軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

741 クマさん、みんなと昔話を聞く

「ありがとうございます」

スズランさんは嬉しそうにわたしが描いた絵を見ている。

「一生の宝物にします」

「安っぽい宝物じゃのう」

まあ、一流の画家が描いたものじゃない。素人が描いたものだ。安っぽいと言われても仕方ない。

わたしだって、自分の絵に価値があるとは思っていない。

「カガリ様、何を言っているんですか、これほど価値がある絵はないです」

サクラが自分の絵を見ながら言う。

「そうです。こんなに上手に描いてくださったんですよ」

「ユナ様の絵は国宝にして王家の宝物庫に保管されてもいいくらいです」

それはやめて。

流石に捨てられたら悲しいけど。国宝にするほど、わたしの絵にそんな価値はないから。

わたしの絵が永久に宝物庫に保管されるなんて、考えたくもない。

子供のときに描いた絵が、額に入れられて飾られているよりも嫌だ。

「分かったから、怒るな。ただ、妾の描かれた絵を宝物と言われて、気恥ずかしかっただけじゃ」

つまり、ツンデレってこと?

カガリさん、属性を持ちすぎだよ。

心は大人(年寄り)、見た目は幼女。その正体は数百年生きる妖狐。さらにそこにツンデレ属性を追加って。ここが漫画やアニメの世界だったら、大人気属性だよ。

「お主、変なことを考えておらぬか?」

さらに、鋭い勘を持っている。

とりあえず、誤魔化すように「考えていないよ」と言って、微笑んだ。

そして、ミサの服に着替えたサクラをみんなと一緒とはいかなかったけど、ミサの服を着たサクラの絵も描いてあげた。

サクラは嬉しそうにしていた。

ミサの服を着たサクラを描き終える頃には外を見ると日が暮れていた。

「食事の準備ができているっす」

シノブがタイミングを見て、声をかけてきた。

「カガリ様、起きてください」

「なんじゃ、もう朝か」

「違います。夕食の時間です」

ミサの服を着たサクラを描き始めたとき、カガリさんはあくびをして、知らぬ間に寝ていた。

座布団を枕にして寝ていたカガリさんには、風邪を引かないようにスズランさんが大きなタオルみたいなものをかけていた。

わたしたちは一番初めに案内された部屋にもどってくる。

そして、それぞれが座布団に座ると食事が運ばれてくる。

もしかして、わたしが絵を描き終えると同時に、すぐ食事ができるように準備してくれていたのかもしれない。

「それで、シノブ。お城にはいつ頃、行けばいいでしょうか?」

食事をしながらサクラが尋ねる。

今、ここにスズランさんはいない。

スズランさんがいると、聞かれてはいけない話が出たとき困るので、カガリさんはスズランさんを遠ざけてくれた。

カガリさんも気を使ってくれているみたいだ。

「明日の朝一に来るように言われたっす」

「そんなに早くですか?」

サクラが驚く。

「国王様もユナに会いたがっていたっすから」

「むしろ今すぐ、連れてこいって感じじゃったわ」

「仕事を放り出して、ここに来る勢いだったっす」

「それを、妾の話術で止めてやった。感謝しろ」

それは、ありがたいけど。

どこの国王も自由すぎない?

この世界にまともな国王っていないのかな。

まあ、暴君よりはいいけど。

「あのう。ユナさんは、この国で何をしたのですか? 魔物を倒したと言っていましたが」

「サクラちゃんもそうですが、国王様まで、こんなによくしてくださるなんて」

大蛇を倒したことを知らないノアとミサには、ここまでのおもてなしに対し、とても不思議でならないかもしれない。

「ちょっとした人助けで魔物を倒しただけだよ」

「その内容が知りたいんです」

「自分で言うと自慢みたいになるから、あまり話したくないんだけど」

わたしが凶暴な魔物を倒して国を救ったとか、自分で話すと自慢のように聞こえる。だから、あまり自分の口からは話したくはない。

すると、サクラが微笑みながら「それでは、ユナ様がよろしいのでしたら、わたしからお話しますね」と言い出した。

お茶を一口飲み、サクラの話が始まる。

「その昔、この国は4つの長い首を持った大蛇という大きな魔物に襲われていました。山よりも高く、とても人が敵う魔物ではありませんでした。大蛇は多くの人を殺しました。和の国の人たちは大切なものを守るために多くの人が命を懸けて戦いましたが、倒すことはできませんでした」

ノアたちの食事をする手は止まり、真剣に聞いている。

「みんなが絶望しかけたとき、異国の4人の冒険者と一人の女性が現れ、力を合わせて大蛇を小さい島に封印することができました」

封印できたって言葉に少しだけ、ノアたちは安堵する。

「その5人だけじゃない。多くの者が、その5人と共に戦った。たくさんの者たちが命をかけて戦ってくれたから、封印できたのじゃ。決して、その5人だけではない」

サクラの言葉にカガリさんが指摘をする。

「そうですね。多くの人が力を合わせて戦い、多くの人が帰らぬ人となりました。ですが、その5人がいなかったら、大蛇を封印することはできなかったと思います」

サクラはカガリさんを見て、微笑む。

当時のことは分からないが、カガリさんは今回同様に大蛇と戦った。そして、目の前で多くの人が死んでいくのを見ていたんだと思う。

そのことを考えると、なんとも言えなくなる。

「そんな大変なことがあったんですね」

「数百年前のことです。ですが、その多くの人が命をかけてした封印が解け始めました。封印の強化もできず、対応策もありませんでした。大蛇の封印が解かれれば、数百年前と同様に多くの人が死ぬことになります。わたしたちがどうしようか悩んでいるときに現れたのが……」

そう言って、サクラがわたしに目を向ける。

「ユナさんですか?」

「はい。ユナ様は、わたしたちの話を聞くと魔物討伐を引き受けてくれました」

別に引き受けたわけじゃない。とりあえず、カガリさんから話を聞くことになって、話を聞いてから判断をしようと思っていた。

「ユナ様は、あの不思議な扉を使って、知り合いを連れてきてくださり、その人たちと共に、魔物を討伐してくださいました」

わたしはカガリさんに会い、ムムルートさんに会わせることになり、そんなことをしていたら大蛇が復活してしまった。

そのまま、流れるままに大蛇を討伐することになっただけだ。

サクラはお茶を一口飲む。

「国王は国を救ってくれたことに感謝し、ユナ様はこの国の英雄になるはずでした。でも、ユナ様は英雄になることを断りました。目立つのを嫌ってのことだそうです」

サクラはわたしを見て、微笑む。

「わたしたちはユナ様の気持ちを尊重し、ユナ様が国を救ってくれたことは、ごく一部の者の心の中にとどめることになりました」

「もう少しで、わたしが英雄にされるところだったっす」

シノブに押しつけようとしたが、断られた。

「この国の王はユナ様の感謝の気持ちとして、あのお屋敷を贈られました」

サクラの話が終わる。

一部、話していないことがある。

サクラの予知夢のことやカガリさん、ムムルートさんのことだ。

特に話す必要性はないので、わたしもそれでいいと思う。

考えごとをやめ、周りを見ると、ノアたちの視線がわたしに集まっていることに気づく。

「ユナさん。いつも、どこかで人助けをしていますね」

「別にいつもはしてないよ」

そんな、誰もかも人助けをするほど、わたしは善人ではない。

ノアの言葉通りいつも人助けをしているなら、神様から貰ったクマ装備で、いろいろな場所で困っている人を助ける旅をしているはずだ。

でも、わたしはのんびりと自由気ままに過ごしている。

「ユナさん。わたしのユナさん情報を甘くみないでください」

なに、そのユナさん情報って?

「ユナさんはブラックバイパー討伐で村を救い。魔物一万匹を倒して王都を救い。クラーケンを倒してミリーラを救い。黒虎を倒してお姉様やお姉様の学友、村の人を救い。シーリンではサルバード家に殴り込んで、ミサを救ってくれました」

「そうです。魔物に襲われているわたしとお祖父様も助けてくださり、サルバード家に脅迫されていた多くの人を助けてくださいました」

さらにミサまで口を開く。

「その他にも色々とありますよね」

なんのことかな。

ノアが知り得る情報だと、最近では妖精の件。あと、砂漠のこともエレローラさん経由でクリフやノアに知られている可能性もある。流石にエルフのことは知られていないと思うけど。

湖の街の件もある。

言われてみると、行く先々で人助けをしているように思う。

でも、全部、自分から助けようとしたわけじゃない。流れでそうなっただけだ。

ブラックバイパーのときは、ブラックバイパーを見たかったのが理由だったし。魔物一万はクリフを迎えに行くついでにいたから倒しただけだし。ミリーラの町もお米と味噌、醤油のためだったような。黒虎はミサたち学生の護衛の仕事だった。ミサを救いにサルバード家に殴り込んだのは、人として当たり前のことだ。ノアとフィナが殴られ、ミサが攫われたのに、助けに行かないのは人として終わっている。わたしだって、そのぐらいの心は持っている。

もちろん、力がなかったら、できなかったと思うけど。神様からもらったクマ装備がある。

「その他にもフィナなら、知っているのでは?」

ノアがフィナに話を振る。

「えっと、ユナお姉ちゃんは、わたしがウルフに襲われているところを助けてくれました」

「あと、お母さんを助けてくれたよ」

シュリまで話に加わってきた。

「ユナお姉ちゃんは、いつだってみんなを守っています」

「ふふ、ユナ様は和の国だけではなく、いろいろな人を助けているんですね」

否定をしたいけど、ノアたちが言ったことは事実だ。

「ブラックバイパーに黒虎、それに魔物一万っすか……」

「本当に、お主は信じられないことをしておるのう」

「ユナの強さの秘密が、少しだけ分かった気がするっす」

わたしの強さの秘密?

それはクマ装備とゲームで得た戦闘経験だよ。

クマ装備がなければ、ゲームで得た戦闘経験を使うことはできない。

ゲームで得た戦闘経験がなければ、魔物と戦うのは怖くてできなかった。

そのどちらか片方がなかったら、強くはなれなかった。

食事と話を終えたわたしたちは、お風呂に入るため和の服を脱ぐ。

ノアたちは名残惜しそうにしていたが、サクラが「いつでも着たいときはおっしゃってください」と言ってくれたので、ようやく服を脱いでくれた。

夜寝るときはサクラが着ている浴衣を着てみたいということになり、サクラは微笑みながら、みんなの浴衣を用意してくれた。

わたし?

わたしはみんなの護衛だから、白クマで寝たよ。