軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

711 クマさん、お別れの挨拶をする

いろいろと後始末が終わり、わたしたちはクリモニアに帰ることになった。

後始末が終わったと言っても、これから始まると言ってもいい。

今は各ギルドや有力者たちが協力して今後のことを話しあっている。

領主ベルングが死んだことで、街を治める者がいなくなった。

ベルングには兄弟はいないようなので、ギルマスの話では領主の遠縁? に当たる親戚の誰かが街を治めることになるらしい。

近々、その親戚が街に来るらしいので、わたしたちは立ち去ることにした。

ブリッツは街では英雄となっているが、同時に領主殺しとなっている。

今は捕らわれることにはなっていないが、その親戚が来れば、ブリッツが捕まる可能性は高い。

どんな理由があったとしても、人殺しは許されない。まして相手が貴族となれば当たり前だ。それが貴族が間違った事をしていてもだ。

犯罪者として処刑される可能性もある。

この街では、わたしの知り合いの権力も使えない。

ここが住んでいたクリモニアの周辺や王都だったら、貸しがある人がたくさんいるが、この知らない土地ではなにも役には立たない。

街から出て行くしかない。

「ブリッツ、悪いな」

ギルマスは今回の全ての責任をブリッツに被せてしまったことに謝罪する。

「俺はこの国に住む人間じゃないから気にしないでいい。誰かが、責任を被るなら俺でいい。ギルマスたちはこの街に必要な人だ。それに最終的に領主を殺したのは俺だから、あながち間違っていない」

それは、わたしがベルングを殺せなかったからだ。

ブリッツが来なければ、最終的にはわたしが殺していたと思う。

今回の責任だけでなく、人殺しの重みもブリッツに背負わせてしまった。

「すまない」

「ギルマス、街のことは頼みます」

「ああ、任せておけ」

街を立ち去るわたしたちは街に関わることはできない。これからのことはギルマスやカーラさん、この街の住民たちが手を取り合って、良い方へ進ませていくしかない。

それにはこの街を治めることになるベルングの親戚が良い人だと祈るしかない。

貴族にも良い領主、悪い領主はいる。

ミサの街を治めていた領主を思い出す。ガマガエルのような顔をして、ミサの家族に酷いことをした領主。そんな人物でないことを願う。

「それから、ユナとノアール嬢ちゃんもありがとうな。嬢ちゃんたちがいなかったら、今回のことは成功しなかった」

「ううん、わたしの目的とギルマスの目的が一緒だっただけだよ」

プリメのお姉さん、ローネを連れていく。この街にいる妖精を街から連れていくことが一致した。

ギルマスに頼まれなくても、同じことをしたと思う。

「はい、わたしも自分ができることをしただけです」

ノアが一緒に来てくれなかったら、ローネを見つけることはできなかった。見つけたとしても、こんなに簡単にはいかなかった。

そう考えると、今回の功労者はノアかもしれない。

「嬢ちゃんにとってはそうかもしれないが、妖精を連れてきて、この街にいる妖精と話してくれた。嬢ちゃんがいなかったら、できなかったことだ」

「初めは、クマの格好した可愛らしい女の子が魔物素材を売りに来たときは驚いたけど。まさか、街を救ってくれるとは思わなかったわ」

初めてカーラさんに会ったときには、状況が分からなかったので嘘を吐いてしまった。

その点は申し訳ないと思うけど、仕方なかった。

「それじゃ、そろそろ行くか?」

「プリメちゃんとローネちゃんは?」

ローザさんが周りを見る。

「ローネがリヤンにお別れの挨拶をしているから、プリメも一緒にいると思うよ」

ローネは妖精の森に帰ることになっている。

それで最後にリヤンに別れの挨拶をしている。

次に会えるのはいつになるかわからないので、2人の時間を作ってあげている。

そう思っていると、

「ユナ!」

プリメが飛んでくる。

「どうしたの?」

「リヤンがあなたと話したいって、それからブリッツたちもだって」

「俺たちも?」

わたしたちはリヤンさんの部屋に向かう。

「お呼びして申し訳ありません」

リヤンさんは起き上がっており、ベッドに座っていた。

体調のほうは日々良くなってきているが、流れた血や、長く寝かされていたことで、動き回れるようになるのは、もう少し先のことらしい。

「本日、出発するのですよね」

「うん、偉い人が来るみたいだからね」

「お礼もできず、本当に申し訳ありません」

リヤンさんは頭を下げる。

すでにリヤンさんには命を救ってくれたこと、ベルングを止めてくれたこと、ローネを守ってくれたことを何度も感謝された。

でも、リヤンさんは自分が許せないんだと思う。

これから、自分のしたことの責任を取らないといけない。

「申し訳ないと思っているなら、この街のために頑張ってね」

「はい。一生をかけて自分とベルングがしてきたことの責任を取るつもりです」

簡単なことではないと思う。

ただ、リヤンさんは地下室に長い間、寝かされていたこともあって、住民たちはリヤンさんのことを知らないってことが、救いかもしれない。

もし、ベルングと一緒になって研究をしていたことが知られていたら、街のために仕事はできないし、下手をしたら街から追い出される。

「このご恩は忘れません」

「それじゃ、一つ約束して。二度と妖精の研究はしないって」

妖精の資料や魔法陣は全て処分したが、一つだけ処分できないものがあった。

それがリヤンさんだ。

リヤンさんの頭の中や体には妖精の研究に関するものが残っている。リヤンさんが研究を再開すれば、第二のベルングにもなれる。

「約束します。二度と研究はしません。誰にも言うつもりもありません。資料として残すつもりもありません。それがローネとの約束でもあります」

そう言って、ローネを見る。

「もし、わたしが妖精の研究をしましたら、殺しに来てください」

「そんな面倒くさいこと嫌だよ」

人を殺すことは簡単なことじゃない。

手を血に染め、夢に出てくる覚悟をしないといけない。

そんな面倒くさいことなんてしたくない。

リヤンさんは、わたしの返答に微笑むとわたしの隣にいるノアに目を向ける。

「それから、ノアールちゃんでいいかな」

「はい」

「ローネを見つけてくれてありがとう」

「いえ、たまたまローネさんのハンカチがわたしの中に入ってしまって、ローネさんの居場所が分かるようになっただけです」

「それでも、君のような幼い女の子が遠出するのは勇気がいったはずだ」

「それはユナさんがいたからです。ユナさんが居なかったら、来られなかったと思います」

ノアはわたしの腕を掴む。

「最後にノアールちゃんに一つ確認してもらいたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか」

「今、ローネはわたしの魔力を使って、他の人にも見えるようにしている。もし、わたしの魔力を使わなくても、君にも見えるか、確かめさせてほしい」

「リヤン?」

ローネが驚いた表情をする。

「ローネ、頼む」

「……分かったわ。それじゃ、リヤンの魔力は止めるわね」

そう言うがローネの姿は消えない。

でも、周りの反応は違う。

「ローネちゃんが消えたわ」

「見えない」

ローザさんとランがローネがいる場所を見るが、本当に見えないみたいだ。

「ああ、俺にも見えないな」

ブリッツも同様のようだ。

でも、わたしの目にはローネが映っている。

「どうだい。君の目にはローネは映っているかい」

リヤンはノアに優しく問い掛ける。

ノアはローネがいる場所を見つめている。

ローネもジッとノアのことを見ている。

「はい。見えています」

「そうか。ありがとう」

「どういうことでしょうか」

「君もわたしと同じようにローネが見える者ってことだよ」

「それはローネさんのハンカチがわたしの中に入ったからですか?」

わたしもそう思ったがリヤンさんは首を横に振る。

「違うよ。プリメさんが持っているハンカチをわたしの手に乗せても、体の中に入ることはなかった。君は初めからローネと相性がよかったんだよ。だからローネが作ったハンカチを体に取り込むことができたんだよ」

つまりローネと相性が良いのは1人とは限らない。リヤンさん、ノアの他にもいるかもしれない。

「わたしが……」

ノアはローネのハンカチを受け止めた手を見ている。

「これで安心だ。ノアールちゃん、お願いだ。たまにでもいいからローネと会って話し相手になってほしい」

「わたしが……」

「ローネは寂しがり屋だから」

「別に寂しがり屋じゃないわよ。でも、あなたがどうしてもと言うなら、たまには会ってあげるわ」

ローネはツンデレのような口調で言う。

そんなローネを見て、ノアは優しく微笑む。

「はい、よろしくお願いします。ローネさん」

それから、ノアの魔力でもローネの姿がみんなに見えるようになり、ランは羨ましそうにしていた。

ここはわたしも見えることは言わないほうがいいよね。

言えば、ややこしいことになるのは目に見えている。

絶対にわたしがローネを見れるのはクマ効果だよね。

そして、最後の別れの挨拶をして、わたしたちは冒険者ギルドを出る。

ギルマス、カーラさん。それから他のギルド職員たちに街に残っていた冒険者。みんなが見送りをしてくれる。

「本当に感謝する。ありがとう」

「ユナちゃん、ノアールちゃん。もし、街に寄ることがあったら来てね」

わたしたちが帰る場所は伝えていないので、カーラさんたちはわたしたちがどこへ帰るか知らない。

街にはクマの転移門の設置はしていない。

説明こそはできないが、妖精の森の近くに置くつもりだ。

くまゆるとくまきゅうなら、それほど時間をかけずに来ることができる。

だから、言う。

「また、来るよ」