軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

747 クマさん、ホノカ姫に会う

わたしたちの前にお姫様が現れ、お互いに自己紹介をした。

年齢はわたしと同じか、少し年上。

長い髪が腰まで伸びている。

綺麗と可愛いが混ざる年齢。

とてもではないが、あの国王の血が入っているとは思えない。

きっと、母親似だと思う。

あの国王に似ないでよかったと思う。

「あなたがサクラの言っていた希望の光なのですね」

希望の光、久しぶりに聞いた。

知らない人に言われると、気恥ずかしいものがある。

「えっと、その、わたしのこと知っているの?」

「一般には箝口令が敷かれていますが、わたしの耳には入ってきています」

この国の王女なら、少なからず、わたしのことを知っていてもおかしくはない。

「国を救ってくれたこと。そして、サクラを救っていただき、ありがとうございます。サクラは妹のようなものなので、感謝の言葉もありません」

「ホノカ様」

ホノカ姫がサクラを微笑むように見る。

ホノカ姫の言葉にサクラも嬉しそうだ。

「えっと、信じているの?」

「お父様は冗談を言うことはありますが、あの件で噓を吐くとは思えません。大蛇の復活の兆しを知ったお父様とサクラが苦悩しているところは見ています」

ホノカ姫はサクラのほうに視線を向ける。

サクラの従姉妹であり、お姫様ならサクラの夢のことも知っているのかもしれない。

つまり、予知夢のことや希望の光が現れることを知っていた。

そして、先ほどの言葉からして、わたしがその希望の光だということも知っているみたいだ。

「クマの格好した女の子が、この国を救ってくれた話は半信半疑でしたが、わたしも先ほどのシノブやジュウベイとの試合を見させていただきました。あれを見て、あなたのことを疑う者はいないでしょう」

「お恥ずかしいところをお見せいたしました」

ジュウベイさんは謝罪する。

見られていたことに気づかなかった。

くまゆるとくまきゅうがいれば、人が近くにいたことに気づいたかもしれなかったが、お城に連れてきたら騒がれると思って、送還してあった。

「それにしても、本当にクマの格好をしているのですね」

ホノカ姫はわたしのことを見て、微笑む。

苦笑ではない。

「お父様がクマの格好した女の子と言っており、違う格好を想像していたので、その可愛らしい格好には驚きました」

「初めてユナを見たときに、わたしもそう思ったっす」

「その服も、俺がユナと戦うことになった理由の一つだな」

「そうなのですか?」

話を聞いていたノアが尋ねてくる。

「ユナがこの国を救ってくれたことは知っているな」

「はい」サクラたちから話を聞いていたノアたちは頷く。

「ユナの格好が希望の光とは思えなかった重鎮たちが、ユナの実力を知るために、俺に戦わせた」

あのときは、シノブの親の仇だと騙されて、ジュウベイさんと戦うことになった。

「その戦いの結果は……」

「先ほどの試合を見てのとおり、前の戦いでも手も足も出ずに負けた。あの三段突きは俺の決め技だったんだが防がれた。それで今回、ユナに対抗するために脇差しまで使ったが、それさえも防がれた。どれだけ、強いんだが」

「でも、魔法を使って防いだから」

「それは関係無い。防いだことに意味がある」

「そんなことがあったのですね」

しみじみとホノカ姫が言う。

「それで、ホノカ様はどうしてこちらに?今は、誰も彼女たちに近づかないようにとのお達しが出ていたかと思いますが」

そうなの!?

確かに、思い当たる節がある。

誰も声をかけてこなかったし、わたしたちを見ると、頭を下げて離れていく感じだった。

それはサクラとシノブがいるせいかと思ったけど、違ったみたいだ。

「使用人たちから聞きかじりはしましたが、わたしは直接言われてはおりません。つまり、わたしがお会いしても問題はないということでしょう」

「きっと伯父様はわざと伝えなかったんですね」

「わざとっすね」

「でしょう」

サクラ、シノブ、ジュウベイさん、和の国の住民たちは何かわかった感じだ。

「どういうこと?」

「おそらくですが、偶然を理由にユナ様とホノカお姉様を引き合わせたかったのかもしれません」

サクラが想像を話してくれる。

「どうして、そんな面倒くさいことを? 普通に紹介すれば?」

「ユナ様は今この国に遊びに来ておいでです。それなのに一国の王女に会わせる場を設けるとなると、いろいろな所から勘ぐられるかもしれないからでしょうか」

「……?」

意味が分からない。

「つまり、ユナのことを知っている一部の者はユナに会いたがっているっす。でも、国王様が止めているっす。それを国王様自ら、娘とはいえ、会わせるとなると、不公平だと声があがると思うっす」

「わたしに会いたいと思っている人たちがいるの?」

「なにを言っているっすか。ユナは自分がしたことを分かっていないっす。国を救った英雄っす。誰だって、お近づきになりたいと思うっすよ」

「そうですね。自分の息子と結婚とか……」

サクラが怖いことを言う。

まして、10歳の女の子から結婚とか言葉を聞きたくなかった。

「ダメです。ユナさんは結婚なんてしません!」

ノアが抱きついてくる。

すると、ミサ、フィナ、シュリまでがわたしの手を握ったりする。

「いやいや、結婚なんてしないから」

まだ、15歳だよ。

この世界では分からないけど、15歳で結婚のことを考える日本人なんていないよ。まあ、彼氏がいたりしたら、結婚のことを考える女の子がいるかもしれないけど。普通はいないと思う。

「本当ですか?」

「本当だよ」

わたしはノアたちの頭に手を置いて、撫でる。

「ふふ、優しい女の子たちですね」

ホノカ姫がノアたちを見て微笑む。

「大丈夫っす。そのために国王様がユナに近づくことを王命で禁止しているっすから」

「伯父様は、ユナ様の嫌がることはしません」

「お父様が、そこまで気遣いができるとは思わなかったですが、状況を見ればお父様があなたを気遣っていることが分かります」

昨日の今日で、相当無理をさせたのかもしれない。

まあ、ありがたい気遣いだから、感謝だ。

もし、いろいろな人がわたしのところに来たら、お城の見学どころじゃないし、鬱陶しいのは間違いない。

暴れて、魔法を放ったりしたかもしれない。

「まあ、ユナが怒って、城を破壊されても困ると思っただけかもっすよ」

「シノブ、それは……」

「うん、わたしなら、あり得るね」

サクラが否定してくれたのに、わたしが肯定したので、みんなが呆れた顔をする。

魔法で城を壊すことはないと思うけど、檻を作って重鎮たちを閉じ込めるぐらいはしたかもしれない。

「つまり、国王は彼女とわたしを会わせたかったと?」

「たぶん、そう思うっす」

「ホノカお姉さまなら、クマという単語を聞けば、会いに来るかと思います。それに、わたしが一緒に居れば、わたしに会いに来たと言えますから」

「でも、国王が、そんな回りくどいことをしてまで、彼女に会わせる理由は?」

「深い意味はないと思います。ただ、ホノカお姉様と仲良くなってほしいと思っただけだと思いますよ」

「あと、ホノカ様には、この国の王女として、ユナのことを知ってほしかったんだと思うっす」

なんとなく、言い分は分かる。

でも、そうなると別の子供は? となる。

「そういえば、国王に他の子供はいないの?」

「兄がおりますが、王になるための勉強として、今は他の領地で領主代行として仕事をしておりますので、城にはおりません」

だから、娘のホノカ姫ってことなのか。

「もし城に兄がいたら、礼を言いに来ていたと思います。大蛇が復活したとき、周辺の街では魔物の活動が活発化して、その対応に追われていたと言っておりました。でも、あなたが大蛇を討伐してくださったことで魔物は沈静化し、街の住人は救われ、兵士たちの被害も最小限に抑えられたとのことでした。長引くことがあれば、被害はより大きくなっていたと」

国王の話では大蛇が封印されていた島に魔物が集まり始めていたと言う。

「ユナ、兄に代わって礼を。そして、わたしからも改めて礼を。この国を救っていただきありがとうございました」

ホノカ姫は頭を下げる。

「何度も言うけど。気にしないで、わたしは泣いている女の子を助けただけだから」

わたしはサクラに目を向ける。

「ユナ様……」

サクラが嬉しそうにする。

「それで、城の見学をしているはずのユナと、シノブやジュウベイが試合をしていたのはどうしてなのですか?」

試合をしていた理由をシノブとジュウベイさんが説明する。

「客人に対して何をしているんですか」

話を聞いて、ホノカ姫は呆れた表情で、シノブとジュウベイさんを見る。

確かに言われてみると、何をしているんだろう。

ホノカ姫からすると、国を救ってくれた人を相手に腕試しをしていたように見えるのかもしれない。

「申し訳ない。シノブのこともあったが、俺もユナと再戦したいと思っていたので」

ジュウベイさんはばつが悪そうな顔をする。

「負けたままでは悔しくて、ユナ対策の技も用意したので」

あの四段攻撃をわたしに試したかったわけか。

まあ、ジュウベイさんの気持ちも分からないでもないけど。

誰だって、新しい魔法や技を覚えたら使ってみたくなる。

ただ、その相手がわたしだというのが嫌だけど。

でも……。

「ホノカ姫、あまり怒らないで。わたしも楽しかったから」

嘘ではない。

久しぶりに、楽しい戦いだったのは間違いない。

最近は理不尽なことばかりだったからね。

「まあ、ユナがそれでいいなら、構いませんが。お父様に知られて、怒られても、わたしは知りませんから」

「誰もいないから、ここにいる皆が黙っていれば大丈夫だろう」

「だから、この時間を指定したっすね」

「ユナの戦いを兵士たちに見せるわけにはいかないからな」

「嘘っす。師匠、自分が負けるところを部下たちに見せたくなかっただけっすよね」

「それは」

「俺はユナの秘密を」

「嘘っす」

シノブは再度、言う。

「それもあるが、大事にしないと言うのも本当のことだ。大蛇を討伐した人物と知られれば大騒ぎになる。まして、俺に勝てばなおさらだ」

「そうっすよね。師匠に勝つところを見られたら、大騒ぎっすよね」

「だからだ」

「だからと言って、お父様の客人と試合をしていいことにはなりません」

ホノカ姫が、ごくごく当たり前のことを言う。

「申し訳ありません」

ジュウベイさんは再度謝る。

「ですが、わたしも良いものを見ることができましたので、わたしの口からお父様に伝えたりはしません。シノブやジュウベイとの試合を見ていなければ、お父様の話も半信半疑のままだったと思いますし」

「ホノカ様……」

「半信半疑のままでは、わたしは国を救ってくれた彼女に対し、失礼な言動を取っていたかもしれません」

まあ、クマの格好した女の子が大蛇を倒したと聞かされても、冗談を言っているようにしか聞こえないからしかたない。