軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

746 ホノカ姫、クマさんに会う

シノブとジュウベイさんとの試合を終えたわたしがノアたちと話をしていると、女の子がやってくるのが見えた。

女の子はわたしと同じか年上ぐらいだ。

女の子の服は官僚、役人、使用人たちとも違う。上の者が着るような着物を着ている。

「ホノカ様!?」

ジュウベイさんはやってきた女の子を見て驚く。

「ジュウベイ、その者たちは?」

「国王様の客人です。ユナ、紹介する。国王様のご息女のホノカ様だ」

「国王のご息女ってことは、お姫様ってこと?」

「ホノカです」

手を前に合わせて、軽く頭を下げて名を名乗る。

先に上の人に名前を名乗らせてよかったんだっけ?

ダメだよね?

「ホノカ様、彼女たちは国王の客人のユナとその友人たちです」

「お父様の客人……」

「えっと、ユナです」

わたしが名前を名乗ると、フィナたちも緊張しながらも自己紹介をする。

「国王様の大切な客人です。失礼がないようにお願いします」

ジュウベイさんはわたしにではなく、ホノカって王女に言う。

いや、普通はわたしに「姫様に失礼がないように」と言うんじゃないの?

「クマの格好をした少女……ジュウベイ」

ホノカ姫はジュウベイさんに確認するような目で見る。

「口にはできませんが、ご想像通りだと思います」

「お父様の言葉通り本当にいたのですね」

そう言って、わたしのことを見る。

「シノブ、もしかして、わたしのことを?」

「わたしも国王がホノカ様にどこまでお話ししているか分からないっすが、聞きかじりはしていると思うっす」

まあ、大蛇が復活した時は大騒ぎになったはずだから、わたしのことは何にかしら、耳に入っていてもおかしくはない。

───ホノカ視点───

お城の中を歩いていると城で働く者たちの声が聞こえてくる。「くま」とか「クマ」とか「熊」とか。まあ、クマと言う単語が聞こえてくる。

わたしは「クマ」と口にしていた使用人の1人に尋ねる。

「クマってなに?」

「ホノカ様!? えっと、ただいま、クマの格好した方がサクラ様とご一緒に城の中におられまして」

「サクラが来ているの?」

サクラはわたしの従姉妹に当たる。

お父様の妹の子供だ。

わたしは妹のように可愛がっている。

そのサクラがクマの格好をした者と一緒にいる?

「わたくしも詳しいことは聞かされてございません。ただ、見かけても近寄らないようにと仰せつかっております」

わたしはそんな連絡は受けていない。

わたしには不要ってこと?

それとも、わたしは接触してもいいってことかしら?

「誰の指示かしら?」

確認する。

巫女関係、軍事関係、商業関係、政治関係、指示先が分かれば、誰の関係者かわかる。

「国王様のご指示だとお伺いしております」

お父様の?

「ですので、情報を共有しあい、サクラ様方にはなるべく近づかないようにしてございます」

そこまでしているの?

普通、客人が来たとしても、そこまではしない。

重要人物が来た場合は、それなりの地位がある者が付き添う。

そうなれば、誰も声をかけたりはしない。

それをサクラと一緒にいる人物に?

しかも、クマの格好。

「教えてくれてありがとう」

わたしは礼を言って離れる。

クマの格好って言葉とサクラと一緒ってところが気になる。

前に、この国は大蛇の復活の兆しが見えたことで、大騒ぎになったことがある。わたしは詳しい話は聞かされていないけど、当時、サクラの夢で国を救う希望の光が来る未来を見た。

サクラは昔から、夢で未来を知ることができた。

自由に見ることはできないので、当てにはならなかったけど、信用できるものだった。

サクラが大蛇の復活と希望の光のことを見た。

その後、本当に希望の光が現れたが、クマの格好した女の子だったらしい。サクラの夢のことは一部の者しか知らないので、お父様と重鎮たちが言い争っていたことを覚えている。

その後、わたしは大蛇と希望の光の情報を得ようとしたけど、情報を得る前に、大蛇が復活し、すぐに討伐されてしまった。

実際、何が起きたか分からないうちに全てが終わっていた。

ただ、お父様が忙しく動き回り、大変だったのは覚えている。

そして、大蛇の件が落ち着くと、お父様は大蛇の魔石が保管されている部屋に連れて行ってくれた。

魔石は大きく、この魔石を体内に持つ魔物、大蛇。

この部屋には大蛇の記録が残されていた。

全長の大きさ、大蛇の素材。大蛇に関するものが全て保管されていた。

そのときに、お父様は話してくれた。

この国はクマの格好をした少女のおかげで救われた。

クマの格好をした女の子が現れても、決してバカにせず、誠意をもって接すること。

何を言っているのか分からなかったけど、わたしは頷いた。

お父様が冗談ではなく、真面目に話しているからだ。

その話を聞いて、しばらく経ったとき、クマの格好をした少女が城に来たと聞いたけど、わたしは会うことはできなかった。

そのクマの格好をした少女が、またこの城に来ている。

わたしは城で働く者たちからその少女の居場所を聞く。

一度、上に向かったと聞いたので、上に行ったが、すれ違ったのかすでにいなかった。

それからさらに探すと、兵士の訓練場のほうへ向かったと情報を得た。

わたしは急いで訓練場に向かう。

訓練場にたどり着くと人がいる。

ジュウベイとシノブ。それからサクラ。

あと、見知らぬ女の子たちがいた。

この辺りでは見たことがない服装をしている。その中でも、黒っぽい服に包まれた女の子がいる。

クマ?

角度的にハッキリと見えなかったけど、クマに見えた。

クマの格好と聞いていたので、怖いクマを想像していたけど、違った。可愛らしいクマだった。

そのクマの女の子とシノブが手に武器を持って訓練場の中央に移動する。周りにいたサクラたちは離れる。

もしかして、シノブと試合をするの?

シノブは女の子なのに、そこらにいる男の人よりも強い。

お父様の仕事をしていることもあれば、わたしの護衛をすることもある。

男性に混じって練習しているところを見たこともある。だから、シノブの強さも知っている。

シノブは強い。

シノブが勝つものだと思っていた。

でも違った。

シノブが動き回り、優勢に攻撃をしているのに、クマの格好した女の子は全て防いでいる。

そして、ちょっとした隙があると、シノブに攻撃を仕掛け、シノブは負けてしまう。

あのシノブがあんな簡単に?

信じられない。

それから、何度も試合が行われるが、あのシノブが一度も勝てない。

最後は投げ飛ばされて、シノブは動かなくなってしまう。

クマの女の子。あれだけ、シノブと試合をしたのに、疲れた様子はない。シノブは疲れ切っているのに。

シノブが、ここまで一方的にやられるのはジュウベイとの試合ぐらいでしか見たことがない。

つまり、あのクマの女の子はこの城で上位の実力を持つ、ジュウベイと同じぐらい強いってことになる。

試合が終わったみたいなので、声をかけようと近づこうとしたが、今度はジュウベイとクマの女の子が試合することになったみたいで、お互いに剣を構えていた。

声をかけるタイミングを逃し、わたしはジュウベイと女の子の試合を見守ることにした。

シノブに勝ったクマの女の子がジュウベイ相手にどこまで戦えるか、見てみたいと思ったからだ。

ジュウベイと女の子の試合が始まる。

もの凄い速さで武器が動く。

目が追いつかない。

ジュウベイは手加減はしていない。

部下に教える練習試合ではない。

本気の試合だ。

ジュウベイは左右に動き、彼女に一撃を与えようとするが、全ての攻撃を防いでいる。

……凄い。

何度か、打ち合いが起きたと思うとジュウベイが軽く後ろに跳んで、武器を構える。

何度か見たジュウベイの攻撃。

あの攻撃を防げる者は城ではほとんどいない。

あの攻撃をされた相手は、ほとんどやられていた。

防げる者でも、五分五分と言っていた。

その攻撃をあのクマの女の子に!?

ジュウベイが本気だ。

ジュウベイが動く。

突き!

三段突きだ。

目が追いつかない。

あっという間に三段突きが放たれたが、クマの女の子は全て防いだ。

凄いと思った瞬間。

女の子の前に地面から土が盛り上がる。

何が起きたか分からなかった。

三段突きの攻防ですら、速くて分からなかったのに。

でも、現在の状況を見ると分かった。

ジュウベイが腰にあった脇差しを抜いていた。

それを彼女が土魔法で防いだみたいだ。

あの一瞬で判断して、魔法を使ったの?

ジュウベイの突きに囚われて、脇差しに手が伸びていたことに気づかなかった。

でも、あのクマの女の子は気づいて、防いだ。

わたしは強く握っていた手を開くと汗で濡れていた。

お父様とサクラが言っていたクマの格好した女の子。

大蛇を倒した希望の光で間違いない。

試合のほうはジュウベイの負けということで終わったみたいだ。

わたしはタイミングを見て、みんなの前に姿を現す。