軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

712 クマさん、妖精の森に向かう

みんなに見送られて街を出るわたしたち。

「やっと帰れるのね」

「それには、妖精の女王様の許可がもらえればだけど……」

そういえば、ローザさんたちにはそう言ってあったね。

「なんの話?」

この中で、ローネだけがこれからのことをしらない。

わたしは説明をする。

「無理だと思うけど?」

話を聞いたローネは断言する。

「そうなの? プリメちゃんにも言われたけど」

「人間は妖精の森に入れない。なにより人を連れて行くなんて信じられないわよ。プリメも危険なことをしたわね」

「だって、お姉ちゃんが」

「それでもよ。下手をしたら、この子たちの命の危険もあったのよ」

「そうなのですか?」

ノアが驚きの声をあげる。

「あくまで最悪の場合だけど。普通は眠り粉で眠らせて、どこかに放置するのが多いけど」

ああ、ローネがプリメに会いに来たときにわたしとノアに使った眠り粉か。わたしには効かなかったけど。

「だから、リヤンにも絶対に妖精の森のことは言わなかったし。それ以前にユナとノアが女王様に会って、お話ししただけでも驚きよ」

女王様が人の前に現れることもほとんどないらしい。

「それだけ、ローネのことを心配していたんだと思うよ」

「うぅ、それは……。でも、妖精の森を出ていく妖精は少なからずいるわよ」

「それでも、心配だったんだと思うよ。帰ったら、謝ったほうがいいよ」

「うぅ」

ローネは微妙な顔になる。

でも、女王様が許してくれたのは珍しいということはわかった。

「それじゃ、わたしたちが妖精の力を使って帰るのは無理なのかしら?」

「分からない。普通は無理だと思うけど。ユナとノア次第だと思う」

「まあ、結局のところ、妖精の女王様の許可をもらいに行かないといけないってことだ。その後のことは後で考えるしかないだろう」

ブリッツの言う通りだ。

どっちにしろ、目隠しでクマの転移門を使う予定だから、女王様の許可とかは必要はないんだけど。

ただ、ローネには言っていたほうがいいかもしれない。

わたしはプリメを呼ぶ。

「何?」

「ローネにはみんなに聞こえないように、あの扉のことを説明しておいて」

「いいの? 秘密なんでしょう」

「ローネだったらいいよ」

「分かった」

プリメは頷くとローネのところへ飛んでいき、ローネの手を掴むと離れていく。

「それで、どうやって妖精の森の近くまで行くの? くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗るにしても、全員は乗れないわよね」

ブリッツ、ローザさん、ラン、グリモス、ノアにわたし。6人だ。

子供だったら3人乗れるけど、流石にこのメンバーでは乗れない。

「馬を借りても、返せないから、歩いていくのか?」

「大丈夫だよ」

移動手段は考えてある。

わたしは海の従業員旅行のときに作ったクマバスをクマボックスから出す。

「なんだ?」

「……!?」

「クマ?」

「クマね」

ブリッツ、グリモス、ラン、ローザさんは、クマバスを見て驚く。

「クマ馬車です!」

クマバスのこと知っているノアはクマバスに喜び駆け寄る。

ちなみにバスと言っても伝わらないと思うので、クマ馬車となっている。

「クマ馬車?」

「もしかして、馬の代わりにくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが引っ張るの?」

「「くぅ〜ん!?」」

くまゆるとくまきゅうは否定の鳴き声をあげる。

「違うよ。これはわたしの魔力で動かすんだよ」

「これだけの大きな物をか?」

ローザさんとランはクマバスの周りを歩き出し、ブリッツとグリモスはクマバスに触れている。

「でも、ユナって本当にクマが好きなのね」

「本当ね」

クマの転移門の説明が終わったのかプリメとローネがやってくる。

そして、クマバスの周りを飛び始める。

「とりあえず、出発するから乗って」

クマバスの横が入り口になっている。

ブリッツたちは入り口をジッと見つめてから、決心したように乗り始める。

別にとって食われるわけじゃないのに。

「好きな場所に座っていいよ。でも、一番前はわたしの操縦席になるから、他の席に座ってね」

わたしがそう言うと、ブリッツたちはそれぞれ適当に座り始める。

でも、一番前に座る人物がいる。ノアだ。

「わたしは前でもいいですよね」

まあ、ノア1人ぐらいだったら問題はないからいいけど。

わたしもくまゆるとくまきゅうを子熊化すると一緒に乗り込む。

わたしはノアの隣に座り、子熊になったくまゆるとくまきゅうはわたしとノアの隣に座る。

プリメとローネはクマバスの中を飛び回っている。

まるで、虫みたいだ。

そんなことを言ったら怒りそうなので、黙っておく。

「プリメとローネも座って」

そう言うと、なぜかくまゆるとくまきゅうの上に乗る。

まあ、くまゆるとくまきゅうが嫌がっていなければいいんだけど。

「それじゃ、出発するよ」

わたしはクマバスに魔力を流すと、クマバスは動き出し始める。

「動いたわ」

「しっかり摑まっていてね」

クマバスは馬が歩く速度で進む。

そして、徐々に小走りぐらいの速度になる。

「ユナちゃん、速くない?」

基本、馬車は走らない。

なので、これぐらいの速度でも異世界の移動速度にしたら速い。

「もっと、速度をあげる予定だよ」

「もっと!?」

魔力を込め、クマバスのタイヤが回り始める。

「少し、揺れるかもしれないけど、我慢してね」

整地されている道でも、石を踏めば揺れる。

「ユナちゃん、そんなに魔力を使っても大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」

流石に、最高速度で走らせれば、魔力の消耗も激しいけど、このぐらいの速度なら大丈夫だ。

「ノアちゃんは驚いていなかったみたいだけど」

「前に乗ったことがあるんです」

海に行ったときに乗ったよね。

クマバスはクマの地図のスキルを使って、移動してきた道を戻るように走る。

クマバスは走り続け山の麓にやってくる。

来るときに野宿した付近だ。

この山を越えないと妖精の森には帰れない。

「ユナさん、どうするのですか?」

「この山を越えるの?」

「うん、この山を越えた先だからね」

ローザさんがクマバスの窓から外を見る。

「馬車が通れる道は見当たらないわね」

「歩くのか?」

「少し? だいぶ? 揺れるけど、大丈夫だよ。しっかり掴まっていて」

クマバスに魔力を流し、タイヤをクマの足に変化させる。

まあ、クマバスに乗っている、わたしを含め、全員が変化していることは分からないんだけど。

そのときに少しクマバスが揺れるのを感じる。

「ユナちゃん?」

「それじゃ行くよ」

クマバスがゆっくりと歩き出す。

そして、木々の間を抜けて、山を登っていく。

「倒れないわよね」

「左右に体が揺れる」

「…………」

「体が後ろに倒れて、怖いな」

後ろではグリモス以外、騒いでいるが気にしないでクマバスを進ませる。

わたしの横ではノアが楽しそうにしている。

ノアならジェットコースターでも楽しんで乗りそうだ。

プリメとローネはくまゆるとくまきゅうを掴んでいる。

飛べばと思ったが、口にしないでおく。

クマバスはどんどん山を登っていく。

そして、クマバスは山頂を越え、山を下っていく。

「ユナちゃん! もっと、ゆっくり!」

「うぅ、前に倒れる」

「……」

「しゃべると舌を噛むぞ」

後ろは騒がしい。

横ではノアは「凄いです」「楽しいです」とか言っている。

ノア、強すぎでしょう。

プリメとローネは飛んで、振動を回避していた。

くまゆるとくまきゅうは椅子から落ちないように踏ん張っていた。

そして、山を越え、平地に到着する。

クマ足は車輪に変え、走り出す。

後ろでは疲れ切った表情をしたブリッツたちがいる。

「大丈夫? 少し休む?」

「俺は大丈夫だ」

「わたしも大丈夫よ」

「平気」

「問題ない」

「それよりも、ユナちゃん。魔力は大丈夫なの? こんなに走り続けさせて」

「大丈夫だよ。それじゃ、このまま走らせるよ」

クマバスは速度を上げて、妖精の森に向けて走り出す。

クマバスのおかげで、妖精の森の付近までやってきた。

「帰ってこられたんだ」

ローネがジッと森を見ている。

この森を進んだ奥に妖精の森がある。

ローネにとっては数年ぶりの故郷に帰ってきたことになる。

「ブリッツたちは、悪いけどここで待っていて」

この先にブリッツたちを連れていくことはできない。

わたしとノアはクマバスから降り、くまゆるとくまきゅうを元の大きさに戻す。

「ユナちゃん、お願いね」

「信じている」

ローザさんとランがすがるような目で、わたしたちを見る。

妖精の女王様に断られたら、この地に残ることになるから不安に思っているのかもしれない。

まあ、頼む以前にクマの転移門を使う予定だから、大丈夫なんだけど。

「それじゃ、行ってくるね」

わたしとノアはくまゆるとくまきゅうに乗り、プリメとローネはわたしたちの前を飛ぶ。

迷いの森。

普通に入れば、迷って進むことはできない。

下手をしたら一生出てこられないらしい。

そんな森でも、妖精の案内があるので、わたしたちは森深くに進んでいく。

ローネの表情は嬉しさ半分、戸惑い半分って感じの表情をしている。

そして、しばらく進むと、周りから声が聞こえてくる。

「ローネが帰ってきた」「くまだわ」「あの時のクマ」「女王様に報告」姿は見せないが声だけが囁くように聞こえてくる。

そのまま森深くに進むと、湖の場所にやってくる。

この湖を見ると帰ってきたと感じる。この湖が始まりだ。

「帰ってこられましたね」

ノアも同じ気持ちだったのか湖を見て、そんなことを口にする。

でも、ノアをクリモニアの家に帰すまでが、わたしの仕事だ。

わたしたちが湖を見ているとローネが反応する。

「女王様……」

後ろを振り返ると、女王様がいた。

「プリメ、ローネ、お帰りなさい」