軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

750 クマさん、みんなでエルフの村に行く

わたしたちは温泉付きのお屋敷に戻ってきた。

ノアとミサの畳はシノブが手配してくれていて、サクラの家に運ばれていたのでクマボックスに仕舞った。ちなみに代金を払おうとした2人だったけど、サクラは受け取ろうとはしなかった。

「ほら、早く開けぬか」

クマの転移門の前に立つわたしを急かすようにカガリさんが言う。

屋敷に戻ってくると早々にカガリさんが急かす。

もしかすると、一番楽しみにしているのはカガリさんかもしれない。

「ふふ、楽しみっす」

エルフの村に行く話をしたときにいなかったシノブがカガリさんの次に楽しみにしている。

初めはシノブのことを連れて行く予定はなかったけど。「サクラ様の護衛は必要っす」「わたしも連れて行ってほしいっす」と言ってサクラにしがみつき、駄々をこねたので了承した。

ただし、自分勝手な行動はしないことは約束させた。

わたしはクマの転移門を開ける。転移門の先はクマハウスの中だ。

本来ならクマの転移門は神聖樹の結界の中にあるクマハウスの中に入って、一度、神聖樹の結界の外に出てからクマの転移門を再設置しないとフィナたちを連れてくることはできなかった。

当時、クマの転移門を設置したときは、わたしが移動できればいいと思って神聖樹の結界の中に設置していたけど。今はフィナやサクラも来ることがあり、神聖樹の結界の中にあると不便なのでムムルートさんに相談して、エルフの人たちも来ない場所にクマハウスを設置させてもらった。

クマハウスの中を移動したノアたちはキョロキョロと見回す。

そして、クマハウスの外に出ると、ルイミンとムムルートさんがいた。

「皆さん、お待ちしていました」

ルイミンが嬉しそうに出迎えてくれる。

昨日、クマフォンでルイミンに行くと伝えると、「それじゃ、迎えに行きますね」と言ってくれた。

「ルイミンさん、お久しぶりです」

サクラとルイミンは手を取り合って、再会を喜び合う。

「ムムルート、少しばかり世話になる」

「カガリ。まだ、その姿なのか?」

こちらも再会だけど、静かなものだ。

「ああ、魔力は戻っている。体調も問題はない。気にしないでいい」

「そうか」

「それじゃ、ノアとミサに紹介するね。カガリさんと一緒にいるのがムムルートさん。サクラと一緒にいるのがルイミン。ちなみに、ムムルートさんはエルフの村の一番偉い人。ルイミンはその孫」

フィナとシュリは2人のことは知っているので、ノアとミサにルイミンとムムルートさんを紹介する。

「うんでもって、ルイミンとムムルートさんに紹介するね。ノアールとミサーナ。わたしの友達だよ」

一応、紹介ってことなので愛称ではなく、ちゃんと2人の名前を言う。

「ノアールです」

「ミサーナです」

2人は改めて名前を名乗る。

「ルイミンです。ユナさんにはお世話になっています」

「ムムルートだ。クマの嬢ちゃんには村を救ってもらった。嬢ちゃんの友人なら、気兼ねなく村にきてくれ」

「ありがとうございます」

「お世話になります」

ノアとミサは丁寧に答える。

「フィナちゃんとシュリちゃんも久しぶりだね」

挨拶が終わるとルイミンがフィナとシュリのところにやってくる。

「はい。ルイミンさんも元気そうでよかったです」

「うん、元気だよ」

フィナとルイミンの挨拶が終わると、ノアとミサがルイミンに近づく。

「あなたが、英雄のルイミンさんなんですね」

「話は伺っています。和の国を救った一人だと」

「え、英雄?」

ノアとミサの言葉にルイミンは驚いた表情をする。

「和の国を救うため、危険をかえりみずに、1人で封印に魔力を注ぎ込んだとか」

「怖くなかったのですか?」

「え、えっ?」

グイグイと迫るノアとミサにルイミンは一歩下がってたじろぐ。

「ユナさん、サクラちゃん、どうなっているんですか?」

混乱するルイミンにわたしとサクラが説明する。

「うぅ、そんな説明をしたんですね」

「別に嘘は言っていないよ」

「そうですが、誇張しすぎです。わたしは封印を維持するために魔力を注ぎ込んだのは事実ですが、それだけです。本当に凄いのはユナさんです」

「でも、ルイミンさんが頑張らなかったら、和の国は大変なことになっていたんですよね?」

「命の危険もあったのに、逃げ出さなかったんですよね?」

ノアとミサは確認するように尋ねる。

「そうだけど……。わたしが言いたいのは、わたしはそんなに凄い人でも立派な人でも英雄でもないってことを言いたいの。サクラちゃんも何か言ってあげてよ」

「ルイミンさんは、わたしたちの国を救ってくれた1人です。それは間違いないです」

「サクラちゃん!」

サクラにも裏切られて、ルイミンは情けない顔をする。

「フィナちゃんから、わたしは大したことはしてないって言って」

ルイミンは最後の砦であるフィナに助けを求める。

「えっと、わたしは、その魔物を見ていないので。でも、シノブさんが大怪我をしているのは知っているので、大変だったことは分かります」

「そうっすよ。ワイバーンやヴォルガラスに襲われて大変だったっす。そんな中、逃げ出さずに残ったことは凄いと思うっすよ」

「うぅ、フィナちゃんにシノブさんまで……」

ここにはルイミンの味方はいないみたいだ。

「ノアールちゃんとミサーナちゃんだったよね。みんな大袈裟に言っているだけだから、信じちゃダメだからね。ほら、ユナさんの顔を見て、わたしが困っているのを楽しんでいる顔だよ」

ルイミンの言葉にノアとミサがわたしのほうを見るので、笑みを止め真面目な顔にする。

「ルイミンがいなかったら、わたし、死んでいたかも……」

「ユナさん!」

ルイミンが叫ぶのでわたしは笑ってしまう。

「別に噓じゃないでしょう。ルイミンも危険を顧みず、魔力を流し続け封印を維持してくれた。それで、わたしとカガリさんが安全に戦うことができたんだよ」

「そうですが、わたしは魔力を流しただけなので、あまり大げさに言うのはやめてほしいです」

まあ、ルイミンの気持ちは分かるので、これ以上からかうのはやめてあげることにする。

「分かったよ。ノアとミサも、あまり褒めないであげて」

「分かりました」

「ルイミンさんは謙虚な方なんですね」

「違うよ〜〜〜〜〜〜」

森の中にルイミンの叫び声が響いた。

ルイミンの誤解を解いた?ので、わたしたちは村に向かうことになった。

くまゆるには一番小さいカガリさんが乗り、くまきゅうにはサクラが乗り、他のメンバーは歩く。

初めは遠慮していたサクラだったけど、なかなかくまきゅうに会えないサクラにノアたちは譲った。

カガリさんの場合はなにも言わずに、くまゆるに乗っていた。

「ですが本当に不思議です。先程まで、和の国にいたのに、扉をくぐると違う場所に来れるなんて」

サクラはくまきゅうに乗りながら周囲を見る。

「ユナさん。ノアールちゃんとミサーナちゃんは、どこまで知っているんですか?」

「扉のことと遠くに離れていても話せる魔道具のことは話してあるよ」

「そうなんですね。ちなみに契約魔法はするのですか?」

「その予定はないよ。ノアとはそれなりの付き合いになるし、ミサのことも何度か会って、知っているからね」

「ユナさんにそこまで信用されているなんて羨ましいです」

「ルイミンのことも信じているよ。あのときは、ルイミンとも会ったばかりだったし、わたしの力のことはあまり知られたくない気持ちがあったから、契約魔法をしてもらったけど。今なら、ルイミンのことは信じられるし、契約が解除できるならしてもいいと思っているよ」

「ユナさん……」

「そもそも、解除ってできるの?」

小説や漫画でも、この手の話は出てくるが解除不可の場合もある。相手が死ぬまで解除できないとか。死んでもダメとか。物語によって様々だ。

「お爺ちゃん、契約魔法って解除できるの?」

ルイミンが前に歩く、ムムルートさんに尋ねる。

カガリさんと話をしていたムムルートさんが振り返る。

「なんだ。いきなり」

「ユナさんとした契約魔法って解除できるか、ユナさんが聞いてきたから」

「嬢ちゃんとした契約魔法か? それなら解除は可能だ」

「そうなんだ。それなら、解除しようか。ムムルートさんのこともルイミンのことも信じているし。それと一緒にサクラとカガリさんも。2人とも秘密を話すとは思えないし」

サクラとカガリさんに目を向け、シノブにも目を向けるがスルーする。

「ちょっと、待ってくださいっす。わたしの名前がないっすよ」

「いや、シノブはダメでしょう」

「どうしてっすか。口は堅いっす。秘密は守るっす」

「聞かれなければ言いふらさないと思うけど。雇い主に命令されたら、話しそうだから?」

忍者は諜報活動を行い、知り得た情報などを雇い主に報告するのが仕事だ。

だから、雇い主に報告しろと命令されれば、おそらく話すだろう。

それが、忍者だと思う。

まあ、シノブはわたしが知っている忍者とは違うから、一概には言えないけど。

ただ、シノブはわたしより、雇い主を優先しそうだ。

「まあ、シノブの契約は解除しないほうがいいじゃろう」

「カガリ様!」

「お主は真面目過ぎる。契約がなければ、両方に挟まれ、悩み、苦悩するじゃろう。契約があれば自分に言い訳ができる。悩むこともなくなる。でも、契約魔法がなければ……」

「別にわたしは、そんなに繊細な人間じゃないっすよ」

「そんな人間が、大蛇の件を、いつまでも引きずるわけがなかろう。そのことをジュウベイも知っているから、ユナと戦わせたのじゃろう。それに以前、妾のところに来て、自分の力のなさを嘆いていたことを、もう忘れたのか?」

「それは秘密っす」

ジュウベイさんだけではなく、カガリさんにまで弱みを見せていたみたいだ。

「だから、お主は契約したままでいい」

「そうですね。シノブは優しいですから」

サクラたちが優しい目でシノブを見る。

「そんな目で見ないでほしいっす!」

シノブの叫び声が森の中に響く。