軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

748 クマさん、ホノカ姫と話す

「それで、サクラたちはこれからどこに行くのですか?」

「お城の見学の続きをしようと思っていますが」

尋ねられたサクラは答える。

「それでは、ここからは、わたしがシノブに代わって彼女たちの相手をしますね」

「どうして、わたしと代わるっすか」

シノブがホノカ姫相手に、抗議の声をあげる。

さっきから思っていたけど、シノブの態度はお姫様相手でも、通常運行らしい。

「先ほどの戦いで、汗がひどいですよ。そんな汗まみれでお客様の相手をするつもりですか?」

「うぅ」

シノブはわたしがジュウベイさんと試合をしている間、タオルで顔や首まわりを拭いていた。

「お風呂とは言いませんが、水浴びぐらいしてきなさい。それまで、わたしが彼女たちの相手をします」

「ですが、護衛を……」

「ここは城の中です。誰が襲うのですか、ジュウベイではないのですよ」

ジュウベイさんは名前を出されて、ばつが悪い顔になる。

「それに、わたしは護衛を付けずに1人でいます」

確かにそうだ。

お姫様なのに護衛の1人もいない。

「なによりお父様の指示も出ていますから、彼女たちにちょっかいを出す人もいないでしょう」

そこまで言われて、シノブは黙る。

「ユナもよろしいですよね」

わたしとしては、慣れているシノブのほうがいいんだけど。気兼ねなく、あれが見たいとか、あそこに行きたいとか言える。

でも、相手がお姫様だと気兼ねなく、お願いすることはできない。

「別に、汗臭くないから、シノブでも……」

「そうっすよね。臭くないっすよね」

シノブが自分の匂いを嗅ぎながら同意を求めてくる。

実際、汗の匂いはしてこない。

まあ、至近距離ってわけじゃないから、隣に立ったら分からないけど。

「シノブ。そんなことを言われて、相手が臭いと言うと思っているのですか? 相手が気遣ってくれているかもしれませんよ。隣に立ったら、匂うかもしれませんよ」

「うぅ」

ホノカ姫はシノブを追い詰めていく。

まあ、親しい仲でも、臭いって言うのは難しいかもしれない。

フィナが臭かったら、遠回しに「今日は暑いからお風呂に入ろうか」と言うかもしれない。

「ユナは汗はかいていないっすか?」

「かいていないよ」

「それはそれで、落ち込むっす」

それもクマの服が温度調整してくれているおかげだけど。

「分かったっす。それじゃお願いするっす。ユナ、すぐに戻ってくるっすから、サクラ様のことをお願いっす」

シノブはお風呂なのか、水浴びなのか、分からないけど、体を洗いに離れて行く。

それを見たジュウベイさんが話しかけてくる。

「ユナ、迷惑をかけたな。また機会があったら、手合わせを頼む」

「気が向いたらね」

ジュウベイさんは「それでいい」というと、シノブが去って行ったほうへ歩き出す。

「それでは、わたしたちも行きましょう」

ホノカ姫が笑顔をわたしたちに向ける。唯一、頼りになるサクラを見ると、軽く首を横に振る。

どうやら、ホノカ姫に付き合うしかないみたいだ。

わたしたちも断ることができず、微笑み返すことしかできなかった。

「それで、どこか行きたい場所はありますか?」

ノアたちはわたしに目を向けてくる。

困った感じだ。

「案内はサクラとシノブに任せてあるので」

城の詳しいことは分からない。

「サクラ、この後は、どこに案内するつもりだったの?」

「一通り、自由に行ける場所は案内しました。あとは、ユナ様たちが楽しめる場所はないかと」

「そうなのね。それでは、シノブが戻ってくるまで、わたしのお話の相手になってください」

もちろん、断ることもできず、わたしたちは庭園に向かう。

東屋がある庭園にやってくると、わたしたちは椅子に座る。

使用人の1人がお茶を運んできて、それぞれの席の前に置くと頭を下げて、離れて行く。

「それで、お話とは?」

「ユナのことは立場上、少なからずお父様から話を聞いています。でも、詳しいことを尋ねると、知らないのか、答えられないのか、教えてくださいません」

契約魔法をしているから、わたしの秘密に関しては話せないことになっている。

「どこから来たのか尋ねても、教えてくれませんでした」

「それは……」

「ホノカお姉様。ユナ様とのお約束で伯父様にも答えられないことがあります」

わたしが口を開く前にサクラが口を開く。

「わかっています。お父様からも、もし会うようなことがあっても、失礼がないようにと言われています。答えたくない質問には答えなくても構いません。好奇心で、いろいろと尋ねてしまい、聞かれたくないことも尋ねてしまうかもしれません。その時は遠慮なく言ってください。答えられないことには、追及はしませんので」

国王はクマの転移門やクマフォンのことを言っているのかもしれない。

このことに関しては契約魔法に引っかかる。

「まず、ここで話したことは口外しないと約束してください」

「ええ、そのことはこの国の王女として、約束します」

「それじゃ、どこから来たかの質問だけど、この国と交易があるミリーラの町の方面から来ました」

「ミリーラの町……その子たちも一緒に? ユナとは服装は違うようですが……」

ホノカ姫はわたしとフィナたちの服を見比べるように見る。

「えっと、わたしのような格好をしている人はいないよ。この子たちの服装が一般的と思ってくれればいいよ」

「そうなのですね」

「ちなみに、わたしの格好については答えないから」

わたしは最初に釘を刺しておく。

「分かりました。それでは、どうやってこの国まで来たのですか? 希望の光は海からやってくるとサクラの話がありました」

ホノカ姫はサクラのほうを軽く目を向ける。

「そのあとに、訳が分からない話を聞いています。クマが海を走ったとか、クマがクマに乗ってきたとか?」

わたしがタールグイの島からくまゆるとくまきゅうに乗って、和の国にやってきた。そのときにくまゆるに乗ったわたしを見られ、国王たちに報告をあげたとシノブから聞いたことがある。

そのときの話がホノカ姫の耳にも入っていたみたいだ。

「えっと、わたしには召喚獣のクマがいるんです。そのクマは海の上を走ることができるので」

まあ、くまゆるとくまきゅうのことは聞きかじりはしているみたいだし、隠す必要もないので、教える。

「そうなのですか!」

ホノカ姫の目が輝く。

「そのクマを見せていただくことはできるでしょうか!」

「別にいいけど。騒いだり、攻撃をしたりしないでね」

ホノカ姫が騒いで、兵士でも集まってきたら大変なことになる。

「いたしません」

その言葉を信じて、わたしは椅子から降りると通常サイズのくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「黒いクマがくまゆる。白いクマがくまきゅうだよ」

ホノカ姫は驚いた表情でくまゆるとくまきゅうを見ている。

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは挨拶をする。

「ホノカお姉様、怖くはありませんよ」

サクラは立ち上がるとくまきゅうに近寄り、体を優しく撫でる。

それに倣うように、ホノカ姫も立ち上がり、くまゆるに近づくと、ゆっくりと手を伸ばしてくまゆるに触る。

「大人しいですね」

「わたしやくまゆる、くまきゅう。それから、この子たちに危害を与えなければ、何もしないよ」

わたしはくまゆるとくまきゅうに目を向けて、最後にフィナたちに目を向ける。

一応、フィナたちに危害をおよぼさないように釘を刺しておく。

「それでは、本当にこのクマに乗って、海の上を走り、和の国にやってきたのですね」

クマの転移門のことは話さなかったけど、納得した感じだ。

それから、ジュウベイさんと戦ったことや、大蛇と戦ったときの話をした。

ある程度、国王から聞かされていたのか、答え合わせと、情報の再確認って感じだった。

ムムルートさんやルイミンのことは少しは聞かされていたみたいだったけど、どこから来たか、どこに行ったかは聞かされていないようだったので、わたしも話さなかった。

教えることになれば、クマの転移門のことを話さないといけなくなる。

「情報不足なところがあったので、教えていただき、ありがとうございました」

「半信半疑だったのですが、これでやっと納得できました」

ホノカ姫は礼を述べる。

そして、そのタイミングでシノブが現れる。

「ここにいたっすか。探したっすよ」

シノブはお風呂に入ったのか、さっぱりした感じだ。

「くまゆるとくまきゅうまで召喚して、何を話していたっすか?」

わたしは簡単にシノブに説明する。

「ホノカ様。今回のことは、ご自分で国王様にお話ししてくださいっすね」

「分かっています」

そして、わたしたちはお城を後にすることになった。

「有意義な時間でした。また、お城に来るときには、わたしのところにも顔を出していただけると嬉しいです。サクラ、シノブ、引き続き、彼女たちのことをよろしくお願いしますね」

「はい」

「もちろんっす」

ホノカ姫は去っていく。

「緊張しました」

「お姫様、綺麗だった」

ホノカ姫がいなくなると、フィナとシュリが口を開く。

「そうですね。礼儀正しく、ユナさんをバカにしませんでした」

「ホノカ様のお言葉ではありませんが、和の国で何をしたのか、詳しく聞けて、嬉しかったです」

「クリモニアに帰ったら、会報を作らないとダメですね」

「そうですね」

ノアの言葉にミサが頷く。

「会報?」

「なんでもないです」

「はい、なんでもないです」

ノアとミサが何かを誤魔化すような表情をする。

そして、わたしたちはシノブが用意してくれた馬車に乗り込むと、お城を後にする。