軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

751 クマさん、契約魔法を解除する

それぞれが自己紹介を終えたわたしたちはエルフの村に向かう。

「それにしても扉の先が、和の国から離れた場所なんて不思議です」

サクラは周囲を見ながら言う。

「それは、妾も同意じゃな」

「わたしも未だに信じられません」

「こんな扉があるんですね」

サクラ、カガリさん、ノア、ミサは改めてクマの転移門の感想をつぶやく。

「どこで手に入れたのじゃ」

「秘密って言うか、答えられない」

わたしのスキルだ。手に入れたというよりは、作り出したが正解だ。

でも、そんなことは言えない。

「謎が多い小娘じゃのう」

それは、自分でも思う。

不思議な魔道具を持っていて、他の人よりも強い。そして、何より、クマの着ぐるみを着ている。

フィナたちから見たら、不思議で怪しい人物に見えると思う。

そんなわたしを慕ってくれるから、嬉しいかぎりだ。

「ルイミンさん。エルフの村って、どんな村なのですか?」

ルイミンの後ろを歩くノアが尋ねる。

「どんな村と聞かれても、普通の村としか。王都みたいに、大きな建物はないし、王都みたいに人はたくさんいないし。王都みたいにたくさんのお店はないし……王都みたいに……」

「いや、比べる対象がおかしいから」

わたしのツッコミにみんな頷いている。

そもそも、どうして王都と比べるかな。

「わたし、他との違いに詳しくないので……」

そんなことを言うルイミンの代わりにわたしが説明する。

「まあ、普通の村だよ。畑があって、ちょっとした家が建てられている感じかな」

「そうなのですね」

「だから、そんなに楽しみにされても、なにもない村だから、期待はしないでね」

ルイミンは楽しみにしているみんなに注意する。

「ノアとミサはそこに住んでいる人を見るだけで勉強になると思うし、サクラはルイミンと一緒にいるだけで楽しいと思うし、自然もたくさんあって楽しめると思うよ」

わたしはフォローするように説明する。

「そう言ってくれると嬉しいですが……」

「確かにそうですね。エルフの皆さんが住むところを見るのは初めてです。勉強です」

「はい、楽しみです」

「わたしもです」

「わたしも!」

「そうっすよね。エルフの秘密とかありそうっす」

「シノブ、約束を破って勝手な行動しちゃダメだからね。サクラの目から離れたところに行ったら強制送還だからね」

「わたしが、しっかり見張っておきます」

「冗談っす。信用してほしいっす」

いや、信用できないからね。

「でも、ルイミンさんが知らないだけで、わたしたちにとって、珍しいものはあるかも知れません」

「珍しい食材とかですね」

ノアとミサはお互いに分かっているように会話をする。

「チーズです」

わたしの視線を感じたノアは答える。

確かにチーズの活用方法はいろいろとある。そのまま食べてもいいけど。パンと組み合わせると美味しい。

「チーズはわたしの家でも仕入れているんですよ」

「そうなの?」

「はい。お父様が商業ギルドのミレーヌさんに頼んだらしいです。ミレーヌさんの話では、村との交渉で、ユナさんのお店が優先という条件付きで卸していただけることになったと聞いています」

そうなんだ。

きっと村には商業ギルドから良い条件を提示されたと思う。なのに、わたしの店を優先してくれたんだと思うと嬉しい。

今度、あのお爺ちゃんにお礼を言わないとダメだね。

「それで、ルイミンさんの村には特産物とかはあるのですか?」

「どうだろう? 何かあるの?」

流石にそこまで分からないので、ルイミンに尋ねるが、ルイミンは首を横に振る。

「よく分からないです」

「ああ、でも、クリフとサクラが飲んでいるお茶が特産になるのかな?」

神聖樹のお茶を特産物と言っていいのか分からないけど。

「お父様が!?」

「わたしが!?」

ノアとサクラが同時に反応する。

「あの茶葉は特別で、ここでしか作ることはできないからね」

「お父様、あのお茶を飲むようになって、疲れが取れるようになったと言っていました」

「実は、わたし、魔力が元に戻ってきました」

「本当!」

サクラの言葉にルイミンが声をあげる。

「はい。まだ、詳しいことは調べていませんが、魔力が無くなることは避けられました。これもルイミンさんからいただいたお茶のおかげです」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど。きっと、サクラちゃんの思いが伝わったんだよ」

幼いときに魔力を使い過ぎると、魔力が枯渇して魔力が生成できなくなり、魔法が使えなくなるらしい。

サクラは大蛇の封印の強化をするために、魔力が空っぽになるまで魔法陣に魔力を注ぎ込んだ。

魔法が使えないかもと言われていたけど、神聖樹のお茶のおかげなのか、または元々大丈夫だったのかは分からないけど。最悪な状況は回避できたみたいでよかった。

それから、フィナやシュリも話に加わり、みんなで話をしていると村が見えてくる。

「それで、どうしますか?」

「ルイミン、みんなのことを頼める? わたしはムムルートさんの家に用事があるから」

魔法陣について、話がしたい。

「それなら、妾も行こう」

「分かりました。みなさんのことは任せてください」

なんだろう。

頼んだのはいいけど、頼りなさが見える。

わたしはくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「くまゆるとくまきゅうもみんなをお願いね」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうが頼もしく鳴く。くまゆるとくまきゅうに任せておけば、安心だ。

くまきゅうから降りることになったカガリさんは、少しだけ残念そうにしていた。

フィナたちと別れたわたしとカガリさんはムムルートさんの家にやってくる。

「それにしても本当に違うものじゃのう」

カガリさんはムムルートさんの家を見ながら言う。

「おまえさんの家ほど立派じゃなくて、残念だったか?」

「そんなことはない。自然に囲まれた村にある家なら立派じゃろう。ほれ、早く案内しろ」

カガリさんに言われて、ムムルートさんは家の中に入れてくれる。

家の中に入ると足音が聞こえてきてムムルートさんの奥さんのベーナさんがやってきた。

「ユナちゃんいらっしゃい」

どうやら、わたしが来ることは知らされていたみたいだ。

「それと……」

ベーナさんがわたしの隣にいるカガリさんに目を向ける。

「カガリちゃん?」

「久しぶりじゃのう。しばらく世話になる」

「ふふ、ゆっくりしていってください」

カガリさんはフィナの誕生日プレゼントでクマの転移門でいろいろとおでかけしたとき、ムムルートさんに会いにエルフの村に行ったことがある。

そのときにカガリさんとベーナさんは会っているみたいだ。

「ユナとカガリを連れて、奥の部屋に行く」

「それじゃ、お茶の準備をしておきますね」

わたしたちはベーナさんとは別れ、奥の部屋に行く。

ムムルートさんに連れてこられたのは絨毯がたくさん置かれている部屋だった。

「これ、もしかして、全てが魔法陣なのか?」

カガリさんが目を大きくして、部屋を見渡す。

「ああ、契約魔法の魔法陣が描かれた絨毯はどれだったかな」

ムムルートさんが契約魔法陣が描かれた絨毯を探し始める。

カガリさんは近くにあった絨毯を引っ張り出し、床に広げる。

「カガリ、なにをしている。広げられると邪魔だ」

「こんな興味を引くところに妾を連れて来たお主が悪い」

カガリさんはそう言うと魔法陣の描かれた絨毯を見始める。

「ほほう、これは妾が知っている魔法陣に似ているのう。じゃが、ここが違うのう」

カガリさんは魔法陣を見ながら言う。

「カガリさんは魔法陣を見ただけで、分かるの?」

「少しだけじゃ。魔法陣は基本構成がある。でも、それを改良するのは、その魔法陣を作った本人だけじゃ。場合によっては、魔法陣を隠匿するため、ダミーの魔法陣が描かれることもある」

「世界中を旅をしたときに得た物もある。その中にはダミーの魔法陣が描かれたものもあるだろう」

ムムルートさんも魔法陣について説明してくれる。

「ダミーの魔法陣を含めても、効果があれば問題はない。問題点としては、無意味な工程が増えるだけじゃ」

カガリさんの話ではダミーの魔法陣を消さないと効果がないものもあるらしい。

どのダミーを消すかは、作った本人しか分からないとのこと。

「じゃが、基本的なことが分かっていれば、消すこともできる」

カガリさんは魔法陣が描かれた絨毯を集中して見始める。

そんなカガリさんはほっといて、契約魔法の絨毯を見つけたわたしとムムルートさんは居間にやってくる。

「お茶を、どうぞ」

ベーナさんがお茶をテーブルの上に置いてくれる。

「カガリちゃんは?」

「カガリなら、部屋に残っている。魔法陣に興味を持ったみたいだ」

「それでは、部屋にお茶を運んでおきますね」

そう言ってベーナさんは部屋を出ていく。

「それで、契約魔法の解除ってどうやるの?」

「本当に解除してもよいのか?」

「さっきも言ったけど、ムムルートさんとルイミンが話すとは思えないし。もし、話すことになったときは、危険が迫ったときだと思う。それに、何かの間違いで死んでほしくないからね」

「そうか信用してくれて感謝する」

「それで、どうすればいいの?」

「そこに手を置いてくれ」

わたしは言われた場所に手を置く。

ムムルートさんはわたしと対角になる場所に手を置く。

「お互いに魔力を流し、『解除』と言えば、お互いにつながっていた魔力が切れて、契約が切れる」

わたしは魔力を流し、「解除」と口にする。

「これで、笑い死ぬことはなくなるね」

「そうじゃな、緊急のとき、危険が迫ったときに、笑いながら嬢ちゃんに助けを求めなくてよくなったな」

村の危険のとき、笑いながら、わたしに助けを求めるのは、おかしいからね。

わたしとムムルートさんは笑い合う。

「あらあら、何か楽しいことでもあったのかしら」

ベーナさんが戻ってくる。

「ムムルート、あの子、絨毯を広げて大変なことになっていましたよ。あとで、ちゃんと片付けるように言ってくださいね」

「分かった。ちゃんと言っておく」