軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

713 クマさん、妖精と契約する

「女王様……」

ローネはジッと女王様を見て、動かない。

そんな女王様はゆっくり近づき、ローネを抱きしめる。

「お帰りなさい」

「……女王様」

「詳しい話は後で聞くとして、ユナとノアールと言いましたね。ローネを連れてきてくださってありがとうございます」

わたしたちに軽く頭を下げる。

「無事に連れて帰ってこられてよかったよ」

「はい」

「なにかお礼をしたいのですが」

お礼?

元ゲーマーとしては、妖精の珍しい物が欲しくなるところだ。

妖精の雫とか、妖精の涙、妖精の……、など。

そんな気持ちをグッと抑える。

「えっと、それじゃ、たまにここに来てもいい?」

わたしの言葉に女王様の顔が強張る。

「それはどうしてですか」

「ただ、お話がしたいだけだけど。あと、珍しい薬草とかあったら、欲しいかも」

眠り粉とか?

妖精の眠り粉とか、なにかの用途に使えそうだ。

他にも似たような物があるかもしれない。

「あの水の通り道は、こちらから作らないと繋がりませんので自由に行き来することはできません」

「ああ、それは大丈夫。この移動できる扉があるから」

わたしはクマの転移門を取り出す。

「これは、もの凄い魔力を感じますが」

女王様はクマの転移門を見ながら言う。

そんなこと感じられるの?

「この扉を開くと、もう片方の扉と繋がる魔道具なんだよ」

「そんな物が」

わたしは水の通り道と同じように、この扉はわたしにしか開けられないことを説明する。

「それで妖精の森の外に置かせてもらってもいいかな。もし、わたしが妖精に悪いことをしようとしたら、迷いの森で迷わせてもいいし、眠らせてもいいし、殺してもいい」

「ユナさん!」

ノアが驚く。

「別に妖精に悪いことをしようとは思っていないから大丈夫だよ。ただ、純粋に繋がりを切りたくないだけ」

だって妖精だよ。

今まで、見たこともなかったんだよ。

このまま別れるなんて、もったいない。

「わかりました。ただし条件があります」

「条件?」

「妖精との契約をしていただきます。知っての通り、この妖精の森の中では、わたしたち妖精を誰でも見ることができます。そのようなところであなたを自由に行動をさせるわけにはいきません。もし、あなたが妖精に悪意を持った行動をすれば、死ぬまで眠り続けます」

「いいよ」

わたしは女王様の言葉を聞き入れる。

「ユナさん!」

「だって、妖精に悪意を向けることなんてないからね。でも、一方的はずるいよ。あなたたちもわたしに酷いことはしないって約束してくれる? わたしだって、酷いことをされれば、悪意を持つこともあるよ」

女王様は周りを見る。

「酷いことはされないでしょうが、いたずらっ子が多いので」

女王様はわたしの言葉に否定はしない。

「注意はしておきましょう。なにか酷いことをされましたら、言ってくれましたら対処します」

だから、怒って、妖精に酷いことはするなってこと?

そこが、お互いの妥協点かもしれない。

そもそも、女王様にわたしを妖精の森に入れさせるメリットはない。ハッキリ言って好条件だ。

「でも、いいの? 妖精の森は秘密なんでしょう」

ローネはリヤンさんにさえ言わなかった。

「あなたから懐かしい魔力を感じます。あなたと縁を切ってはならないと。でも、わたしも妖精の女王としての立場があります。皆を守らないといけません。だから、これが譲れる線なのです」

懐かしい魔力?

それが許された理由?

でも、過去に会ったことなんてないよね。

「それで、どうやって契約をするの?」

「そのまま立っていてください。他の者は彼女から離れてください」

女王様の言う通りにノアたちは離れる。

ノアは不安そうな顔をしている。

「大丈夫だよ」

みんながわたしから離れると、女王様の体が光ったと思ったら、地面に魔法陣が描かれる。

わたしの体が光に包まれ、しばらくすると光は消える。

「終わりました」

「ユナさん!」

「「くぅ〜ん」」

ノアとくまゆる、くまきゅうが駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか?」

わたしは自分の体を確認してみる。

どこにも違和感は覚えない。

「大丈夫だよ」

「女王様。わたしにも、同じことをしてください」

「ノア?」

「それはできません。先ほども言いましたが、彼女は特別なのです」

「うぅ」

「ですが、彼女と一緒に来ることは許します」

「ほ、本当ですか?」

「ただし、あなたが妖精に悪意を向ければ、代わりに彼女が報いを受けることになります」

「わたしが……」

「ノアは妖精に悪意を向けるような子じゃないでしょう」

「ユナさん……。はい! 絶対にそんなことはしません」

まあ、それにクマの転移門は、わたしじゃないと開けられないし。どっちにしてもわたしが一緒じゃないと、来ることはできない。

「それじゃ、プリメ、わたしたちは帰るよ」

「ユナ……」

「また、会いにくるよ」

「ありがとうね」

「どういたしまして」

「ノアも巻き込んでごめんね」

「いえ、貴重な経験ができて楽しかったです。でも、みんなが大変だったとき、わたしはなにもできなかったですけど」

「そんなことはないよ」

「ユナさん……」

「ノアは自分ができることをしっかりしたよ。ノアの役目はなに? 戦うことじゃないでしょう。ローネのところに、わたしたちを導くことでしょう。それはノアにしかできなかったことだよ。戦うことはわたしの役目。ローネを説得する役目はプリメ。それぞれ、役目が違うんだよ」

「……ユナさん」

「だから、なにもできなかったなんて、言っちゃダメだよ」

「……はい」

「そうよ。ノアは一生懸命に頑張ってくれたの知っているんだから。だから、ノアもありがとうね」

「はい!」

わたしたちの言葉にノアは嬉しそうに返事をする。

「それで、どこに扉を置いたらいいですか?」

勝手にクマの転移門を置くことはできない。変な場所において、怒られても困る。

「そうですね。ここから、しばらく行ったところに同じような小さい湖があります。あの場所はここからも離れています。人も来ませんので適しているでしょう。プリメ、ローネ、案内してあげなさい」

もう少し、プリメとローネと一緒に行動することになりそうだ。

「懐かしき魔力を持つ人の子。なにかあれば、また来なさい」

「うん、来るよ」

「ユナさん、そのときはわたしも」

最後に、わたしと女王様はお互いにお礼を言い合い、その場を離れる。

「ユナさん、よかったですね。近くにあの門を置くことができて」

「ブリッツたちには上手に誤魔化してね」

わたしたちはクマの転移門を置く場所を仮の妖精の森として、ブリッツたちを連れていくことにした。

わたしたちがクマバスがあるところに戻ってくると、ローザさんがクマバスから降りてくる。

「ユナちゃん! 遅いよ」

奥深くの妖精の森まで歩いて、女王様と話して、さらにクマバスまで戻ってきた。

かなり時間が経っていたみたいだ。

「それで、どうだったの? 許可はもらえた?」

「大丈夫だったよ」

「よかった〜」

「クリモニアに帰れる」

「……」

「ユナ、ありがとう」

ローザさん、ランは嬉しそうにし、口数が少ないグリモスも嬉しそうにしている。ブリッツも安堵の表情を浮かべている。

「ただし、場所を知られたらダメだから、目隠しをしてもらうよ」

わたしはクマボックスから、タオルを取り出す。

「そのぐらいでいいならするわよ」

「ああ」

「もちろん」

「……」

みんなの了承を得たわたしはローザさんたちの目にタオルを巻き付ける。

これで、見えないはずだ。

でも、念には念をおす。

『プリメ、ローネ、お願いね』

『うん』

『任せて』

小声で2人にお願いをする。

「それじゃ、出発するよ」

クマバスが動き出すとプリメとローネは後ろに座っているブリッツたちのところに飛んでいく。

そして、しばらくすると、寝息が聞こえてくる。

「寝ちゃいましたね」

女王様にお願いをして眠り粉をもらった。それをプリメとローネにお願いをして、ブリッツたちに撒いてもらった。

目隠しをされ、疲れもあったと思うブリッツたちは眠り粉で眠ってしまった。

クマバスは森の中を移動し、プリメとローネの案内で、もう一つの湖までやってくる。

妖精の森とは離れているから歩いて行くとなると大変だけど、くまゆるとくまきゅうがいれば、それほどの距離じゃない。

「どこに置こうかな」

「やっぱり、湖の真ん中じゃない」

妖精の森にあった湖と同じように真ん中に小島がある。

「目立つんじゃ」

「人は来ないから問題ないよ。それに湖の真ん中に置けば簡単に渡ることはできないし」

「確かに」

こんな森深い湖まで来て、泳いでいく人もいない。

「でも、どうやって、あそこまで行くんですか? ユナさんが湖の上を歩けることは知っていますが、一人ずつ抱えて行くんですか」

「ノア、道なんて、なければ作ればいいんだよ」

わたしがそう言うと、湖の前に土魔法で作られた橋が作られる。

「ユナさん、凄い」

「ユナって、非常識よね」

「本当に」

なにか言われているけど、わたしは無視してクマバスを動かす。クマバスは橋を渡り小島にやってくる。

橋は壊し、クマの転移門を設置する。

「これで、本当に終わりなんですね」

ノアがしんみりした表情をしている。

「ノア、お疲れさま」

「楽しかったけど、寂しいですね」

「でも、ノアはこれから忙しいんじゃない?」

「どうしてですか?」

「かなり、離れていたから勉強が……」

10日ぐらいはクリモニアを離れていた。

クリフも心配してるかもしれない。

「うう、確かに」

これは貴族の令嬢の宿命だ。

しっかり勉強をして、立派な貴族の令嬢になってほしいものだ。

我が儘な令嬢や、税金を無駄に使うような令嬢にはなってほしくはない。

「それじゃ、扉を開けるね」

わたしはクマの転移門の扉を開ける。