軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

761 クマさん、契約魔法を使う

───ユナ視点───

みんなで、部屋で休んでいると、バーリマさんに話があると言われ、執務室にやってくる。

「ユナさん、お座りください」

わたしは勧められるままに椅子に座る。

「ユナさんは、どうやって街の中に入りましたか?」

まさかの質問だ。

「この街は砂漠の中心にあり、人の出入りは少ないです。この街に住む冒険者が魔物討伐に行くか、商人が行き来するぐらいです。一日の人数は多くありません。ほとんどが顔見知りと言っていいでしょう」

考えれば当たり前のことだ。

王都は多くの人が出入りする。

クリモニアだってそうだ。

でも、ここは孤立した街だ。

周りが砂漠ってこともあって、移動するのも大変だ。

そんな街を行き来する人は少ない。

「えっと」

「お答えいただけないなら、それで構いません。ただ、街の領主として、お尋ねしないわけにはいけませんので」

「えっと」

「街に入る抜け道があるのでしょうか」

「抜け道があるかどうかは知らないよ。わたしは違う方法で来ているから」

「ユナさんなら、街の壁を越えて来ることもできると思います。でも、それをする理由が分かりません」

普通に入ってくればいい。

「バーリマさんが国王と知り合いだから、ちょっと言えなくて」

「国王陛下と?」

「うん、国王陛下に知られると、もしかすると面倒なことになるかもしれないから」

「わたしが、国王陛下に話すと思っているのですね」

「可能性の一つで」

「それでは、国王陛下に話さないと約束すれば、教えていただけるのですか?」

バーリマさんを信じていないわけではない。

でも、国王が関わってくると、別問題だ。まして、他国も関わってくる。

「それじゃ、契約魔法をしてほしいと言ったらどうします?」

「契約魔法?」

「わたしの秘密を話そうとすると」

「話そうとすると死ぬのですか?」

「死なないよ。ちょっとばかり、恥ずかしいことになるだけ」

わたしは簡単に説明する。

わたしの秘密を話そうとすると、「クマ」って単語しか話せなくなること、文字に書こうとしても「クマ」しか書けないこと。

わたしが真剣に説明すると、バーリマさんは笑い出す。

「そんな契約魔法があるのですね」

先日覚えたばかりだけど。

「契約違反がそれだけなら問題はありません。そもそも、話さないと約束しますので」

わたしはテーブルの上に魔力でクマの魔法陣を描く。

「魔法陣もクマなのですね」

「そこの顔の部分に手を置いてください」

わたしに言われるままに、バーリマさんはクマの顔の魔法陣に手を置く。

「わたしの秘密を誰にも話さないこと」

「約束します」

クマの魔法陣が光り、契約が完了する。

そして、わたしはクマの転移門のことをバーリマさんに話す。

「それで、家を購入したのですね」

「うん、適当に置くことはできないからね」

「確かに、これは国王陛下や他の人に知られると大変なことになりますね。人によっては戦争の道具になりかねません」

近くで戦争が起きている話は聞いたことがない。

でも、国同士の問題は時代と共に変わる。

ミサーナの住む領主が二人いた街だって、初めは両家の仲は良かったと聞いた。

でも、世代交代すれば、人間関係も変わり、考え方も変わる。

「ユナさん、お話ししてくださって、ありがとうございます」

「不審に思われても仕方ないから」

「それで、知ったことで、お願いがあるのですが、可能ならカリーナに話してください」

「カリーナに?」

「はい。そして、いつでもこの街に来てくださると嬉しいです」

「契約魔法することになっても?」

「カリーナは責任感が強く、約束を破る子ではありません。それに、あの子は魔法陣の勉強をしています。逆に喜ぶかもしれません」

「分かったよ」

「それと、契約魔法の確認もしてみたいので、カリーナを呼んでもよろしいでしょうか?」

わたしが了承するとバーリマさんはベルを手にすると鳴らす。

ドアが開き、メイドさんが部屋に入ってくる。

「お呼びでしょうか?」

「カリーナを呼んできてくれ」

メイドさんは頭を下げると、部屋を出ていく。

しばらくすると、カリーナがやってくる。

「お父様、お呼びでしょうか」

「ああ、座りなさい」

カリーナはわたしの隣に座る。

「カリーナ」

「はい、なんでしょうか?」

「クマクマクマ、クマ」

「お父様?」

カリーナはいきなり父親がクマを連呼するので驚く。

「本当に話せないみたいですね」

それから、紙に書こうとするが、紙には「クマ」も文字が並ぶ。

「不思議です。本当に書けない。書こうとしても、クマになってしまいます」

バーリマさんは楽しそうに言う。

「お父様、どういうことですか?」

いきなり父親がクマを連呼して、紙に「クマ」って文字を書き始めれば困惑するのも仕方ない。

わたしは簡単に説明する。

契約魔法によって、わたしの秘密を話そうとすると、「クマ」としか口にできなくなり、紙に書いて伝えようとすると「クマ」って書いてしまうことを。

「ユナさんの秘密ですか?」

「そうだ。気になったことがあったので、尋ねた。その質問に答えるなら、契約が必要と言われ、契約魔法をした」

「危険はないのですか?」

「ないよ。説明したとおりに、わたしの秘密を話そうとすると『クマ』って言うだけだから。強いて言うなら、恥ずかしいぐらい?」

人前でクマを連呼するのは恥ずかしい。「クマクマクマクマクマクマクマクマクマ」と言うことしかできないんだから。

「そうなのですね」

少し安心した表情をする。

「それでは、わたしもユナさんと契約魔法を行えば、ユナさんの秘密を教えていただけるのですか?」

「カリーナ?」

「ユナさんに尋ねたいことがたくさんあります。でも、聞いてはいけないと思って、我慢してきました。でも、その契約魔法を行えば、ユナさんのことをもっと……」

「カリーナ……」

「それに、契約魔法に使ったと言う魔法陣が気になります」

そこには少女の顔ではなく、魔法陣に興味がある研究者のような顔だった。

わたしとしてはカリーナとの魔法契約はしないでもよかったけど、カリーナの意志によって契約魔法をすることなった。

テーブルの上にクマの魔法陣が描かれる。

そして、契約魔法を行った。

───ノア視点───

ユナさんはバーリマさんに呼ばれて部屋から出て行きました。

それを確認したカリーナは尋ねてきます。

「お尋ねしたいのですが、いいですか?」

「なんですか?」

「ユナさんはいつも、あの格好をしているのですか?」

その質問に、わたしたちは顔を見合わせます。

ユナさんは、いつもクマさんの格好をしています。

どこに行く(お城)ときも、誰(国王様)に会うときも、クマさんの格好です。

「たまに違う格好をするときもありますが、いつもあの格好です」

「そうなんですね」

「わたしの誕生日パーティーにはドレスを着てくれました」

「王都の学園祭に行ったときは制服でした」

「あと、海に行ったときは、水着を着ていましたよ」

なぜか、ユナさんを擁護しないといけないと思ったわたしたちはユナさんが違う服を着たときのことを話す。

「それじゃ、普段はあの格好なんですね」

わたしたちは頷くしかなかった。

「あの格好は、そちらの街では普通なのですか?」

わたしが暮らすクリモニア。

全員がクマさんの格好をしているのを想像してしまいました。

「いえ、あの格好をしているのはユナさんだけです」

「くまさんの服を着ている子もいるよ~」

シュリが声を上げます。

「あれはお店の服でしょう」

「えっと、ユナさんはお店を経営しているんです。そこで子供たちが働いているのですが、クマさんの格好をしているんです」

「ユナさんと同じ服をですか?」

わたしはカリーナにお店のクマの制服を見せるために、アイテム袋から取り出して、着てみる。持って来ていてよかったです。

「こんな感じです」

ユナさんのクマの服とは違いますが、これもクマさんの服です。

「可愛いです。みなさんも、ユナさんの店で働いているのですか?」

「フィナとシュリがたまにお手伝いで働いていますが、わたしとミサは働いていません。この服はお願いをしていただいたものです」

カリーナは制服を見て、欲しそうにする。

ですが、この服は一つしか持ってないです。

わたしとミサが着ているクマの服はフィナとシュリの予備の制服でした。

もしかしたら、新しく予備を持っているかもしれません。

「フィナ、予備の服はないのですか?」

「ありますよ」

フィナはそう言うと「クマの憩いの店」の服を出します。

カリーナは嬉しそうにクマの服を受け取ると着替え始めます。

「本当に、くださるのですか?」

「えっと、わたしが何度か着た服ですが」

「ありがとうございます。大切にします」

カリーナは嬉しそうにする。

そして、わたしたちは全員でクマの格好をし、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと遊ぶ。

遊んでいると、使用人の人がやってきて父親のバーリマさんがカリーナのことを呼んでいると伝えにきた。

そのとき、わたしたちのクマさんの格好を見て、驚いていました。

カリーナはすぐに行きますと言うと、元の服に着替え、慌てて部屋をでていく。

部屋から出て行くカリーナを見て、フィナたちに話しかける。

「ミサ、フィナ、相談があります」

「なんですか?」

「カリーナはクマさんが好きです」

ほんの少しだけですが、カリーナがクマが好きなのことは分かりました。

ユナさんとも仲がよく、ユナさんのことが大好きです。

「それで、クマさんファンクラブに入れるのはどうですか?」

「いいと思いますが、カリーナちゃんは、あの門のことを知らないんですよね」

「はい。ユナお姉ちゃん、国王様やエレローラ様に知られたら困るから、教えていないです」

前に会っているフィナが答える。

ユナさんはわたしたちが、お母様に知られたくないため、貴族であることを秘密にしてほしいと頼まれました。

「ですが、カリーナは間違いなく、クマさんが大好きです」

でも、新しいクマさんファンクラブ会員はユナさんの秘密を共有できる人と決めました。

簡単に破ることはできません。