軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

764 クマさん、導かれる

ノアたちと小旅行から帰って来てから数日。

出かけた反動で引きこもっている。

くまゆるとくまきゅうをクッションにしながら寝ていると、解体作業に来ているフィナに「ユナお姉ちゃん、だらしないよ」と注意される。

「フィナお母さんが厳しい」

まあ、いろいろとフィナに注意されるが、気にかけてくれるのが嬉しい自分がいる。

1人だったら、心配してくれる人もいないからね。

まったりと過ごしているわたしは、最近毎日のように和の国の温泉に入りに来ている。

「今日も来たのか」

カガリさんが呆れるように言う。

「別にいいでしょう。一応、わたしがもらった家なんだし」

「そうじゃが、スズランには気を付けるんじゃぞ」

「分かっているよ」

わたしは子熊化したくまゆるとくまきゅうを連れて温泉に向かう。

クマの着ぐるみを脱ぎ、裸になり、体を洗い、ぬるま湯の温泉に入る。

熱い温泉だと、のんびりできないので、ぬるま湯の温泉がお気に入りだ。

「ふはぁ〜〜」

ああ、気持ちいい。

本当にいいものを貰った。

初めは、こんな温泉付きの大きな家を貰ってもいいのかなと思ったりしたけど、サクラたちに大蛇によって国が壊されたことを考えれば、安いものだと言われた。

貰ったからには、ありがたく使わせてもらう。

温泉を堪能したわたしはカガリさんのところに向かう。

相変わらずカガリさんは、幼女姿でお酒を飲んでいる。

「あまり飲みすぎると体によくないよ」

「スズランと同じことを言うな」

「もしかして、元の姿に戻れないのって、お酒を飲んでいるせいじゃない?」

わたしの言葉にカガリさんの手に持つコップが止まる。

お酒って少量なら体にいいけど、飲み過ぎはよくないって聞く。

「どういう意味じゃ?」

「カガリさんって、普通の人とは違うでしょう。もしかすると、成長するための魔力なのか体質の力が、お酒で悪くなっている場所を治すために使われているんじゃないかなと思って」

「確かに、前に元に戻ったときは、長い間寝ていたから、酒は飲んでいなかった」

「それじゃ、お酒を飲むのは控えたほうが……」

「それは、無理じゃ!」

カガリさんはそう言って、止まっていた手が口元に向かい、コップが口に付けられると、ゴクっとお酒を飲み干す。

「酒をやめられるわけがなかろう!」

そんなに力強く言われても。お酒を飲まないわたしには、お酒の美味しさは分からない。

お酒って、やめられないものなのかな?

禁酒って言葉もあるし、難しいのかもしれない。

わたしがゲーム禁止、アニメ禁止、漫画禁止にできなかったのと同じかもしれない。

でも、この世界に来て、全てがないからやめることができたけど、いまだに恋しいと思う。

手元にあれば、ゲームはするし、漫画は読むと思う。

あのゲームの続編は気になるし、あの漫画の続きも気になる。

好きなものをやめるのは難しい。

まあ、カガリさんは酒癖が悪いわけじゃないから、他人に迷惑をかけることもしない。

それに、お酒が原因で大人に戻れなくても、本人の責任だ。

なら、好きに飲ませてあげてもいいと思う。

ただ、カガリさんを心配する人がいるから、体には気をつけてほしいとは思う。

フィナがわたしのことを心配していたことを思い出す。

なるべくフィナに心配をかけるのはやめよう。

「人のふり見て我がふり直せ」って言葉もあるし。

わたしがカガリさんを見ながら、そんなことを考えていると。

「ほれ、くまゆる、こっちにこい」

カガリさんがくまゆるを呼ぶ。

くまゆるは素直にカガリさんのところに向かう。

カガリさんのことを信用しているってことかな?

くまゆるが近くにやってくると、カガリさんは通常サイズのくまゆるにしてくれ、とわたしに言う。わたしが通常サイズのくまゆるに戻すと、カガリさんはくまゆるに寄りかかる。

「気持ちいいのう」

「くぅ〜ん」

「狐が一番じゃが、ニ番はクマにあげよう」

「くぅ〜ん」

「一番は自分じゃと? お主は最高じゃが、ニ番じゃ、これだけは譲れん!」

何か、狐とクマの一番、二番闘争が始まったけど、いつものことなので、ほっとくことにする。

わたしはくまきゅうと一緒に窓際に移動し、くまきゅうを通常の大きさに戻すとカガリさんと同じようにくまきゅうに寄りかかる。

そして、外を見る。

綺麗な湖。

平和だ。

カガリさんのお酒を飲む音だけが聞こえてくる。

落ち着いた時間が進み、その日は、そのまま和の国の家で寝た。

翌日、朝日によって起きる。

カガリさんはくまゆると抱きあったまま寝ていた。

くまゆるはカガリさんが風邪を引かないように、抱えていた。

なんだかんだで、仲がいい。

「なんじゃ、もう朝か」

わたしが立ち上がり、体をほぐしていると、カガリさんも起きる。

「おはよう。朝食を用意するけど、食べる?」

「ああ、もらおう」

わたしはクマボックスから、モリンさんが焼いたパンを出す。

くまゆるとくまきゅうには果物を用意する。

「それで、お主の今日の予定はどうするのじゃ」

特に決めていない。

仕事があるわけじゃないし、自由気ままの生活だ。

でも、それではダメと分かっているが、怠け者のわたしが率先して、仕事をすることはない。

わたしは少し考え、くまゆるとくまきゅうが果物を食べているのを見て、

「そうだね。ちょっと、タールグイに果物を採りに行ってこようと思うよ」

果物の補充だ。

「なら、妾も行こう」

「カガリさんも?」

「暇つぶしじゃよ」

まあ、わたしとしても問題はないので、了承する。

朝食を食べたわたしとカガリさんはクマの転移門を使ってタールグイに移動する。

「ここが、あのタールグイの上だと、本当に信じられないのう」

わたしだって、信じられない。

ここを調べていた人物が残した本にタールグイと書かれていただけで、実際は本当かどうかの判断は誰もできない。

そもそも、タールグイは伝説上の生き物なんだから。

わたしとカガリさんはくまゆるとくまきゅうに乗って果物がある場所に向かう。

リンゴ、バナナ、オレン、いろいろな果物がある。

桃みたいなものもある。

イチゴもあり、確保していく。

季節に関係無く、いろいろな果物や野菜があるのはありがたい。

「サクラにお土産で持っていってやってもいいか?」

「いいよ」

カガリさんはくまゆると一緒に果物を集めていく。

わたしもくまきゅうと一緒に果物を集めていく。

「ほれ、あの実が美味しそうじゃぞ」

「くぅ〜ん」

カガリさんは指をさしてくまゆるに採らせる。

カガリさんは背が低いので仕方ない。くまゆるも文句を言いながらも、言われるままに果物を採っている。

「結構集まったのう」

「食べきれなかったら、もったいないから、このぐらいでいいんじゃない?」

クマボックスなら大丈夫だけど、カガリさんのアイテム袋が時間停止になっていると思えないので、そう言う。

「そうじゃのう」

「食べたいものがあったら、また来たらいいよ」

クマの転移門が設置してあるので、いつでも来ることができる。

今、タールグイがどこにいるか気になったので、わたしとカガリさんは周囲を見回ってから帰ることにした。

「そういえば、お主はあの街には行っておるのか?」

「あの街って、スライムの?」

カガリさんの言葉から、巨大なスライムがいた街のことだと思う。

「それなら、行っていないよ」

「そうなのか」

「でも、時間があったら、もう一度行ってみたいね」

あのスライムの街から、他の街に行くのもいい。

もしかしたら、あのときに会った2人に会えるかもしれない。

「もし、行くようなことがあれば、妾も付き合ってやってもいいぞ」

もしかすると、カガリさんは大蛇の封印を見守る役目が終わり、時間を持て余しているのかもしれない。

エルフの村に行ったときも、楽しそうだったし。

「そうだね。そのときはお願いね」

わたしとカガリさんはくまゆるとくまきゅうに乗りながら、タールグイの周りを移動する。

「海しか見えないのう」

「そうだね」

相変わらず海しか見えない。

数日前、ノアたちと来たときも、周りは海が広がっているだけで、なにもなかった。

タールグイが進む方向を時計の12時として、わたしたちは後ろの6時から時計回りに回っていく。

9時辺りを通り、タールグイの頭辺りにやってくる。

なにも見えないと思っていると、1時方向に陸が見えた。

「雪山?」

見えたのは白い山だった。

「そうみたいじゃのう」

「人、住んでいるかな」

「流石にわからん」

まあ、肉眼ではなにも見えない。

雪山が見えるだけだ。

和の国と違って、海に船が出ているわけでもない。

なので、ここからでは人がいるとかどうかは判断はできない。

「それに、人が住むには適していないじゃろう」

雪山に住んでいる人もいるが、雪がない場所のほうが暮らしやすい。

久しぶりにタールグイから見えた陸だから、行ってみたい気持ちもある。

どうしようかと悩んでいると、左手の白いクマさんパペットの口が光っている。

なに?

わたしはクマボックスを確認すると、あるアイテムが光っていた。

「それは、大蛇のときのか?」

「うん」

『クマの道しるべ』

大蛇を討伐したあとに見つかったものだ。

「光が、あの雪山に向かっているのう」

カガリさんの言う通りに、クマボックスから出した『クマの道しるべ』が光り、一本の光が雪山に向かっている。