軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

749 クマさん、折り紙をする

お城を後にしたわたしたちは、馬車に乗って移動する。

そのまま馬車で城下町の見学をしたわたしたちはサクラの家に戻ってきた。

「お主たち、戻ってきたのか」

部屋に戻ってくるとカガリさんがお茶を飲みながら、わたしたちを出迎えてくれる。

「カガリ様、ただいま戻りました」

「カガリ様、1人っすか?」

部屋にはカガリさんしかいない。

「スズランなら鬱陶しいから追い出した。妾の世話などは必要はないからのう。ただ、その嫌がらせで、酒を取り上げられた」

だから、お茶を飲んでいるわけか。

「昼間からお酒を飲むのは体によくありませんから、スズランの気遣いでしょう」

「それで、城はどうじゃった?」

カガリさんはノアたちの方を見る。

「楽しかったです」

「上から見た景色が綺麗でした」

「そうか、楽しんだようなら、よかった」

まるで、年上の女性が子供を温かい目で見るような表情をする。

でも、見た目はノアたちよりも幼いので、違和感がある。

「あと、お姫様に会ったよ。綺麗だった」

シュリが笑顔で話す。

「お姫様? ホノカのやつか」

「それから、ユナ様相手に、シノブとジュウベイが試合をしました」

「お主たち、何しに城に行っているんじゃ」

「わたしのせいじゃないっす。師匠が仕組んだことっす。しかも、自分がユナと戦いたかったから、わたしをダシにしたっす」

ああ、やっぱり、そうだったんだ。

シノブにもっともらしいことを言っていたけど、最終的にジュウベイさんがわたしと試合をしたかった感じだった。

「それで、お主はシノブとジュウベイと戦ったわけか」

「まあ、一応ね」

「シノブとの試合はどうでもいいが、ジュウベイとの試合は見たかったのう」

「わたしの試合がどうでもいいなんて、酷いっす」

「そう思うなら、もっと実力を付けるんじゃのう」

「うぅ」

カガリさんはジュウベイさんとの試合に興味を持ったようなので、話してあげた。

「ふふ、あやつは負けず嫌いじゃから、お主に負けたとき、顔で笑って、心で泣いていたじゃろうな」

カガリさんは笑みをこぼす。

「それって、普通じゃない?」

誰だって、勝ちたいと思う。

負けて、嬉しいと思う人はいないと思う。

「普通はそうじゃ。だが、違うこともある。自分より、遥かに巨大な相手と戦った時は、諦め、尊敬、畏怖、いろいろな感情が湧き出し、普通は二度と挑戦する気は起きない」

人を化け物みたいに言わないでほしい。

「そうっすね。二度と大蛇とは戦いたいと思わないっすからね」

「わたしを大蛇と同列にするのやめてくれない」

「ユナは、それ以上っす」

周りから笑いが起きる。

それから、お城について話していると、ノアたちがのんびりし始める。

「やっぱり、この畳、いいです」

「うん、気持ちいい」

ノアとシュリが畳の上でゴロゴロする。

「ノア、はしたないよ。シュリもマネをしない」

畳に転がるノアとシュリを注意する。

「ごめんなさい」

「うぅ、ごめんなさい」

「やるなら、カガリさんがいる家に帰ってからだよ」

あの家なら、広いし、誰かに見られることもない。

好きなだけゴロゴロと転がることができる。

それに、畳の上でゴロゴロしたい気持ちは分かる。

「別に、構いませんのに」

サクラが言うが、ノアは一応貴族令嬢だ。

あとでクリフに怒られても困る。

「ノアはミサを見習って、もう少しお嬢様らしくしたほうがいいよ」

「酷いです。わたしはミサのお手本になるお姉様なのに」

「ふふ、ノアお姉様は、わたしの憧れのお姉様です」

「憧れていても、悪いところは見習っちゃダメだよ」

「はい」

「ミサ、そこは返事しないでください」

周りから笑いが漏れる。

「ですが、畳を気に入ってくださって嬉しいです」

「わたしの家にもほしいです」

「それなら、買って帰ろうか?」

「いいのですか?」

「ユナお姉さま、わたしもほしいです」

「わたしも!」

ノアの言葉にミサ、さらにはシュリまで言う。

「シュリ、わたしたちの部屋には置く場所がないから無理だよ」

「うぅ」

確かに、ノアやミサの部屋は広い。

正確な広さは分からないけど。とにかく広い。

畳を6畳ほど置いたとしても、全然余裕はある。

逆に、フィナたちの部屋は6畳ぐらいだから置くスペースはない。

床を全て、畳にするぐらいにしないとダメだ。

そうなると、ベッドやタンス、机、いろいろと不便になる。

「シュリ。畳なら、わたしの家にもあるから、好きな時にくればいいよ」

「ほんとう!? ユナ姉ちゃん、約束だよ」

畳を購入することになったけど、シノブが手配してくれることになった。「少し行ってくるっす」と言って、シノブは出て行った。

「みなさん、明日にはお帰りになるのですよね。寂しくなります」

サクラがしんみりしながら言う。

わたしたちは明日、和の国を発つ予定になっている。

「ユナさん、次はどこに行くのですか」

「それなんだけど。エルフの村に行こうと思うけど。サクラとカガリさんも来る?」

わたしが尋ねると、サクラとカガリさんの顔が驚きの顔になる。

「いいのですか!」

「そんなに長くいるつもりはないから、あれだけど」

「構いません。ルイミンさんに会いたいです」

サクラは声を上げる。

「そうじゃのう。久しぶりにあやつの顔を見ておくのも悪くない」

カガリさんはムムルートさんに会えることに、少し嬉しそうに見える。

「ユナさん、ルイミンさんとは?」

ホノカ姫のときにもルイミンのことは話していないので、ノアたちも知らない。

「この国を救った英雄の1人だよ」

嘘は言っていない。

ルイミンがいなかったら、大蛇の復活が早まって、大変なことになっていたかもしれない。

「ルイミンさんはこの国とは関わりがないのに、命をかけて、この国を救ってくれました」

「そのルイミンさんも大蛇と戦ったのですか?」

「戦うだけが、英雄じゃないよ。戦っている人を補佐するのも重要なことだよ」

サクラもそうだ。

サクラとルイミンが封印強化に魔力を注ぎ込んで、大蛇を抑え込んでくれたから、わたしとカガリさんは戦うことができた。

「それじゃ、ユナさんの戦いの補佐をしたんですね」

「そんな凄い人がいるところに行くんですね」

ノアとミサが感動する表情をしている。

「わたし、会ったことあるよ」

「シュリ、本当ですか!?」

「うん、綺麗な女の子だよ」

そうだ。シュリはルイミンとは会っているんだよね。

「一緒に、あの湖で遊んだよ」

「英雄、女の子、どんな人なのでしょうか」

「エルフっていうことなので、美しいのでしょうね」

どんどん、ルイミンが美化されていく。

面白い。

「ユナお姉ちゃん」

わたしがノアたちの会話を聞いていると、フィナがわたしの腕を掴んで揺らす。

「そんなこと言っていいの? ルイミンさん、困るよ」

「別に嘘を言っているわけじゃないし」

「そうだけど……」

ルイミンは綺麗な女の子で間違いない。

大蛇を討伐するのに、危険の中、大蛇の封印強化で魔力を流し続けてくれた心の強い女の子だ。

大蛇を倒すことができたのは間違いなくルイミンのおかげでもある。

まあ、でも通常のルイミンは、あたふたしている可愛い女の子だけど。

そして、夕飯を食べ終わると帰って来たシノブがシュリと一緒にテーブルの上で何かを始めていた。

「シュリ、何をしているの?」

「シノブ姉ちゃんが凄いんだよ。紙でいろいろな物を作れるんだよ」

「そんなに褒められると照れるっす」

シノブの前を見ると、色とりどりの紙が置いてあり、紙で作られた鳥や花などがあった。

「ああ、折り紙ね」

「ユナ姉ちゃん、知っているの?」

「紙でいろいろな物を作るんだよね」

定番だと鶴とか有名だ。

わたしは、残念ながら折り紙は詳しくない。

そんな折り紙で遊ぶような環境で育ってこなかったこともあるが、折り紙に興味を持つ子供ではなかった。幼稚園の時に、鶴を折ったぐらいだ。

だから、作れるのは鶴だけだ。

わたしは紙を一枚取ると、紙を折っていく。

そして、鶴ができあがる。

10年振りぐらいに折ったけど、覚えているものだ。

「鳥さん?」

シュリがわたしが折った鶴を見ながら尋ねてくる。

広がった翼があり、長い首があり、鳥に見える。

「一応ね」

この世界に鶴がいるか分からないので、鳥ってことにしておく。

「ユナさん、何をしているのですか?」

「折り紙を折っていたんだよ」

ノアたちが覗き込んでくる。

「これは鳥ですね」

ノアにも、鳥と認識してもらえて、よかった。

「シノブさんの前にあるのは、花や蝶でしょうか」

「意外と女の子っぽいものを作るんだね」

「失礼っすよ。わたしは女の子っすよ」

シノブの言葉に笑いが起きる。

「折り紙、懐かしいですね」

「サクラもやっていたの?」

「はい、お母様と折ったことがあります」

「その……ごめん」

「いえ、気にしないでください」

サクラは黄色の紙を一枚手にすると、折り始める。

器用に紙を折ると、紙で立体的な花を作ってみせた。

「凄いです」

「紙でお花が作れるなんて」

「サクラ姉ちゃん、わたしも作ってみたい!」

「わたしも」

ノアとフィナが褒めると、シュリが作りたいと言いだし、みんなも声を上げる。

「ふふ、いいですよ。それじゃ、皆さんで一緒に作りましょう」

サクラの周りに人が集まる。

「サクラ様にみんなを取られたっす。わたしが最初に作ってあげたのに……」

「そんなことを言わず、シノブも一緒にやりましょう」

「サクラ様でも、負けないっすよ」

それから、寝るまでの間、いろいろな折り紙が作られた。

狐はあったけど、クマはなかったので、少し残念だった。

折り紙を作るのを見ていたカガリさんは、勝ち誇った顔をしていた。

「申し訳ありません。クマは作ったことがないので」

「まあ、普通は折り紙でクマを作ったりしないっすからね」

「狐は、言い伝えのこともあり、作る人もいましたが」

「次にユナ様が来るまでに、クマの折り紙を作ってみせます」

「別に無理して、作らなくてもいいよ」

「いいえ、きっと、クマの折り方を知っている人がいるはずです。いなくても、わたしが作ってみせます」

サクラは力強く言ってくれた。

まあ、楽しみに待つことにする。