゃろう」

カガリさんは見えない何かを感じるために手を伸ばす。

わたしもマネをして手を出すが、なにも感じられない。

「くまゆる、くまきゅうは」

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうは首を横に振る。

くまゆるとくまきゅうもなにも感じないみたいだ。

カガリさんは妖狐みたいなものだから、何かを感じ取っているのかもしれない。

「それで、なにか分かる?」

「さっぱり分からん。違和感を覚えただけじゃ。だから、お主に尋ねたんじゃ」

再度、確認するけど、やっぱり、なにも感じられない。

「でも、カガリさんが何か違和感を覚えたら、何かがあるってことだね」

「お主、妾の曖昧な言葉を信じるのか?」

「別に嘘を吐いているとは思っていないし。何かを感じているのは本当だと思っているよ。実際にあの玉の光はここを示していたし」

警戒することには変わらない。

「妾のなんとなくでよいなら、感じる違和感はこの先じゃ」

カガリさんのなんとなくの違和感を信じて、わたしたちは進む。

そして、カガリさんの違和感が的中した。

「なんじゃこれは……」

わたしたちの前には氷漬けになった港街があった。

建物、道、樹木、船、あらゆるものが凍っている。

氷の街と言ってもいいぐらいだ。

「カガリさん、これって」

「分からん、まずは人がいないか確認しよう」

すでに探知スキルで確認してある。探知範囲には人の反応はない。

「近くに人はいないみたいだよ」

くまゆるとくまきゅうが魔物と人が近くにいれば分かることを知っているカガリさんは、わたしの言葉になんとも言えない表情をする。

「とりあえず、街の中を調べるぞ」

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは街の中に入っていく。

どの建物も凍っている。

「誰もいないね」

人の姿は見えない。

見えたら見えたで、最悪の状況しかない。

「こんな状況じゃ、外にいることはできなかったんじゃろう。家の中を調べるしかなかろう」

そうだけど。

家の中を調べたくないとは言えない。

「くまゆる、あの家に行ってくれ」

カガリさんの指示された家にくまゆるは移動する。

カガリさんはくまゆるから降りると、ドアの前に立つ。

ドアも氷漬けになっている。

「篝火」

火の魔法を調整して、凍っているドアの氷を溶かす。

「これで入れるじゃろう」

カガリさんは背を伸ばし、ドアを開ける。

鍵はかかっていないようでドアが開く。

家の中には、カガリさんを先頭にわたし、くまゆる、くまきゅうの順番に家の中に入る。

家の中も凍っている。

テーブル、イス、キッチン、コップ、あらゆる物が凍っている。

人はいない。

少し安心する自分がいる。

「奥の部屋に行ってみるぞ」

「うん」

わたしは見た目は幼女のカガリさんの後ろからついていく。

奥の部屋のドアも氷漬けなっていたが、カガリさんが家に入るときと同じように火の魔法で氷を溶かし、部屋の中に入る。

「うぅ」

「酷い」

部屋の中には、お互いに体を寄せ合って毛布に包まっている家族らしき人がいた。

その家族も建物同様に凍っていた。

探知スキルに反応がないってことは、そういうことだ。

最悪の状況だ。

「カガリさん、これって」

「わからんのう。はっきり言えることは、人は簡単にこんな状況にはならないってことだけじゃ」

だよね。

雪が降る寒い北国だって、こんなことにはならない。

そもそも、そんな場所に街は作られない。住めるから街が作られる。

どうして、こんなことに。

「クマの道しるべ」は、これをわたしに見せたかったの?

「一応、念のためじゃ、他の家も確認するぞ」

「うん」

わたしは凍っている家族に軽く手を合わせて、カガリさんの後をついていく。

そして、同じようにいくつかの家を確認したが、家の中にいた人はみんな氷漬けになっていた。

「お主は、どうするつもりじゃ。長居はしないことをお勧めするが」

普通なら、そうだよね。

こんな氷漬けの街、ゴーストタウンからは早く離れたい。

でも、「クマの道しるべ」が反応したのが気になる。

きっと、何かがあるはずだ。

もしくは、わたしがやるべきことが。

やるべきことなら、この街が、どうして、こうなったのかを調べないといけない。

ゲームなら、理由を探し、解決するまでがイベントになる。

でも、これはゲームではない。現実に起こっていることだ。

「わたしは残って、もう少し調べるよ。カガリさんは帰っても大丈夫だよ」

「はぁ」

カガリさんは小さくため息を吐く。

「乗りかかった船じゃ。妾も付き合おう」

「いいの?」

「大人の妾が、小娘1人をこんなところに置いて行くわけにはいかぬじゃろう」

「大人……」

「なんじゃ、大人じゃろう」

カガリさんの大人姿、もう長い間見ていないから、忘れそうだ。

色気がある大人だったのは間違いない。

でも今、目の前にいるのは幼い少女だ。

「「くぅ〜ん」」

「なんじゃ? お主たちもいるって?

そうじゃな。じゃが、妾からしたら、お主たちも子供じゃ」

そういえば、くまゆるとくまきゅうって何歳なんだろう?

まあ、くまゆるとくまきゅうは可愛いので、子供みたいなのは同意だけど。

「とりあえずは、情報収集じゃな」

わたしたちは、街が凍り付けになった理由を探すことにした。