軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

742 クマさん、お城にやってくる

鳥のさえずりで目が覚める。

起き上がり、周りを見ると、大きなくまゆるに左右から抱きついて寝ているノアとミサ。大きなくまきゅうにはサクラとシュリが抱いて寝ていた。

昨日、寝るときに、子熊化したくまゆるとくまきゅうの争奪戦が行われそうだったので、大きくして左右から抱きつく案を提案した。

フィナが、その争奪戦に参加しなかったので、丸く収まった。

ただ、寝る前と状況が一つ違うことがある。カガリさんがくまゆるのお腹の上で寝ていることだ。

昨日は、くまゆる争奪戦に参加していなかった。

寝相が悪いからといって、くまゆるのお腹の上で寝ることはないと思うから、自分で登ったんだと思う。

まあ、くまゆるも気にした様子もなく寝ている。

みんな、クマ好きになりすぎだと思う。

フィナが寝ていた布団を見ると綺麗に布団が畳まれていた。フィナがいない。

襖の奥から、人の気配がする。

わたしは静かに立ち上がり、襖を開けると、縁側にフィナが座っていた。

「フィナ」

「ユナお姉ちゃん!?」

「おはよう」

「おはようございます」

「もう、起きていたんだね」

「うん、少し前に。それで、外を見たら気持ちよさそうだったから」

フィナの言うとおり気持ちいい朝だ。

庭園がさらに、そう思わせてくれる。

「ユナさん、フィナ、おはようございます」

後ろからノアが声をかけてくる。

どうやら、起きたみたいだ。

「おはよう」

「おはようございます。ノア様」

ノアが起きてくると、みんな起きてくる。

最後まで起きなかったのは、言うまでもなくカガリさんだ。

一番年上のはずなのに。

年寄りは朝が早いと言うけど、違ったのかな。

そして着替えも終わると、食事が運ばれてくる。

「馬車を用意してあるっすから、食事を終えたらお城に行くっす」

シノブは朝食を食べている途中にどこからともなく現れた。

もしかすると、馬車の用意をしてくれていたのかもしれない。

わたしたちはシノブが用意してくれた馬車に移動する。

立派な馬車だ。

荷馬車とは違う。

装飾があり、偉い人が乗るために作られた馬車と分かる。

「この馬車に乗るんですか?」

「お客様用っす。乗ってくださいっす」

中は広く、ノア、ミサ、フィナがわたしの対面に座り

わたしの左右にはサクラとシュリが座る。

カガリさんは昨日、国王に会ったから、今日は行かないとのことで、家に残った。

「少し緊張します」

「あのう、お城を見学するだけですよね」

「そうじゃない?」

「昨日のシノブとカガリ様のお話では、伯父様……国王陛下はユナ様にお会いしたいと思っていますので」

「ですが、ユナさんだけですよね」

「どうでしょう。ユナ様と一緒にいるノアたちも興味を持つかと」

「ユナさん、なにか話しちゃダメなこととかありますか?」

「国王だけだったら、大丈夫だけど。他の人がいるときは、あまりわたしのことは話さないでもらえると助かるかな」

「そうですね。基本、ユナ様のことは秘密となっています。昨日話しましたがユナ様の偉業は一部の者しか知りません。なので、もしもなにかトラブルが起きましたら、わたしやシノブに言ってください。一番いいのは離れないでいただくことです」

「分かりました」

「サクラちゃんと一緒にいればいいのですね」

「シュリも、離れちゃダメだからね」

「大丈夫です。わたしがシュリの手を握っていますので」

「うぅ、離れないよ~」

なんだろう。シュリは基本、ちゃんと言いつけは守る。

でも、なんとなく、自由気ままにあっちこっちに行ってしまうイメージがある。

シノブが運転する馬車がお城にやってくる。

馬車は一度、入り口で止まるが、シノブが門兵と一言二言話すと、すぐに馬車が動き出し、門を通り抜けていく。

馬車はしばらく進むと止まる。

「到着したっす。降りてくださいっす」

御者台で馬車を運転したシノブが馬車のドアを開けてくれる。

全員、馬車から降りると上を見上る。

「これが、お城。わたしたちの国のお城とは全然違います」

「フィナも言ってましたが、そんなに違うのですか?」

「はい、全然違います」

「形も色合いも、なんというか、造りが根本的に違います」

ノアとミサはお城を見た感想をもらす。

「でも、本当に違う国のわたしたちがお城の中に入ってもよろしいのでしょうか」

ノアは不安そうに言う。

確かに、お城は国王を始め、重要人物が集まる場所だ。

もし、攻め込まれることがあったら大変なことになる。

だから、異国の人物を簡単に入れたりはしないと思う。

「ふふ、大丈夫ですよ。確かに重要なところはあります。そこへの立ち入りはこの国の者でも関係者以外は禁止されています。だけど、普通に城の中を見るだけでしたら、問題はありません」

「それに、すでにフィナとシュリが見学済みっす。気にすることはないっす」

「だったら、いいのですが」

サクラとシノブの言葉にノアとミサは安堵する。

「それじゃ、案内するっす」

シノブが歩き出したとき、前から見知った人物がやってくるのが見えた。

「伯父様!?」

サクラが驚く。

それもそのはず。やって来たのは、この国の国王だ。

「待っていたぞ」

「どうして、こちらに」

「ユナが来ると知らせを受けたからな」

国王がわたしを見る。

「ユナさん。こちらの方はもしかして……」

小さい声でノアが尋ねてくる。

「えっと、国王だよ」

わたしの言葉にノアとミサが驚く。

「お主たちがユナが連れてきた者たちか」

国王が見定めるようにノアとミサを見る。

「ノアールと申します。このたびは連絡もなしにお城に来てしまい申し訳ありません」

「ミサーナです。国王陛下の寛大なお心に感謝いたします」

ノアとミサはわたしの一歩前に出ると、礼儀正しく挨拶をする。

なんだか、いつも違うノアとミサがいる。

「俺はこの国王、スオウだ。お主たちは貴族かなにかか?」

「わたしたちは」

「いや、すまぬ。今の聞かなかったことにしてくれ。お主たちが誰でも構わぬ。今はユナの友人として対応させてもらうから、堅苦しいのは不要だ」

ノアとミサが異国の令嬢と知れば、面倒なのかも知れない。

まして、ノアはミリーラの町を治める領主の娘だ。

「分かりました」

「ありがとうございます」

ノアとミサは国王の言葉を受け入れる。

「そちらの2人は前に会っているな」

国王は次にフィナとシュリに目を向ける。

「フ、フィナです」

「シュリだよ」

フィナは何度か会っているはずのに、いまだに緊張するみたいだ。

まあ、相手は偉い人だからね。慣れることもないか。

「それで、伯父様。ユナさんに挨拶に来ただけですか?」

国王は右腕を上げて、控えている兵士に下がるように命じる。

兵士は頭を下げて下がっていく。

「国の危機を救ってくれた恩人が久しぶりにやってきたんだ。顔を出すぐらいはする。お茶ぐらい出す。少し、付き合え」

国王が歩き出し、わたしたちには断る選択肢はなく、国王の後を歩くことになる。

「さっきのノアとミサ、貴族令嬢みたいだったね」

「ユナさん、失礼です。わたしたちは本物の貴族の令嬢です」

「そうです」

「ごめん、ごめん。いきなり、いつもと違ったから」

「国王様に失礼な態度を取ることはできません」

「はい。第一印象は大切です。国王様を不愉快にさせても不利益をもたらすだけです」

幼くても、貴族の令嬢ってところかな。

ノアたちはお城の中をキョロキョロと見まわす。

もちろん、一度しか来ていないフィナとシュリも楽しそうに見ている。

「わたしたちのお城とは違います」

「あちらこちらに木の柱が見えます」

「そんなの当たり前だろう」

ノアとミサの言葉を聞いていたのか、前を歩く国王が尋ねてくる。

「いえ、わたしたちの国のお城では、木の柱は見えませんので」

確かに、見えないね。

白い柱だけど、あれって石だよね?

あまり建設物に詳しくないから、お互いの城がどうやって造られているか知らないけど、違うことぐらいは分かる。

「そうなのか、他国の城は見たことがないからな」

和の国は島国だ。他の国へ行くにしても、船に乗っていかないといけない。

時間もかかるから、一国の王が長く自分の国を離れるのは難しいと思う。

そんな時間があれば、カガリさんに会いに行く時間もあるはずだ。

「そういえば、カガリは来ていないのか?」

「カガリ様は昨日、伯父様にお会いになられたので、今日は来ないそうです」

「久しぶりに来たと思えば、薄情な奴だ」

そんなことを言っているが、怒ってはいない。

なんだかんだで、久しぶりにカガリさんに会えて、嬉しかったのかもしれない。

わたしたちは通路を進み、奥の部屋に通される。

「ここなら、なにを話しても大丈夫だ」

和室ではなく、テーブルと椅子が置かれた部屋だ。

それぞれが椅子に座り、国王がわたしを見る。

「まさか、新しい娘たちを連れてくるとは思わなかった。カガリとシノブから話しは聞いているが、おまえさんのことを知っていると考えていいんだよな」

国王は確認するように尋ねてくる。

契約魔法によって、わたしの秘密を話すと笑い死にすることになる。

でも、相手が知っている場合は大丈夫らしい。

「うん、一応ね」

「なんだ。その一応って」

「あの門のこと遠くの人と話せる魔道具のことは知っているよ」

「まあ、ここに来ている時点で、そうだな。ユナには国を救ってもらった。城の見学も自由にしてもらって構わない」

「いいの?」

「それだけ、おまえさんには恩がある。それぐらい構わない。ゆっくりと見て行ってくれ」

「ありがとう」

「サクラ、シノブ。しっかりと案内するんだぞ」

「はい」

「もちろんっす」

まあ、サクラとシノブが一緒にいれば、城の中をクマの格好して歩いていても大丈夫だろう。